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Chapter19 激動の1日の終わり


いやー、やはり我が家が1番落ち着きますな!


俺はあれからカルミナに、俺達がゴブリンを倒した事と、モルゾイ捕獲までの話をした。


最初は、俺の英雄譚を嬉しそうに笑顔で聞いてくれていたのだが、

魔法騎士の無茶な悪企みで、結局2人だけで捕獲に向かう事になった話をした時には、まさに鬼の形相と呼ぶに相応しい表情をしていた。


「ねぇ……K? その魔法騎士のお名前は……なんて言うのぉ?

そぉ……あの、ミサちゃんねぇ?

……

懲罰房に送ってやるわ! あのダメ魔法騎士めが!」


ガタッと音を立て、椅子から立ち上がり、カルミナの周りを薄い黄色のオーラが取り囲んだ。

部屋がビリビリと振動している。まるでスーパーサイヤ人のようだ。


カルミナ殿!ご乱心にござる!


カルミナは何をそんなに怒っているのか……

もしや! 俺とミサが2人きりで行った事による、

俺に対してのジェラスィ〜なのでは?

ふふっ、この異世界では、やはり俺はモテキャラ路線なのであろう。


「……ったく、2人でなんて、あの子は何を考えているのよ…

2人に何かあったら、誰が1番悲しむと思ってるのよ

……もう……。」


落ち着いたのか、カルミナは少し悲しそうな表情に変わり、静かに椅子に座り直していた。


あぁ、カルミナは、俺の事もミサの事も、等しく心配なんだろうな。

本当に優しい子なんだと思う。

カルミナにとって、イルム王国の人間は、みんなが家族同然みたいなもんなんだろう。


「ま、まぁカルミナさん、ミサも悪い奴じゃあないし、許してやってくれよ、な?

それにミサの魔法がなけりゃ、俺達今頃ヤバかったかもしれないんだしさっ!」


ミサの事を何とか庇ってみようとしたのだが、

よく考えたら、そのヤバい状況を作り出した張本人は、まさしくそのミサだった。すっかり忘れていた。


「その……ミサって子……す、好きに……なった……?

あっ、いや、何でもないの! 忘れて!」


少し顔を伏せて、指をモジモジさせている。


「……ん? あ、あぁ……」


な、なんだ今の質問は? 凄いドキッとした。


「ね、ねぇ、疲れたでしょ? そ、そうだっ、お風呂入ってきなよぉー。

私はもう、先に入ったから。 そろそろ寝る時間だしね!」


急いで話題を変えるように、少し焦った表情で、

俺にお風呂に入るよう勧めてきた。


「お風呂かー! あぁ、頂くよ!」


何故だか顔が少し赤くなっているカルミナを横目に、

異世界の風呂に対し、期待に胸を膨らませ部屋を出た。


王室を出て、少し歩いた所にお風呂があるのは既にリサーチ済みだった。

入り口には鮮やかな装飾が施されているし、見た感じこのお風呂も、恐らく王族専用なのだろう。


脱衣場で、服を脱ぎ捨て中へと入ると、とてつもなく広い。ちょっとした集会が開けそうである。

この規模のお風呂を、今迄はカルミナ1人だけで使っていたのだろうか。


大理石のような、光沢のある石で作られた湯船に、

口からお湯を吐き出している、マーライオンのような物まである。気分はセレブだった。


俺にとっては久しぶりの、1人の時間だった。


白い湯けむりの立ち昇る、少し熱めのお湯にゆっくりと入る。この世界には、ガスも電気も恐らく無い。

魔法で沸かしたのだろうかと、詮索するが、一気にそんな事はどうでもよくなった。


「ふぁぁぁ〜……こりゃ、いい気持ちだわ〜……

しっかし、今だに異世界に来たなんて信じらんないよな〜

一度は自分から死のうとしたんだよなぁ、俺……

なのに今は生きる事が楽しいと思ってる……

人間、環境が変われば何とやらってやつですかねぇ」


俺は肩まで湯に浸かり、頭に濡れタオルを乗せて思いにふけるように目を瞑る。


本当に異世界に来られてよかったと、心から思った。


「あぁぁぁ! そう言えば、この後って寝るんだよな……

ま、まさか同じベッドで……マジかよ……

ど、どうすりゃいいんだ……?

くっ、伊達に童貞を守って来た訳じゃねぇな……俺。」


俺は湯船から勢いよく立ち上がり、この後に起こり得るかもしれない展開に驚愕し、震える拳を握りしめていた。


そういえば、女の子と一緒に寝た記憶があるのは保育園のお昼寝が最後だ。

分かるとは思うが、やらしい意味ではない。


俺は風呂から上がり、身体を綺麗に吹き上げ、シャツの袖に腕を通す。顔の緩みが止まらなかったので、自分の頬に平手打ちをし、喝を入れる。


王室の前まで戻って来たが、扉の取っ手を持つ手がブルブルと震えていた。

勇気を振り絞り扉を開け、機械仕掛けのような挙動不振な動きになりながら部屋へと戻ってきた。


「あ、戻ってきたね。じゃあ、寝よっかぁ。」


パジャマに着替えていたカルミナは、いつもと何も変わらない表情で待っていた。


「う、うん! ね、寝るぞ!」


高鳴る心臓の音が耳触りなくらいに聞こえてくる。

俺は意を決し、ベッドへと向かうカルミナの後ろに着いて行く。


うぉぉお! カルミナのベッドに俺も一緒に……あっ



カルミナのベッド、の横の床に布団が敷いてある。


なん……だと……!?

でも、なんだか安心した。俺はチキンでいい。



「おやすみ、カルミナ。」


床に敷かれた布団をめくり、中へと潜り込み、

先程までの雑念を取り払うように目を瞑る。


「うん、おやすみ、K。」


カルミナもベッドの布団へと潜り込んだ。


異世界に来た、カルミナと出会えた。

今はこれで充分幸せなんだ、これ以上の何かを求めたらバチが当たるだろう。


さぁ明日は何しよっかなぁ……スゥ スゥ スゥ……



「……私、あなたに出会えて、本当によかったと思ってるんだよ?

神様なんて、いじわるしかしないはずなのにね……

これだけは神様に感謝だよ……おやすみなさい。K。」


カルミナは俺が眠ったのを確認し、ベッドから出た後、俺の枕元にちょこんとしゃがみ込んでいた。

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