47話 楽勝!! たのしいスライム討伐教室!!
「ーーという感じでぇ、一定の距離を保ってスライムの攻撃リズムを計りながらぁ、一気にっ……てぃっ!!」
ぶちょっ!!
俺は慣れた手つきでスライムの紅くきらめく核に短剣を突き刺す。
すると粘液でたぷんたぷんと揺らめいていたスライムボディが水風船みたいにパシャンッと弾けて、地面に水溜まりを残してスライムは消滅した。
「……とまぁ、こんな感じで落ち着いてやれば特別な武器が無くてもソロ討伐イケます。以上です」
クラスメイト20名ほどに見守られる中、俺一人でスライム攻略法を実践してみせると、ワァーッと拍手が起きた。
攻略法っていうか、ただ相手の攻撃をよく見てスキをついて倒す……と、ごくごくフツーに倒しただけなのだが。
「お~っ、すげー!! 風間ですら手こずってたスライムを君島1人でアッサリと……!! R武器しかないのに……!!」
「それ、オレたちでも頑張ればヤれるって事だよな!?」
「あー、うん。最初はちょっとあぶなっかしいかもだけど、慣れれば大丈夫。ヤバそうだったら俺かアトラスがフォローするから、とりあえず各自、自分なりにやってみてくださーい」
などと俺が偉そうにクラスメイトを指導しているこの場所はエルファスト付近のヘレナ平原。
王国に戻ってまず何から手をつけよっかなーと考えていたら、的場くんが『オレを鍛えてくれ!』と申し出てきたので、ついでに他の希望者も募ってスライム狩りツアーを決行する流れとなった。
他の希望者、っていうか結局エルファストに残っていたクラスメイト全員がついてきたけど。
みんな、異世界に来たばかりの頃はモンスターと殺し合いなんか冗談じゃございやせん~という平和主義な人たちばかりだったが。
さすがに2ヶ月も経つと現実と向き合い、この世界で生きてくには戦うスキルを身に付けなきゃ! と腹を括ったようである。
とはいえ。
「うわぁああ!! やっぱムリ!! ムリだってぇえええっ!!」
「ひぎぃぃ!! 助けて……!!」
ガツンッ!! ガツンッ!! と盾の上からスライムの体当たりを喰らってあちこちからクラスメイトたちの悲鳴が上がる。
俺でさえ戦えたんだから、他のみんなも本気出したらいけるんじゃないでしょーかと期待してたが、実際はなかなか苦戦しているようだ。
うーん。
すぐにでも助けた方がいいんだろうか、いやいやもう少し追い詰められるまで様子を見るべきか……?
直撃してもドッジボールぶつけられたくらいの痛さだし、万が一に備えて治療用ポーションも用意してはあるが、やっぱり他人が戦うのを見ているのはハラハラするもんだな。
「うぉらぁあああーっ!! どチクショーがぁっ!!」
どちゅっ!!
そんな中、的場くんが気を吐いた。
スライムの攻撃で盾を弾き飛ばされ、一瞬アトラスが援護のために動こうとしたがそれより先に突撃して見事に核を剣で串刺し!!
スライム討伐ツアー初の討伐達成者であった。
「的場さん、すごいです! 稲妻のような突きでしたね!」
「この間のガーヤックでもそうだったけど、思いきりがいいよな。勢いがある」
駆け寄ったアトラスと俺で、肩を揺らして呼吸を整える的場くんをおだてた。
「へへ、いやぁ~どーもどーも。フフ、なんかオレ、コツつかんじゃったかもなぁ」
的場くんはそれはもう嬉しそうにデレデレした。
事前にアトラスと『思いっきり褒めて伸ばそう』と打合せした通り、「防御する時の姿勢がカッコいい」だの「的場さんの髪の毛っていいニオイがしますよね」だの、そりゃもうメチャクチャなお世辞で持ち上げまくる。
すると気をよくした的場くんは「おっしゃ!! やるぜぇえええ!!」と、休憩もそこそこに次のスライム討伐へ走り出していった。
豚もおだてりゃ木にのぼる、って表現を最初に思い付いたヤツってすげぇよな。
すごいセンスがある。
そんな豚の……いや、的場くんの姿が何かのキッカケになったのか、他の男子生徒たちもスライムソロ討伐を成功させていった。
問題は女子である。
やっぱり男子に比べると非力な女子。
スライムの攻撃を盾で防ぐことで精一杯のご様子。
中にはもはや半泣きのコもいる。
ただ、それも想定内で昨夜のうちに一計を案じてあった。
「それじゃスライム討伐できた男子は女子のフォローにまわってあげてくださーい」
「えっ」
俺の突然の指示に一瞬キョトンとした男子たちであったが、すぐに女子たちの方にガッと視線を向けた。
クックック……。
お前ら、『ここで女子をカッコよく助けたら惚れられるんじゃないか!?』とかちょっと意識したであろう?
案の定、脳ミソと男性器が直結していそうな檜山、棚橋コンビがクラスの中でわりと可愛くて性格も良さそうな女子、水瀬さんの元に猛ダッシュして早速スライムをバカ二人でブッ殺した。
いや待て、豚ども。
『フォロー』って言っただろうが。
お前らが倒したら練習にならんでしょ!!
「あのー、檜山くん、棚橋くん。トドメは女子の人に譲ってあげてくださ……」
「水瀬さんどうだった!? 大丈夫だった!? オレ、カッコよくなかった!?」
「ねぇねぇねぇねぇ良かったら俺とペア組まない!? 組もうよ!!」
「あ、ありがとう……え~っと」
水瀬さんに詰め寄るコイツらの方がスライムよりよっぽどキケンな気もするが、こういう先陣を切ってくれる欲望人間がいるおかげで他の男子たちも後押しされたのか、積極的に女子のフォローに回りだした。
流れが出来てしまえばスライムごとき敵ではない。
フォローの必要もなくなり俺とアトラスも自由に討伐を始めて、日が暮れる頃にはヘレナ平原に無数にいたスライムはあらかた狩りつくしたのであった。
いつもブクマありがとーございますっ。
更新ペースは少々遅くなりましたがコツコツ書き進めまする。




