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Chapter53 圧倒的実力差


俺の感情は怒りによって支配されていた。

今の俺は冷静な思考など、持ち合わせてはいない。

目の前で不気味な笑みを浮かべている男しか、俺の視界には入っていなかった。


「お、おい! 圭君ッ!? 突っ込みすぎだぁッ!」


猪突猛進、まさに猪の如く神楽に向かい突き進む。

ジャックさんの言葉などは、一切耳に入らない。


「死ねぇぇッ!! 神楽ぁぁあー!!」


「ククッ、テメェみてぇなクレイジーな奴は嫌いじゃないぜぇ〜?」


俺は全速力で走り、神楽に向け長剣を振りかぶった。

今まさに長剣を振り下ろそうとしていた、なのに何故神楽はこんな余裕の表情でいられるのか。


「おらぁぁぁぁあッ!!……


……クッ、う、嘘だろぉぉ……」


「ギャッハッハ、遅え!! コマ送りかと思ったぜぇ!」


全体重を乗せ、振り下ろしたはずだった。

言うなれば、俺の全力攻撃。

神楽はそれをいとも簡単に、むしろそれ以下の表現かもしれない。

剣に向かい人差し指を立てた、それだけで俺の全力を止めていた。

指の薄皮すらも、斬れてはいなかった。


「圭君ッ! 伏せろおぉぉおッ!!」


上空に巨大な影を感じ、振り返るとジャックさんが天井付近まで飛び上がり、俺達に向かい巨大な斧を振り下ろそうとしていた。


「ッ!? うおッ!」


俺は神楽の一歩横へと滑るように移動した。


「ぬがぁぁぁぁああああッ!」


「ケッ……筋肉バカは趣味じゃねぇんだよ……


……暗黒空間(ブラックホール)!!」


飛び上がり斧を振り下ろすジャックさんの前方に、神楽が手をかざすと、そこには直径1メートルほどの黒い球体が現われた。


球体と言う言葉は相応しくないのかもしれない。

その空間だけが、丸くスッポリと切り取られたような感じだった。

その中は何も見えない、只の闇。


「ウッ、……うおぉぉ!? グハァッ!」


振り下ろす斧の勢いは止められない。

決して触れてはいけないと直感で悟ったジャックさんは、振り下ろす手を離し、咄嗟に身体を空中で捻らせ黒い球体を回避するが、バランスを崩し地面へと激しく落下した。


「ぬぅ……奴め得体の知れん攻撃を仕掛け……

……わ、ワシの斧が!?」


黒い球体に触れた斧が消失した。

厳密に言えば球体に触れた部分のみ、握る柄だけを残して刃の部分が綺麗に切断されたように消えた。


それを見ていた俺は、少しだけ冷静さを取り戻した。

ジャックさんに続くように神楽の後方へと飛び、少し距離を置いた。

認めたくは無いが、そこには神楽の圧倒的な実力に対し、萎縮してしまっていた自分が居た。


「ギャッハッハ! オッサンいい身体能力してんなぁ〜おいッ!

どうした、距離なんか置いて……

小田ぁ〜、まさかビビってんじゃねぇんだろぉ〜?」


「う、うるせぇ!! 誰がテメェなんかに!」


「じゃあ、そろそろこっちからも仕掛けさせてもらうぜぇ〜? 」


明らかに最初の勢いを無くした俺に対し、神楽は手の平を向けた。すると、神楽から伸びている足元や壁、天井に這うように連なった呪文のような文字が、黒いオーラを帯び出していた。


絶対ヤバイ攻撃が来る……

た、耐えられるのか!? 防ごうにも手がねぇ……

このままじゃ、大勢の人が巻き添い食っちまう!


「みんなッ! 逃げろぉぉぉおー!!」


俺の咄嗟の叫びを聞いた人達は、一瞬お互いを見合った後、

一斉に我先にと、連なり走り出していた。


「クックック……死ねやぁ小田ぁッ!! これで終わ」


「……グラビティ!!」


「りだぁッ!? グハァ……」


逃げ惑う人混みの中から、小さく力強い声が聞こえ、

苦悶の表情で神楽が膝をつき、背中を丸めていた。


「……大丈夫ですか、圭。」


神楽に向かい、両手を向け全力で魔力を送り続けるアイリがゆっくりと俺の横まで歩いて来た。


「ケッ……この俺に、膝を付かせるたぁ……

……生意気な事してくれてんじゃねぇか……

ああああぁぁぁぁぁッ!!


どうしたぁ? こんなもんで終わりかぁ?

ギャッハッハ!!」


重力魔法に逆らい、神楽は立ち上がった。

一瞬神楽が魔力を高めるように力を入れた、たったそれだけでアイリの創り出した魔方陣は、ガラスが割れてしまうように簡単に破壊されてしまった。


「……う、嘘……魔方陣が割れた……」


「ワシに任せておけぇーッ!!」


愕然とするアイリの横からジャックさんが、刃の無い斧を振りかぶり、神楽に突進した。


「ククッ……地獄鎖(ヘルチェイン)!!」


神楽の後方に浮かぶ、無数の異形な魔方陣から黒い鎖が次々と連なり飛び出した。


「なんのッ! たかが鎖如きでこのワシを止め……

な、なんじゃこの動きは!?


ぬわぁぁぁあー!!」


迫り来る鎖をジャックさんは叩き落とそうとした。

しかし、鎖は振り下ろされた刃の無い斧を掻い潜るように避け、ジャックさんの身体へと巻き付いた。


「……クッ、ち、チカラが……こ、これは、

……ヤバイかも、しれんのぉ……」


一本の鎖に絡め取られた後に、次々と出て来た鎖が重なるように身体中へと巻き付いていく。


「じ、ジャックさん!? か、神楽な、何をした!?」


「ククッ、可愛いだろぉ〜? 言葉通り、地獄の鎖さ。

生気のあるもんに巻き付いちゃあ、そいつが死ぬまで生気を吸い続けるんだぜぇ?

眠るように死んじまうから俺ぁ、全然楽しくないんだけどよぉ。」


圧倒的な力の差を見せ付けられ、苦しむ仲間すら助けてやれる事が出来ない。

自分の不甲斐なさに落胆し、俺は絶望した。


な、なんなんだよ……一体いくつ手を持ってやがる。

全くと言っていいほど、勝てる気がしない。

というか、勝負にすらなってねぇぞ……

どうすりゃいいんだ……誰か、誰か……


「……メガフレア。」


そんなん無駄だって、アイリ……

ほら見ろ、指先でピンッて……


「圭!! カルミナ王は団員に預けてきた! 助太刀する。」


「圭殿!! わたくしも手を貸しますぞッ!」


ディアンにヴァイスさん……

いくら強くても只の剣が通用する相手じゃ……

ハハッ……なんちゅうチートだよ。

素手で剣折りやがった……

しかもまた違う技を出すのかよ……

あぁ、ディアンが……くそぉ……


みんな神楽に殺されちゃうのか。



やめろ……やめてくれ……

それ以上やったら本当にみんな死んじまう……



誰か、誰でもいい!! 助けてくれよ……神様!!



『……マタ、アエタナ。』

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