Chapter35 洞窟探索へ
「おはようっ、朝だよー」
カルミナに揺さぶられ、俺は眠い目をこすり、起き上がる。
美少女に毎朝起こされる。こんな夢のような話、元の世界では考えられなかった。
「あぁ、おはようカルミナ。」
こんなシチュエーション、側から見れば同棲カップルか、新婚さんにしか見えないだろう。
まさしく素晴らしいリア充体験!
リア充(仮)と言った所か。
「あ、カルミナ、今日さ、ミサ達と街の外れの洞窟まで出掛けてくるよ。」
俺は布団を畳みながら出かける事を伝えた。
カルミナがミサの名前にピクッと反応する。
「……ミサ? あの子はまたKを危ない目に合わせ……
って、たちって事は、他にも誰か行くのぉ?」
「おぉ、ミサの後輩らしいんだけど、魔法騎士のアイリちゃんって、子も一緒だ。」
カルミナが一瞬考えた後、何かを思い出したような顔をした。
「あー、あのアイリちゃんかぁ、じゃあ安心だよっ。
洞窟って事は、きっと、世界樹の枝を取りに行くんだよね?
洞窟には強い魔物も出るから、騎士団に護衛に付くよう言ってあげてもいいよー?」
ミサの名前が出た時は明らかに不機嫌な顔を見せたが、アイリちゃんの名前が出た途端にいつもの笑顔に戻った。
あのアイリちゃん? 安心? カルミナも何か知ってるな。
「いや、大丈夫だ。出来れば戦闘も経験して実戦を積みたいし、騎士団が居たら、手出しする暇さえ貰えなさそうだしな!」
出来ればゴブリンよりも、ちょこっとだけ強いぐらいの魔物と実戦してみたい。
「今日1日、カルミナの傍から離れちゃうけどゴメンな!」
俺はカルミナに両手を合わせて頭を下げた。
「うんっ。大丈夫。今日はお城から出る用事無いしっ、えーっとぉ、今日は確か……
第1と第3騎士団が非番のはずだから、助けがいるときはアイリちゃんに思念伝達をお願いしてね、そしたら騎士団を向かわせるからっ」
頭を下げた俺に対し、カルミナは笑顔で答え、もしもの時の助け船まで用意してくれようとした。
て、テレパシーだって? 恐ろしい子……
出来れば第1騎士団は呼ばないほうがいいと思う、
いや、強いのは分かるよ? ただ、あいつめんどい。
第3騎士団は団長も含め、まだ会った事はないな。
「お、おぅ、何かあったら頼むわ……
じゃあ、行ってくるよ!」
「はぁいっ、気をつけてねぇー。」
俺は、革ベルトと長剣を腰に携え、カルミナに手を上げながら部屋を後にした。カルミナは扉が閉まるまで俺に手を振ってくれていた。
門の前では既に、誰かが立っているようだ。
俺は、出遅れてしまっていたのかと焦り急ぐ。
「悪りぃ悪りぃ! 出遅れちまった、って、アイリちゃん1人? あのアホはどうしたの?」
門の前ではアイリちゃん1人だけが立っていた。
むむ、昨日は夜でうっすらとしかわからなかったが、明るい時に見ると、この子もかなりの美少女だ!
身長はカルミナと同じ150㎝前後。
金髪のショートに、眠たそうな目にブラウンの瞳。
杖とローブはミサと同じだが、帽子は被っていない。
これは萌える。
何度でも言うが俺はロリコンではない。
「……何度杖で叩いても起きないので先に来ました。」
アイリちゃんは眉ひとつ動かさずに無表情のまま、淡々と喋っている。
やっぱり声、ちっさ! って、おい、安易に伏線回収してんじゃねぇよあのボケ。
しかし、奴なら……
「で、ミサならこのタイミングで俺が振り返ると、こちらに走ってくる人影が……って、やっぱりキターッ!」
虫の知らせか、俺が城のほうに勢いよく振り返ると、予想通り三角の帽子を被った人影が走ってくる。
ミサの行動がだいたい分かってきたぞ俺。
そして、ここでお決まりのっ?
「ゼェ……ゼェ……お、お待たせしまし……たはぁ……フゥ……」
ミサは俺達の前で華麗に立ち止まり、手を膝に付いて息を荒げている。
おい、いきなり期待を裏切るな、顔面から転べよ。
「ね、寝坊とかしてないですからねぇ? よ、余裕で起きて、朝のティータイムを楽しんでましたよ?」
訳の分からない言い訳をするミサの右のほっぺたが少し赤く腫れている。
アイリちゃん、なかなかミサが起きないからって、結構強く杖でド突いたんだな、こりゃあ…
「あー、分かった分かった。所で、今日行こうとしている洞窟は遠いのか?」
「いえ、ここからでしたら30分もかからないですよー。洞窟に入ってからが少し時間かかるかなっと言った所でありますっ。では向かいましょうか、アイリとケイン。」
ミサは杖を高々と掲げ、意気揚々と歩き出した。
俺はいつからコスギになったんだ。
圭ぽんを略して来たか、なかなか裏をかいてきやがる。
本当に洞窟に着くまではあっという間だった。街から近い事もあってか、途中で魔物と遭遇する間も無く付いてしまった。
さぁーて、洞窟探索と行きますか!