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Chapter54 圭の隠された記憶


な、なんだ今の声は? 何処から聴こえて来た!?


「きゃぁぁぁぁあッ!! た、助け……」


「ぐぅ……もはやここまでか……無念……」


あぁ、何て俺は無力なんだろう……

仲間が目の前で殺されそうになっているのに、ビビっちまって足が言う事をきかねぇ……


「んだよッ、もうしめぇかぁ!? 全然痛ぶりたらねぇぞッ!! 仕方ねぇ、すぐ楽にしてやっからよ。」


最強最悪のチートを相手にするのが間違いだった……

どんな場面でもチートが勝つに決まってるもんな……




『……ワタシノナヲ、ヨベ。』


まただ、これは真理子さん……いや、違う。

明らかに男の声だ。お前は誰なんだ?


『……キミハワタシヲシッテイル。』


俺がお前を知っている?

あぁ、確かに知っているかも知れない。

懐かしい声だ……


『……サア、オモイダセ。』


一体何を思い出せば……



ーー



な、なんだこれは……?

俺の幼い頃の記憶なのか?

小さな俺が立ってる。ハハッ可愛いじゃねぇか。


人が倒れてる……なんだ!? 倒れてる男の背中には白い羽があるぞ!?

この光景、記憶から消えかけてはいたけど、確かに見覚えがある!


「おにいちゃんだいじょうぶ?」


『あぁ、君が神に祈りを捧げてくれたおかげで、肉体は滅びようとも魂までは消されずにすんだみたいだ。』


「さっきのこわいかみさまにおこられたの?」


『あぁ、そうだ。私は神を裏切り冒涜し、神の怒りに触れてしまったのさ。

本当は完全に消滅してしまう事を覚悟していたんだけどね。本当にありがとう。


私の名前は大天使ーーー。

魂を残してくれたせめてものお礼だ、これからは君を守護していく事にするよ。』


「しょうめつ? しゅご? なーにそれ?」


『すまない、もう肉体が持たないみたいだ……


いずれ……また会おう……』



き、消えた……なんなんだこの違和感は……

確かに俺の記憶に間違いは無いが、何で今までこの記憶を忘れていたんだ?

翼の生えた天使と神様を見ていたなんて、忘れようが無い記憶だろう!

神様なら人の記憶なんてどうにでもなるってか……


ーー



『……オモイダセタヨウダナ。』


あぁ、今までお前が俺を守ってくれてたんだな……

ありがとう。


『……コレガキミトノヤクソクダ。』


ハハッ、あんな小っちゃいガキに言っても絶対わかんねぇーっつーの!!


『……サァ、ワタシノナヲヨベ。

……キミノタテダケデハナク、ケンニモナロウ。』


そう、お前の名前は、大天使……




「……大天使!! ルシフェル!!」


「なんだテメェ、いきなり元気になりや……

……な、何だぁ、その体どうなってやがるッ……」


「あぁぁぁぁぁぁぁぁああッ!!」


神楽は攻撃をする手を止め、呆気に取られた。

それも無理も無い、俺の身体は白く輝き、背中には透けた白い大きな翼、頭上には透けたエンジェルリング、こんな姿を見て驚かない奴はいないだろう。


「……はぁ、やっぱ凄えなこれは、自分の身体じゃ無いみたいだわ。

ディアン、ヴァイスさん、アイリ遅くなってゴメン、すぐに助けるから。

まずはジャックさんから……」


俺は呆然と立ち尽くす神楽を横目に、鎖に巻き付かれたジャックさんへと歩みよった。


しかし、天使の力の使い方なんて物は分からない。

きっと色んな事が出来るのかも知れないが、頭脳は俺のままなので、剣で斬るしか思い付かなかった。


「斬れるかわかんねぇけど、ヨッ!!」


ジャックさん自身を斬らないよう、注意しながら軽く長剣を振ると、鎖が奇妙な奇声を発しバラバラに砕け散った。


「……け、圭君……た、助かったぞ……」


ギリギリまで耐え忍んではいたが、助かったと安堵した瞬間にジャックさんは気を失ってしまった。


「……圭、どうして? 天使降臨(エンゼルフレイ)を?」


「いや、どーやらこの天使は昔からの俺の知り合いみたいでよぉー、ハハハッ。

もう心配すんな、俺が何とかするからそのまま横になってろ。」


アイリは倒れたまま、顔だけを上げ俺を見ていた。

ローブは焼け焦げ、顔などあちこちから出血している。


許さない、許さない、許さない……


「……ガハッ……け、圭、なの、か……?

ず、随分とみ、見違え……たな……」


「だろぉ? まぁ俺の奥の手ってやつだわ!

あんま見つめんなよー、照れるじゃねぇかよ。」


ディアンの鎧は、かなりの衝撃を受けたのだろうか、砕け散っていた。

全身にはかなりの数の内出血が見られ、

口からは血を流し、膝をついていた。


許さない、許さない、許さない!!


「……た、たくましく、なられ……まし、たな……圭殿……力になれず、申し訳……ごさいません……」


「いやいや、何言ってんすか! ヴァイスさんが来てくれてなかったら今頃もっとヤバイ状態ですよ!

後は……俺にまかせて下さい。」


ヴァイスさんは、全身を刃物で斬り刻まれたような傷が無数についていた。

剣士の命でもある、利き腕の右手の甲にはナイフが貫通し、おびただしい量の血が流れていた。


神楽ッ! お前は絶対に許さない!



「うぁぁぁぁぁぁぁぁあああッ!!」


「クッ、どうなってやがんだ!?」


俺は怒りに任せて、腹の底から叫んでいた。

すると、周りの空気が同調するように振動し、辺りに風が吹き荒れた。


「神楽ッ!! 覚悟しやがれッ!!」


「ハッ! 天使のコスプレ野郎に何ができんだッ!

おもしれぇ……かかってきなぁッ!!」



天使をその身に降ろした男と悪魔の王へと成り下がった男の闘いが、こうして今始まった。

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