表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/61

Chapter24 到着、中立の塔


ゴブリンとの戦闘が終わり、俺達は再び馬車へと乗り込むと、さらに歩を勧めた。

馬車の中でカルミナが笑顔でありがとうと言ってくれた。

その後、数時間走り続け、空が赤く染まり次第に日が暮れようとしていた。


「よぉーし! お前達、今日は、この辺りで陣を張り野営をする! 準備にかかれ! ガッハッハッ」


ジャックさんが手を上げ、騎士達の馬を止める。

ジャックさんの一声で騎士達が馬を降り、馬に括り付けていた物資などを下ろし野営の準備を始めた。


辺りの見通しがいい、開けた平野でキャンプをする。

俺は、こんなに開けた場所は危険ではないのかと、

ジャックさんに問いかけた。

周囲全方位から、敵の襲撃にそなえなくてはいけないし、また囲まれるのでは と。


しかし、そこは流石の騎士団団長。

素人の俺とは考え方が、全然違った。


全員戦闘に長けた者ばかりならば、狭い岩場だろうが湖の横だろうが、どこであろうと一向に構わないのだ。

しかし、戦闘のできない者、護るべき対象がいる場合、

その者の退路を確保する事が1番になる。岩場や湖を背にした時に敵に囲まれれば、退路は無くなり、

より危険に晒されてしまう。


夜間、見張りの兵を増やすという労力は増えるが、

リスクを減らせる事には変えられないとの事だ。


すっかりと日は落ち、辺りは暗闇に包まれた。

俺達は火を起こし、夕食を取る事にした。

テーブルや椅子などはもちろん無い。

モルゾイの肉を一欠片、パンが1つ、それぞれが皆んなにへと配られていった。


「えぇーっ! 晩ごはんこれだけですかぁー? ううっ……全然足りないですよぉ〜……」


驚愕の表情でミサのパンを持つ手が震えている。

俺達は草の生えた地面へと座り込んでいた。


「うるせぇ、黙って食えミサ! だいいち、ゴブリンとの戦闘だって俺に押し付けやがって……て、は?」


それは一瞬の出来事だった、パンと肉を同時に一口で食べてしまった。 お前は蛇か!


「あぁ……お腹すきましたぁ……ところで、

圭ぽん、美味しそうな物持ってますねぇ〜私が食べてあげましょうか?」


ミサは獲物を狙うような目付きで俺のパンに対し、穴があきそうなほど見つめている。


ヤバい、一周回ってミサとの絡みが楽しくなってきた……


「わーったよ、ほら! 俺のパンやるから、しかしよくそんだけ食べて太らないな、ミサ。」


俺は隣に座っているミサにパンを手渡した。


「ふっふっふ、それはきっと私が成長期だからでしょう……

あと、数年でダイナマイツバディですよぉ!」


受け取ったパンをローブの胸の部分に入れ込み、謎のセクシーポーズを取っている。


「はいはい。成長期って、そーいや、ミサの歳はいくつなんだ?」


俺は、立て膝に頬杖をついた。


「私ですか? ピッチピチの17歳ですよ〜……

ま、まさか……私を狙っ」


「分かった。それ食ったらすぐ寝ろ。馬に敷かれて寝ろ!!」


カルミナのいる馬車の近くには、ヴァイスさんとジャックさんがいる。 2人とも寝ずに警護するのだろうか?

あの2人が着いていてくれるなら大丈夫だろう。


俺も今日は疲れた……少し休ませてもらうか……



俺は柔らかい芝生の上に横になっていた。




ーー「……まぶっ……やべ、朝だ! 完全に寝ちまってた……み、みんなは……?」


目を開けると辺りが明るくなっているのに焦り、飛び起き周囲を見回した。


騎士団の人達が片付けをし、出発の準備をしていた。

無事を確認する為、カルミナの馬車に立ち寄ると元気な笑顔で俺を出迎えてくれた。


「おはようK、もうすぐ出発だよぉ〜」


「あぁ、おはようカルミナ!」


あぁ、やはり今日もカルミナは可愛い!

あれ? そういえばミサの姿が無い……

ま、まさか魔物に……?


俺は少し心配になり、馬車を離れ周囲を探す。

少し離れた岩場でミサが倒れている。俺は焦り、ミサの元へと駆け寄った。が、


普通にまだ寝ていた。

丸い石の上で、体がくの字に反り返った状態で寝ていた。


ことごとく意味のわからん奴だ。


「おい、起きろ! さもないとお前のローブを捲り上げて、頭の上で結んでから、妖怪巾着袋女として今日1日過ごしてもらうぞ!」


俺はミサの耳元で大声で話した。ローブの裾を掴み捲り上げようとするとようやくミサがようやく起きた。


「……だ、団長ぅ〜もう食べられ……逃げちゃダメだ……


ハッ? こ、ここは何処ですか! 知らない天井……」


「わかったから早く行くぞ、初号機使い。」


みんなは俺とミサを待っていてくれたようだ。

騎士団とヴァイスさんに軽く会釈した後、馬車に乗り込み出発した。


馬車でカルミナと数時間談笑しつつ、俺達は前へと進んだ。

その間、やはりカルミナが怖いのか、ミサはずっと黙り込み、小刻みに震えていた。


「ガッハッハーッ! 見えてきたぞー! お前達!」


外からジャックさんの声がしたので、馬車の窓から顔をだすと。

レンガ作りで、円柱型の細長い塔が見えた。


「おぉーっ、あれが中立の塔かー。なぁ、カルミナはよくここに来るのか?」


俺は窓から顔を出したままカルミナに話し掛けた。

風で髪がバサバサとなびく。


「そんなによくはこないかなぁ〜? お話があるから来て下さいって言われた時しかこないしねぇー。

この前に来たのは、半年ぐらい前だもん。」


「……………ガクガク……ブルブル……」


カルミナはほっぺたに人差し指を当て、思い出すような表情で答え、ミサは絵も言われぬ恐怖に震えた。



神族の生き残りとは、どんな人達なのか

天使族とは、本当に天使なのか。

俺は新しい出会いに心を躍らせていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ