第12話 孤児院に依頼/虎の威を借るきつね/いろはきつね桜子
商業ギルドカード、タオルと砂糖の代金を受け取った。
そのまま、孤児院に出したきつねハウスへと戻った。
「ミュウちゃん。この魔石を魔工石に加工。任せてもいいかな?」
昼食をとっていた孤児院の子たちと副院長のリリアさん。
「えっ?あっ。うん」
みんな一緒にお昼ご飯の時間だったみたいで、庭に誰もいなかった。
急に現れたわたしの発言に驚かれる。
院長のランゼフさんいないんだけど、どこに行っているのかな?
「1人、1時間お給金800J支払います」
リリアさんにおおまかな説明をして、お願いすることにした。
ココンちゃんから配達してもらったナイフと魔石たちを置く。
~森~
特にすることもないので、森に行くことにした。
新しいきつねスキルを使いたいというのもある。
街から少し離れた場所まで歩く。
近くにモンスターや人がいないのを確認する。
「虎の威を借るきつね」
日本語の意味では確か、実力者の威光を借りて威張ることだったと思う。
しかし、きつねスキルには、虎を出し入れ可能になると表示されていた。
「にゃー」
トラが猫科なのは知っているけど、にゃーって鳴き声。
驚く。
ましゅまるは特に怖がったりしていないようで安心。
白色の毛で黒色の縞模様がある。多分ホワイトタイガー。
瞳の色は水色だ。身長?はわたしよりも大きいと思う。
2mを超える大きさだ。
「レッツゴー」
呼びだしたホワイトタイガーの名前は、しらゆき(ホワイトスノウ)にした。
乗ってもいいみたいなので、背中に乗ることにした。
これで動くのが楽ちんだ。
わたしの身体は強化されている。
昨日の夜動いて気付いたのだけど、履いている靴などは、強化されていないわけで、全速力で走ったら、底が抜けてしまったんだよね笑
あちゃーって感じになったよ笑
デビルホールに収納して、すぐに修復したけどね。
川に到着。
迷わず進むしらゆき。
泳ぎが得意みたい。
わたしの身体は濡れちゃった。
ましゅまるはわたしの頭に乗っているから濡れていない。
そして、新しく覚えた、きつね日和、きつねの嫁入りⅡを試した。
雨を操れるって天候を操れると言っても過言ではないと思う。
「いろはきつね」
少し興味のあったきつねスキルを使用した。
「私、きれい??」
技名を唱えて、川に映った自分を見る。
身長を伸ばしてみました。
親戚のお姉ちゃんに似ている。
どういうことかというと、柔らかい顔立ちと言えば良いのかな?
服装が変わってしまっている着物である。
わたしは今、着物を身に纏った女性だ。
この姿の時は桜子と名乗ろう。
夜桜だから桜子、ネーミングセンス笑
「きつね顔」
別にきつねの顔になるわけではないこのスキル。
何とも紛らわしい。
嗅覚が優れるというきつね技。
「なんか、イカ臭い?。しかも鉄っぽい臭い??」
右、左、左右を見渡す。
特に異常はない。
変わりない風景。
タブレットを取り出しマップを確認。
多分これじゃないかな?
ゴブリンと人。
人の名前が、ファミィー。
なんか見たことのある名前。
あっ、魔道具店で出会った女の子だ。
1人で森の中にいるということは冒険者?
ソロ?単独冒険者ということかな?
「しらゆき、ましゅまる行くよ」
川で、前足を器用に使い水の掛け合いを始めていた2匹に言葉をかける。
ゴブリンを発見。
「わたし、食べてもおいしくありません。あっ、そこは……」
なんか、脱がされ始めていた女の子。
ストリップが始まるのかな?
いや、自分から脱いでいるわけではないから、ストリップではないね。
「きつね石」
『びゅんっ』
という音とともに石が飛んでいく。
グリーンゴブリンの額にクリーンヒット。
紫色の液体が飛び散る。
そのままグリーンゴブリンは後方にドサッと倒れる。
「きつね矢」
「きつねいし」
森の中なので火魔法はあまり使いたくない。
5匹いたグリーンゴブリン3匹はわたしが討伐。
残りの2匹は、しらゆきが軽々と倒していた。
かなり余裕だった。
グリーンゴブリン程度なら無傷。
これで3000Jは手に入る。
まぁ、冒険者ギルドには、持っていかないらもらえないんだけどね。魔石と交換だから。
ゴブリンの魔工石をいくらで売っているのか、魔道具店で見た、2000Jだった。
要は、冒険者ギルドで買い取ったゴブリンの魔石を、魔核にして売るだけで、儲かるという結論にわたしは至った。
いくらで、魔道具店が買い取っているのかは知らないけど自分でゴブリンを狩りに行ったらタダだ。
2000Jの収入になる。
「大丈夫?」
「あっ、ありがとうございましゅー」
引きずられたのか分からないけど、身体中泥だらけのファミィーちゃん
「立てる?」
ファミィーちゃんの手を握って引っ張り立たせようとする。
「腰が抜けて」
腰が抜けて立てそうにないみたい。
それに、なんか、アンモニアの香りがする。
これは、もしや、おしっこ??
嗅覚が優れているからきついね。
解除っと。
とりあえず、グリーンゴブリンの魔石とグリーンゴブリンたちが持っていた武器をデビルホールに収納。
そして、街に戻るまでに一度川に行き、ファミィーちゃんに水浴びをさせた。
水浴びの護衛としてましゅまるとしらゆきにお願いした。
多分、護衛もしっかりこなしたと思うだけど、魚たちが大量に捕らえられていたのには驚いた。
アルファーの街の門が見えるところまでくると、わたしたちが乗るしらゆきに驚いたのだろう。
警戒するような感じで、門番がざわざわしていた。
白色のトラは珍しいらしい。
恐れると言うよりも、娯楽みたいな感じ。
確かに、街中でも馬車をみたけど馬じゃなくて虎が引いているのも見た。
ファミィーちゃんはわたしと冒険者パーティを組むことになった。
というのも、ファミィーちゃんの人柄が気にいったのと、今後作る魔道具の試し作業を魔法の使えるファミィーちゃんにお願いしようと思ったから。
ファミィーちゃんは小さな村の出身らしい。
冒険者ギルドにて採取の依頼を受けたファミィーちゃん。
魔道具店で購入した棒杖の魔力消費率が悪かったようで、偶然出会ったグリーンゴブリンに風魔法の初歩技エアーカッターを2発唱えた瞬間、意識を失い森の中で倒れてしまったらしい。
目を覚ますと視界にグリーンゴブリン。
わたしだったら、発狂するんじゃないかなとその話を聞いて真っ先に思った。