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Chapter36 洞窟ダンジョン


『立入禁止 この洞窟は凶悪な魔物が出現します』


洞窟の入口にはこんな立看板がしてある。

良い子のみんなはこの看板を見て、よし入ってみようぜとはならないはずだ。

俺も普段は良い子の1人なのだが、今日だけはこれを無視させてもらう事にする。


「よし! 行くかー!」


俺には洞窟の探索が、ダンジョンを攻略するような感覚に思えてテンションが上がっていた。


「何を1人で熱くなってるんですかー、そんなに意気込むほど私とのデートが楽しみだったんですねー。」


先に歩け、この野郎。足払いかけてやるわ。


ミサが先頭を歩き、俺達は洞窟の中へと入って行く。

中へ入ると、辺りは薄暗く、前が良く見えないので松明の火を頼りに進む。中は湿度が高く、何処と無く重くるしい空気が流れていた。


「所で、2人はこの洞窟には来た事があるのか?」


黙って歩くと、洞窟の空気も相まって湿っぽくなってしまうので、俺は少し声を張りながら話す。


「ふっふっふ、私はありますとも! その数なんと3回!」


「……入口までのお供しかないです。」


ミサは普段から声を張り、話すので少しうるさく感じたが、周りが静かな分、アイリちゃんの声もよく聞こえた。


しばらく歩くと、分岐点のように道が分かれていた。


「これ、どっちに行きゃいいんだミサ。さすがに3回も来てる人なら分かるんだろ?」


いつの間にか、俺の方が先を歩いていたようでミサの方へ振り返り訪ねた。


「もちろんですよぉ〜、この洞窟はですねぇ、とても入り組んだ作りになっていて、間違った道を進むと永久に辿り着けないし、出られない仕様になっておりますー。」


ミサがサラッと笑顔で怖い事を言っている。


あぁ、そうか、俺達はここで野垂れ死ぬのか……

こいつは信用ならないしな……


「な、何を不安になってるんですかぁー、私ちゃんと道覚えてるんですから!

泥舟に乗った気持ちでいてくれていいですよ。」


泥舟だったら沈み放題だけどな。


「ふっふっふ、分岐は全部で5回ですよ。

右、左、右、左、左。この順番で進めば世界樹に辿り着けるのです! 」ドヤァ


ミサの振りまくドヤ顔を尻目に、俺とアイリはさっさと右の道へと足を進めた。

後ろから、待って下さぶふぇ、と聞こえてきたが、俺達は些細な事では振り返らなかった。


「アイリは歳、いくつなんだ?

あ、ヤベッ呼び捨てしちまった。」


俺がアイリちゃんの一歩前を歩き、松明の灯りで足元を照らし前へと進む。


「……構いません。14歳です。圭は?」


おぅふ……呼び捨てかよ……


「俺か? 23だ。アイリからしたらオッサンかな?

ハハハー」


「……そうですね。」


アイリは相変わらずの無表情で、一言返し。俺のツッコミ待ちのセリフも虚しくスルーされた。


おい、会話のキャッチボールしようぜ?

そこは、そんな事ないですよ〜がお決まりだろ?


そうこうしている内に次の分岐へとやって来た。

確か、ミサが言うには次は左だった気がする。



「わ、私もお話に混ぜて下さいよ〜寂しいじゃあないですかぁー。テヘッ。」


走って追いかけて来たのか、少し息を荒げ、それを誤魔化すかのようにテヘペロをしているが、鼻からは赤く光るものが流れる。


分かったから、まずその鼻血を拭け。


俺達は、3人でくだらない事ばかり話しながら、奥へ奥へと進んで行った。ようやくアイリも少しだけ打ち解けてくれた気もする。

ただ、俺達は少しばかり話に夢中になり過ぎた。


「おっ、次の分岐だ。あれ? 今何個目の分岐だったっけ……なぁミサ、さっきはどっちに進んだんだっけ?」


「はぁぁ〜? 圭ぽん覚えてないんですかぁ、仕方ありませんねぇ、確かぁ……右、そう、さっきは右に行ったはずですよ〜間違いないです。」


俺は話に夢中になりすぎ、今まで通って来た分岐点の数を忘れてしまった。ミサは2択問題でも考えるような雰囲気で答え、額に汗を流しつつも断言した。


「そうか、じゃあこの分岐は左だな。」


俺達は何も疑わずに左の道を進む。

この洞窟の中は本当に広い、道幅もさる事ながら天井も高い。

しかし、この俺達が選んだ道は道幅が心なしか狭い。


「……ん? 少し空気が変わった気がしないか……?」


「は? 何をいきなりカッコつけてるんですかぁ〜?」


周りの空気が重い……気のせいか……

いや、確実にさっきまでと違う。道を間違えた?

ミサが言うには合ってるはずだ、しかしミサの言う事だ。全くでは無いが信用はしていない。

いや、訂正。全く信用できない。



「お、おい、行き止まりだぞ、ここ。」


「まったまたぁ、私を騙そうなんて……ホンマや!」


俺が前に進もうと松明の灯りで辺りを照らすが、先が見えない。どこを照らしても岩場の壁だった。


「……来る。」



ズドォォォォーーンッ……パラ……パラパラ……


何かが、何者かが俺達の背後の天井から降って来た。


フシュルルルッ……シャアァァァッ



「ま、マジかよ……」


「はわわわわわわ……」


「……バジリスク。」


そこには、巨大な双頭の蛇の魔物が居た。

久しぶりの食事だと言わんばかりに殺気立っている。


俺達の前方は行き止まり、後方には双頭の蛇。

袋の鼠とは、まさにこの事。


「ミサ! アイリ! やるぞ、戦闘準備だ!」


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