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Chapter21 中立の塔へと


王室を出た後、俺は顔を洗い、身なりを整え、

ロアから貰った、革ベルトと長剣を腰に携えた。

そして、目が覚めて、まだ異世界に居られた事を神に感謝した。

俺は気合を入れる為に両手で頬をパチンと叩き、気合を入れ直した。


俺はこの世界で絶対に生まれ変わるんだ!


「よぉーし、準備完了! えーっと、あのアホの詰所は……」


支度を終えた俺は、まだ場所を知らない魔法騎士の詰所を探しに、騎士団の詰所の近くへとやってきた。

この辺りには、用途まではわからないが詰所が多数並んでいるので、この中の何処かに魔法騎士の詰所があるのでは無いかと俺は踏んでいた。


並んだ詰所の前を、聞き耳を立てつつ歩いていると、

とある部屋の中から、大勢の女性の声が聞こえた。

恐らくここで間違いないだろうと、扉をノックし、

静かに扉を開け、恐る恐る顔を入れて見た。


「あら、小田様、おはようございます。私達に何かご用でしょうか?」


扉から顔だけを出すと、扉のすぐ近くに居た魔法騎士が、俺の存在に気付き丁寧に挨拶をしてくれた。


はあぁぁぁ……とても綺麗な人だなぁ〜。


綺麗なブロンドでロングの髪に蒼い瞳。

端正な顔立ちで、気品溢れる佇まい。

この人だけが、他の魔法騎士とは違う刺繍の入ったローブを着ていた。

この人が魔法騎士の団長なのだろうか。


俺は挨拶を返すのを忘れ、思わず見惚れていた。


おっといけない、今はミサに話しをつけねば。


「私の顔に何か……?」


「あ、す、すいません! み、ミサはいますか?」


「はい。ミサでしたらあちらで朝食をとっております。どうぞ中へお入り下さい。」


軽く会釈をし、部屋に入るとそこはまさしく女の園。

桃源郷にでも迷いこんだ気分であった。

1番奥のテーブルにミサの姿が見え、俺は迷惑にならないようゆっくりとミサに近寄った。


ミサの前には、山積みにされたパンに特大のボウルに入れられた大盛りの野菜のスープ。

それを、ガツガツと休む間も無く食べ続けている。


「……おい。ミサ、お前、朝からどんだけ……」


俺はそろりと異常な量の朝食を摂るミサに近付き、恐る恐る声を掛けてみた。


「んん、んがむん、もんがあががんんんーむん?」


おい、誰か通訳を呼んでくれないだろうか?


「んぐっんぐっ、プハァッー!

小田ぽん、こんな朝からどーしたの?」


ミサは野菜スープの入った特大ボウルを持ち上げ、一気に口へと流し込んだ。


一体何なのだコイツは……朝からよくそんなに食べられるもんだ。

いや、もしかしたら魔法騎士と言うのはこれぐらい食べるのが普通なのか? と思い、

他の人の食卓を見てみたが、1人当たりパンを1つに、小さなお椀に入った野菜スープだけだった。


「あ、あぁ、今朝カルミナの所に、中立の塔って所から使者が来たみたいでさ、何やら大事な話があるみたいだからこれから向かうんだけど、

カルミナが魔法騎士も1人ぐらいは連れて行きたいって言うから、お前行かないか?」


「は? 嫌ですよ。」


無表情での即答拒否。


キィーッ! むかつくー!


「な、なんでなんだい、ミサさん? 」


「だって、小田ぽんに誘われたから来たんだって思われたら、なんか癪に触るじゃないですかー。」


俺は少し下手(したて)に出て、口は引きつりながらも作り笑いで食い下がる。

しかし、依然と真顔で拒否の理由を語るミサ。


お前の中で俺は一体どんな扱いなんだよ!!


「じ、じゃあ、これはカルミナの命令だって言ったらどうなんだ……?」


「えぇぇえ! おおお王のめめ命令ですかぁあ……

そそ、それなら行かせて頂きますぅうー!」


俺は口をヒクヒクさせながら、最終手段であるカルミナの名を出した。

さすがにそれにはミサも一気に慌てふためき、右手を高く上げて同意した。


そうだった、こいつらにとってカルミナは絶対的な王であり、恐怖の対象でもあるのだった。

コレは使える。覚悟しておけ!


「よし、じゃあ、俺は先に行ってるから準備が出来たら門の前に来てくれ!」


「はぁ〜い、もう少し食べたら行きますよ!」


思わずミサの頭をはたきそうになるが、何とか堪えた。

詰所から出る際は、失礼しました。と最低限の礼儀を行い部屋を後にした。




俺が門へと着いた時、すでに門の前にはカルミナ、ヴァイスさん、それに第2騎士団の方達が集まっていた。

馬車が1車に馬が10頭、これは騎士団の馬だろう。


「お待たせ、カルミナ! もう少しでミサも来ると思うから。」


「……うん、わかった。」


俺の大きな声に対し、カルミナはボソボソと小さな声で返す。

みんなには、この話し方を知られたくないのだろう。


「よぉー! 始めまして! 圭くん!

俺は第2騎士団団長のジャック クロウだ!

ジャックと呼んでくれ! ガッハッハッ!」


大きな笑い声と、大きな手の平をこちらに向かって上げながら1人の男が近付いてきた。


「あ、どうも。今日はよろしくお願いします。」


俺はジャックさんに礼儀正しく一礼する。


とても大柄で豪傑な男だ。鎧の隙間から見える肉体は筋骨隆々、見るからにパワータイプだ。

しかし、気さくな感じがして人は良さそうだ。

やはり、団長と言うからには相当に強いのだろう。


そこにようやく、あのアホ……いや、ミサが来た。


「おおおお待たせしましたぁあっ!

とっ、とっ、うわぁ、ぶふぇ〜〜……」


ミサがこちらへ走り寄る姿を遠くから見ていて、

もしかしたら、やってくれるのではないのかと期待していたのだが、本当に期待を裏切らない奴だった。

見事に躓き、顔から滑るように転んだ。


ナイス、フェイススライディング!



総勢10名の騎士団達は馬にまたがり、俺とカルミナ、

あと馬に乗れないミサも馬車へと乗り込んだ。

馬車の騎手はヴァイスさんだ。


「我が団員達よ! 目的地は中立の塔である!

我らの役目は、死しても己の屍で王を守る事だ!

全ての敵は薙ぎ倒せ! ガッハッハーッ!

ではゆくぞぉ! 出発だー!」


「オオオオオォォォーッ!」

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