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Chapter22 出発のち遭遇


俺達はついに、神族の生き残りが住まう場所。

中立の塔へと出発した。


うーむ、やはり馬車はどこか落ち着かなくていけない……

妙にソワソワしてしまう。

カルミナもミサも全然喋んないから、変に空気が重い。

ミサは王を前にして、借りてきた猫状態だしな。

よし、ここは1番お兄さんである俺が場をもたせてあげるとしよう!


「なぁー、カルミナ。少し聞いてもいいかー?

今から行く中立の塔ってのは、神族の生き残りだっつーのは聞いたんだけど、その人達は神様って事になんのか?」


隣に座っているカルミナの方に顔を向け、重い空気を切り裂くように、明るく元気に話し掛けた。


「んーとっ、ちょっと違うかなぁ〜。

先祖代々、神に仕えて来た者。って、言うほうが近いような感じだね!」


カルミナも俺が出した雰囲気に乗るように、いつも2人だけで喋るような感じで話し出した。


「ふーん、神を信じ、神を崇める者達。みたいな所か。

俺の世界で言う、聖職者みたいなもんかなぁ。」


「その聖職者というのが、私にはよくわからないんだけど、多分、Kが想像してる通りじゃないかなぁー。」


確かに聖職者ならば、全ての者を平等に扱うだろう。

中立の立場だってのも頷ける話だ。


ん? 何だ? ミサの奴が目をまん丸に見開いて、

アワアワ言ってるぞ? またちびったのかこいつ?


「アワワ……カカカッ、カルミナ様ぁ〜?

そ、そその、お話し方は、い、いったい、どういった……」


ミサが目を見開き口をガクガクさせ、汗をダラダラとかいている。


あ、やっちまったな、カルミナさんよ〜!

ミサがいる前でいつもの喋り方しちゃったよ!


「……み、み、……ミィィィ〜サァァァア〜!」


見る見るうちにカルミナの顔が真っ赤に染まっていく。馬車の中の空気がビリビリと振動していた。


「はっはいぃぃぃい〜! も、申し訳ありませんっ!

わ、私、ななな何か、よ余計な事をををっ」


ミサは震え上がり、何度も何度もカルミナに対して理由も分からず頭を下げていた。


いけ! やっちまえカルミナ!


「……まぁ、よい。 いずれは分かる事だ。

このまま、お前の前でKと話ができないのでは、つまらんからな!

ただし、この事はお前の口から他者に伝わる事は絶対に許さん……理解したか? ミサ?」


馬車内の空気がスーッと静まっていった。カルミナはすぐに落ち着きを取り戻し、冷静な顔でミサに向き合っている。


「はわわわわっ、も、もちろんであります、ハイッ!

わ、私、くく、口は固いのでごごご安心ください!」


「ならば、よい! 」


ミサは体がカチコチになりロボットのような動きで、両手を使い口を押さえる。それを見たカルミナは腕を組み踏ん反りかえっていた。


「あ、あのぉ……カ、カルミナ様はぁ、小田様の事を(けい)と、お呼びなさるのですね……?」


あー? 小田様だぁ〜? そんなの普段言わねぇだろ!


「ああ、そうだ。それがどうしたのだ?」


「わ、私も、圭……ぽん、と呼ばせてもらっても、宜しいでしょうか……テヘッ」


まさかの、王に対してのテヘペロ。


何なんだこいつ、ビビッてるのか度胸あるのかどっちなんだよ! 怒られろ! 怒られろー!


「圭ぽんか……わかった。許可しよう。」


カルミナは腕を組んだまま、コクリと頷く。


許可するんかーい! 俺には許可申請無しかーい!


その話を前の方で聞いていたヴァイスさんも、この話に食いついてきた。


「ハッハッハ、成る程。確かに小田殿では少しよそよそしい感じもしますな。

では、わたくしも圭殿と呼ばせて頂く事にしましょう。」


「……もう、好きに呼んで下さい……」


ヴァイスさんがこちらへ振り返り、あまり見せない笑顔で俺の名を呼んだ。俺は全てを諦め受け入れた。


本心を言ってしまえば、親しみを込めて下の名前で呼ばれる経験ができるなんて事は、

俺の人生の中では、1つの快挙といってもいい。



そこで、急に外が慌ただしくなってきた。

どうしたのいうのだろうか、馬車がスピードを落とし、

外の騎士団の人達が何やら大声を出している。


「どうしたんですかヴァイスさん! 外が騒がしいですけど、何かあったんですか?」


俺は馬車の前方に身を乗り出し、ヴァイスさんの様子を伺った。


「圭殿! ミサ様、敵襲でございます。これから戦闘になりますゆえ、お気を付け下され!」


「ええええっ、てて、敵襲ですかぁぁあー?」


ヴァイスさんは馬車の後方にいるミサにも聞こえるように大きな声で敵襲を告げ、それを聞いたミサは驚き慌て出す。


それからすぐに馬車が止まり、カルミナを中に残し、俺とミサは外へ出た。

カルミナはいつもと変わらず冷静だった。

1つも慌てる様子を見せない。

余程、騎士団を信用しているのだろう。


敵とは一体、どんな奴なんだ? まさかガルム帝国なのか? 周りを見渡すが目線の高さには敵がいない。


それは、俺達の目線より下にいた。


ゴブリンだ。しかも1匹だと? 舐めてもらっちゃ困るぜ! これなら俺でも倒せ……


「総員ー! 馬車を守れーっ! すでに我々は囲まれている! ガッハッハー油断するでないぞー!

ゴブリン風情、100体如き目ではないわーっ!」


ジャックさんが馬車を指差し、騎士団の人達を鼓舞している。

俺は目の前のゴブリンでは無く、ジャックさんの視線の先を見る、そこにはゴブリンの大群。

俺達の周囲360°見渡す限りのゴブリン。

恐らく、100体どころでは無かった。


このアホ魔法使いと、またゴブリン退治するはめになるとは……


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