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Chapter34 魔法騎士アイリ


「へぇ〜、詠唱破棄か、じゃあちょっと見せてくれよ。全然期待とかしてないからさ。」


腕を組み、少し馬鹿にしたような表情でけしかけた。

どうせいつもの事だ、何かしら話に裏があるのであろうと俺は全く期待をするような素振りも見せず、ただぼけっとミサの方を見ていた。


「ふっふっふ、その言葉後悔させてあげますよ!

行きます! リヴァイアサンッ!」


勢いある掛け声と共に、ミサの全身が青白い光に包まれ、後方に立っていたアイリの頭上へと魔方陣が現れた。

俺はまさかと思って駆け寄ろうとはするが、俺の反射神経では間に合わなかったようだ。


ジョロロロロロ……


アイリは全身に水を浴びた。体力が少し回復した。


確かに詠唱破棄は成功している……

だが、お前は人として間違っているぞ。

俺にやるならまだしも、後輩の女の子にリヴァイアサン(軟水)をかけるなんて先輩としてどうなのだ。


「ふっふっふ〜」


ミサは背中を向け腕組みし得意気になっている。

なんで鼻高々なんだよ、こいつは……


「あー、もう、アイリちゃんがずぶ濡れになってんじゃんかよ〜ちょっと待ってろ、すぐにタオルを」


「……ご心配には及びません……」


俺は濡れてしまったアイリちゃんの為に城内へタオルを取りに戻ろうとした。しかし、アイリちゃんは俺をとても小さな声で制止した。


え? アイリちゃん声ちっさっ!


「……ウインド。」


アイリちゃんが小声で呟くと、全身が黄緑色の光に包まれ、4方から出現した魔方陣が彼女を取り囲み、風が吹き荒れた。

一瞬で濡れた服を乾かしたのである。


「い、今、同時に魔方陣を4つ……つか、普通に詠唱破棄してたよなアイリちゃん?」


「……気のせいです。」


俺はこの世界に来て、まだミサの魔法しか見た事が無かったが、確実にアイリちゃんの魔法が凄いと言う事はわかる。

出来の悪い(頭も悪い)先輩に気を使っているのだろう。アイリちゃんはよく出来た後輩だ。

未だに背を向けたミサは全然こちらを見ていない。


しかし、こんな少女が詠唱破棄に、魔方陣の同時展開

よほどのエリートなのか、何か裏があるのか。


「どうでしたかぁ〜私の詠唱破棄は! ふっふっふ、

どうしました、素晴らしすぎて声も出ませんか。」


ようやく、こちらへくるりと振り向き再度鼻高々に俺を見下すような表情をしていた。


「あー凄い凄い。凄すぎて震えたわー。」


直後にもっと凄いもん見たっつーの。


「あっ、そうだっ、圭ぽん明日どうせ暇でしょ?」


「明日はお暇ですか? だろーがっ!」


本当に、こいつは話の脈絡がなさ過ぎる。


「明日、街の外れの洞窟にアイリちゃんと用事があって行くんですけど、そんなに一緒に来たいのだったら来てもいいですよ?」


「おい、俺がいつ一緒に行きたいと言った?」


「……プフッ」


俺達のやり取りを後ろで聞いていたアイリが、笑いを堪えきれずに吹き出した。


「あれ? 来たくないんですか?」


「わぁーったよ! 付いて行きたいです、お供させてもらってもいいでしょうか! これでいいかー!」


「えーっ、本当我が儘ですね。仕方ないから連れて行ってあげますよ。アイリちゃんもいいですか?」


「……はい。」


全く噛み合わない言葉の掛け合い。

まさに夫婦漫才のような流れである。

こんな頭の悪い奴と夫婦と思われてしまうのは癪な話なのだが、少し楽しんでしまっている自分の気持ちもある。


「で、洞窟に行って何をするつもりなんだ?」


「本当に圭ぽんは知りたがりですねぇ!

洞窟の中に世界樹が立っているんですけど、その世界樹の枝を取りにいくのですよ。私達、魔法騎士の杖は世界樹からしか作れないのですー。」


天使族が来るまではどうせ動けないんだ、暇だし付いて行ってやるか。実戦経験も積みたい事だし。


「わかった、一緒に行くよ。朝からでいいのか?」


「もちのろんですよ。では、明日の朝、門の前に集合ですよ! 絶対寝坊しないで下さいよ。」


俺は了承し、ミサは自分自信にフラグを立てた。


あー、これはミサがガッツリ寝坊するパターンだわ……

でも、アイリちゃんがしっかりしてそうだから大丈夫そうだな。


「おう、じゃーな! お前達も早く部屋に戻って寝ろよー。」


ミサとアイリちゃんに後ろ手を振りながら、俺は背中で話しつつ、城内へと戻って行く。


ミサとの冒険。何事もなく終わる気は全くしない。

しかし、今回は2人きりでは無く、新たな仲間アイリちゃんも一緒だ。

彼女は何者なのだろうか、ミサは彼女を後輩と言うが、実力は確実にアイリちゃんの方が上。

明日の冒険はアイリちゃんがキーになるに違いない。


アイリには姉がいるのだが、それはまた別のお話。


俺が王室の扉を開け部屋に戻ると、カルミナはスースーと寝息を立てて眠っていた。

俺はカルミナの耳元でおやすみと呟く。


さて、俺も明日に備えて眠るとするか……


明日の朝も無事、この世界で目覚めますように。

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