表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/61

Chapter5 凱旋


「で、ヴァイスさん。その、イルム王国とやらは遠いんですか?」


未だ片膝をついたままのヴァイスさんに対し、俺は少し気まずい感じで問い掛けた。


「いえ、すでにここはイルム王国の領地であります。

近くに馬車を待たせておりますゆえ、それほど時間はかからぬかと。」


ここでようやくヴァイスさんがゆっくりと立ち上がり、俺の前に凛々しい姿勢で立つ。


ヴァイスさんが指をパチンと鳴らす、すると森の陰からドドドッと、騒々しい音を立てながら馬車がこちらに向かって走って来た。

馬が2頭に屋根付きの馬車籠、屋根はなめした皮で作られている。他にも色々と豪華な装飾も施されていた。


マジか、本物の馬車だ! 初めて見たな……


アニメの世界でしか、見た事無い馬車に俺は心が踊った。それに生まれて初めて至近距離で馬を見た。

なんて優しい目をしているんだと、その馬のプリティな目をウットリと見つめる俺。

そんな俺を羨望の眼差しで見つめているカルミナ。


ヴァイスさんが運転席?と言えばいいのだろうか……

そこに颯爽と乗り込んだ。


「さぁ、行きますぞ! お乗り下され!」


ヴァイスさんが手綱を掴み、意気揚々としている。

俺とカルミナは馬車に乗りこんだ。

室内もえらく凝っている。椅子は木材で作られたベンチのようになっていた。


俺が椅子に座ると、何故かカルミナは俺の隣へと座る。

対面の椅子にも座れるのに、わざわざ隣に座られると、世の中の大半の男は変な勘違いをするだろう。

だが、俺はしない。女という生き物に対し、希望などは一切持たない。


そして、俺とカルミナを乗せた場所は城に向かって走り出した。


ドドドッドドドッ


お世辞にも、乗り心地はあまり良くは無い。

まだ、俺の愛車ランボルギーニ(10年落ちの中古の軽)のほうが快適だ。


横に座ったカルミナが、ジッと俺を見つめている。


「な、なんだよっ、おれの顔に何か……」


俺は不覚にも、少し顔を赤くしながら照れてしまった。


「い、いえ、なんでもありませんよぉー」


カルミナは、しまったと言った感じにすぐさま目を逸らし、横を向いてしまった。


なんだか嬉しそうだな、カルミナ。


走り出して30分ほど経っただろうか。

窓から見える景色が、気付いた時には綺麗な西洋風の街並みに変わっていた。

街の中には、小さな川も流れている。


「っと……ここは?」


俺は馬車の窓から、とても日本とは似ても似つかない、

外の風景を、感慨深く見ていた。



「はいっ、ここはですね、イルム王国の城下町ロートリアといいますよぉ。」


カルミナは、少しはにかみながら、体を俺の方に向けた。


窓から見える街は、とても賑やかで華やかだった。

そこにいる人達も皆、笑顔だった。とても他の国と戦争中だとは思えない雰囲気に思える。


襲われた緊張感から開放されたのか、カルミナが頻繁に、俺に笑顔を見せるようになっていた。

窓から入った風に、カルミナの銀髪がなびいている。

それはとても幻想的で、絵になるとはこの事だろう。


俺は窓から顔を出し、街の人に手なんか振ってみる。

街の人達も陽気に手を振り返してくれる。

俺の気分は、修学旅行のように浮かれていた。


「なぁ! カルミナも一緒に……」


俺は窓から手を出したまま、カルミナの方を向き、手を差し出した。


「いえ、わたしは……」


カルミナは顔を伏せ、少し申し訳無さそうにしていた。


なんだろう、急にカルミナの元気が無くなったな……

街の人と交流するのが苦手なのだろうか。


ほどなくして、馬車はバカでかい門の前で止まる。

門の前には数人の門兵らしき人も見えた。


「さあ、着きましたぞ!」


ヴァイスさんが馬車から降り、俺達にも降りるよう促す。

俺とカルミナも馬車から降り、3人は門の前に並んだ。


うわぁ……鎌倉の大仏並みの門だなこりゃ……

よくアニメとかで見るが、こんなデカい門て、どういう仕組みで開くのだろうか?

電動とかではあるまいし、まさか人力……


と、いらぬ模索をしていると門がゴゴゴと大きな音を立て、開いていく。


「「カルミナ レオ イルム王お帰りなさいませ!!」」


大勢の人間の、揃った大きな声だった。


門が開くとそこには、左右に分かれ跪く騎士と、従者達。

100人近くいるのではないだろうか、その先には巨大な白い城が見える。

城と言われ、俺は姫路城のような物を想像してしまっていたが、そこにあったのは西洋風の城だった。


「さあ、こちらへどうぞ。」


ヴァイスさんが先を歩きカルミナ、俺と続く。

庭とでも言うのだろうか、城の敷地を抜けて城内への扉へと向かう。


城への扉を開けて中へ入ると、すぐに大広間があり、

そこにも従者だろうか、数え切れないほどの人がいた、皆カルミナに跪いている。

そこでヴァイスさんも跪いた。

その1番奥に玉座が見えた。見るからに王の椅子だ。


俺は、自分がここに居てもいいのかという、場違いな雰囲気に飲まれそうになり、カルミナの顔色を伺うと、

カルミナの顔には、先ほどまでの笑顔は無かった。


「少し待っててね……みんなが納得できる説明を思い付いたから……」


カルミナが俺の耳元に手を当て、少し顔を赤くしながら小さな声で呟いた。


何の事だろう? 俺の事だろうか?


カルミナはスタスタと前へ歩きだし、壇上に登った後に、玉座へと腰掛けた。

そして、足を組み、大きな声で言い放った。


「皆の者! 私が留守の間、城の警護ご苦労であった!

楽にしてよい!」


は、はぁ? さっきといい、キャラ変わりすぎだろ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ