第7話 エンジェルラファー発動/きつねハウス
「わし、回復魔法を覚えておる。なぜじゃ?」
不思議がるランゼフさん。
ランゼフさんのレベルは30と普通の街民では高レベル。
元冒険者とかじゃないのかな?と思う。
街中を『きつねは尾で分かるスキル』で見て回ったけど、一般人っぽい人はレベル10以下が多くて、 それ以外は、レベル20以下が多かった。
ミュウちゃん曰く、モンスターの肉を食べるとレベルがある程度は上がるみたい。
モンスターのランクや部位によってレベルの上がる経験値?に差があるんだってと言っていた。
詳しいから聞いてみたところ、ミュウちゃんは解体屋でも仕事をする事があるらしく知っているようだ。
『孤児院の子なら一般常識だよ?』と笑っていた。
ランゼフさんの言葉に『どうしてですかね?それよりも料理しましょ。おなか空いてますよね?』と誤魔化した。
多分、個人を瞬時に治癒する。治癒を施す人々を助けると言う言葉を拡大解釈すると、治癒をした人に回復魔法を授与するというものなのかもしれない。
孤児院の台所のテーブルに、デビルホールからオーク肉を出す。
一口サイズにして出すオーク肉。
血抜きもばっちりOKみたい。
これで、肉臭さも減るはず。
デビルホール良い仕事なされます笑
「とりあえず、鉄板の上でお肉を焼いていこーう、塩や胡椒もあるのでもう、存分にふりかけていいよ。遠慮せずにじゃんじゃんね」
「「「はーい、じゃんじゃんかけるー」」」
「お肉はたくさんあるので、焼いて焼いて焼き続けていこー」
「良いのですか?塩胡椒は高級品です」
「良いですよ。伝手がありまして」
リリアさんの申し訳なさそうな顔の質問に答える。
もちろん伝手というのは、こぎつね宅急便のココンちゃんのことだ。
『ジューッ』
子どもたちがお肉を焼いていく。
お皿の準備をする。
デビルホールに収納していたお皿。
油揚げを何回も出したことにより、陶器のお皿はたくさんある。
ココンちゃんにご馳走したときに一気にたくさん出したため、大皿もある。
大皿に次々に乗せられていく焼かれたお肉たち。
子どもたちは、ニコニコと焼き続ける。
「ユウさん。これは、何でしょうか?」
ユウさんと呼んでもらうことにした。
苗字があると貴族と間違われるみたいだから。異世界物ではお約束だよね。
後ろから子どもたちの様子を見守るリリアさん。
3歳児以下の子供が、料理場所に行かないように、リリアさんは見張っているみたいで、料理は子どもたちに任せている。
「ポン酢です。これに漬けて食べると、あっさりしておいしいんですよ。味見してみます?」
焼きあがったお肉を1枚掴み、ポン酢を含ませたものをフォークに差す。
「はい。あーん」
リリアさんの口もとにもっていく。
「えっ、あっ。はい」
少し驚き顔を赤くするリリアさん。
えっ、リリアさん。そっち系じゃないよね?
「ずるい。僕も食べる」
「たべるー」
みんな、焼くのをやめ席に座り食べはじめる。
「ごほっごほっ」
勢いよく食べる女の子がむせる。
「ゆっくり、慌てないで食べるんだよー」
近くの子だったので背中をさすってあげる。
「あー、忘れていた。きつねうどん。きつねそば。いなりずし、きつね丼。人数分オープン」
お肉を食べる子どもたちの笑顔に夢中になりだすのを忘れていた。
「なになにこれ?」
「これも食べていいの?」
「いいよー。きつねうどんときつねそばは、お好みで一味唐辛子をかけて食べるとおいしいよ」
「なにからなにまでありがとうなのじゃ」
「ありがとうございます」
頭を下げるランゼフさんとリリアさん。
追加で出したきつねうどんたちも平らげ、デザートのパイも食し終えた孤児院の人たち。
孤児院の庭でましゅまると遊んでもらっている間に、大人の会話をすることにした。
「孤児院って運営費はどのような感じなのですか?」
「街の領主様が管理する役所から頂いておるのじゃ」
「運営費はもらっているんですね。もしかして少ないのですか?」
「そうなのじゃ。孤児院での販売は税収をゼロにするから、自分たちでお金を稼げと言われてしもうての」
「私は、小さな子もいるから、あまり離れられないですし、院長は病にかかってしまって困り果てていました」
「孤児院を育っていった人たちに援助の要請とかは……できないですよね」
「はい。あの子たちも必死に生きている感じですので。孤児院の出身と言うだけで、まともな職には付けず、低賃金で働かされているみたいで」
格差社会、いやだねー。
「えっと、自分からの提案なのですが、庭を少しお借りしてもよろしいですか?」
「良いがなにをするのじゃ?」
「直接見せたほうが早いので、早速ですが庭にいきまっしょ」
「分かったのじゃ」
「はい」
「みんなー、ちょっと離れてもらっててもいい?」
「どうしたの?何かするの?」
わたしが背中をさすってあげた赤毛の女の子が側に来た。
「きつねハウスオープン。えっと2階建てで1階にダイニングキッチンとトイレとお風呂と2部屋、2階は全部で3部屋。良い感じでお願いします。あっ、お風呂は大きめで。ソーラーパネル完備でIH機器とかあると嬉しいな。水はきれいな地下水道を選んでからお願いします」
ある程度、頭の中で浮かべてきつねハウスを出す。
融通が利くのは確認済み。
「びっくりしたー」
「なんなのこれ?」
「きつね?」
ましゅまるに似たきつねハウスが顔を出す。
「ねぇねぇ、入ってもいい??」
「いいよー。玄関でくつはぬいでね」
「おじゃましますなのじゃ」
「おじゃまします」
子どもたちのあとに、入ってくるランゼフさん達。
「きつねさんばっかりだね」
きつねの絵が描かれたカーペットにカーテン。テーブル。
すべてきつねの形をしていたり、描かれていたりとしている。
外観は、きつねハウススキルから出て。
それ以外のカーテンやテーブルなどはデビルホールに収納された材料から改良されて出ることは把握済み。
「なにこれ?」
バスルームの方から声が聞こえてくる。
「お風呂の部屋だよ。これを触ったら一定の間、お湯が出てくるから、それで身体と頭を洗って、その後にお湯につかって1日の身体の疲れをとるんだよ。そこに置いてある容器の上をプッシュするとドロッとした液体が出るからそれがセッケン扱いだよ」
実際、お風呂に入って身体の疲れをとるって言うのは正しくないと聞いたことがある。
まぁ、血流は良くなるらしいし、毛穴に詰まった汚れもシャワーだけに比べて取れやすいそうだから、お風呂に浸かると言うのは利点があるらしいけどね。
IH機器はダメっぽかった。
このお風呂も、水は地下からだろう。
「火の魔石埋め込まれてないけど、お湯出るの?」
ミュウちゃんが聞いてきた。
えっ出ないの?
『キュキュッ』
と蛇口を回す。
水は出るけど、少し待ってもお湯が出ないことが分かった。
「ここに魔石の入りそうなくぼみがあるよ?」
ミュウちゃんが発見した。
「あちゃー。じゃぁお湯出ないかも。でも安心して」
お水をある程度貯まったあたりで、きつね火を唱える。
お水ときつね火が混ざっていく。
手を入れ温かさを確認する。
「はいりたーい」
「いいよー。じゃぁ、えっと、まずは女の子からにしようかな。リリアさん任せてもいいですか?子どもたちと一緒にお風呂に入ってきてもらってもいいですか?」
「はい、わかりました」
リリアさんの返事を聞く。
一度孤児院に戻った女の子たち。
女の子がお風呂に入っている間に、女の子たちの服をデビルホールの自己修復機能できれいなものにした。もちろんあらかじめ許可は取ってある。
つぎはぎだらけだった服が普通に売られていそうなものへとなった。
「ランゼフさん」
「なんじゃ?」