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Chapter16 素人剣士とヘタレ魔法使い


何だろう……妙にリラックスしているゴブリンを見ていると、何だか無性に腹が立ってきた……


「……おい、ミサ。これは何なんだ? お前はあれか?

ゴブリンの接待でもしてんのか? あの打たせ湯のどこにリヴァイアサンの要素が含まれているんだ?」


俺は、またミサの両肩を掴み、ガサガサと揺らす。


「エッへへ〜どう? 凄いでしょ私の魔法!」


ミサはとても満足気に、やりきった感を出しながら得意気な顔をしていた。


ダメだこいつ。真性のアホだ ……

何故この状況で鼻を高くしていられるんだ?

状況わかってんのかミサのやつ……

ゴブリンに至っては、体勢を変えてうつ伏せになって背中に打たせ湯してやがるし……


「あー、小田ぽん! 私いい事思い付きましたよ。今の内に、腰に付いてるその剣でゴブリン切っちゃったらどうですか?」


どんな心境の変化があったのか、ミサが急に、冷静な顔へと戻り、俺の腰の辺りを指差した。



「ん? おぉ、そりゃ名案だわミサ! いっくぜぇー! とりゃあぁぁー!!」


俺は、ハッと思い出したかのような顔で、革ベルトの鞘から長剣をスラリと抜き、うつ伏せで横たわるゴブリンに向かい、容赦無く斬りかかった。


ザシュッ ギィエェェェ!!……


「はぁ、はぁ……た、倒した……んだよな……? 」


俺は緑色の血が付いた長剣を見つめ、初めて剣で生物を斬った感触に、罪悪感を感じ、手が震えていた。


いくら魔物とはいえ、剣で斬るのは気持ちのいいものではない。相手が人ならば殺人という行為になる。


「はぁぁ〜とりあえず一安心だな。一体いつから着けられていたんだか……」


深い溜息と共に、全身から一気に力が抜け、へたり込むようにその場に座り込んだ。


「え? 門を出てすぐですよ??」


はやく言えこの野郎。



ゴブリンとの初戦闘を終え、少しその場で休んだ後、

俺達は再び歩き出し、そのまましばらく行くと、

目の前にようやく森が見えてきた。

この辺に牛が、いやモルゾイが生息しているのだろう。


辺りを見渡すが、牛のような生き物は見当たらない。

むしろ、俺達以外には何もいない気がする。


しかし、よく考えたら捕獲とは言うが、どうやって捕まえるのだろう。首輪でも着けて、引っ張って帰るのであろうか。

ミサは、このモルゾイの捕獲自体、初めてではないだろうし、連れて帰る方法くらいは知っているだろう。


「なぁミサ、この辺で間違いないんだろ?」


俺は目を細め、周辺を入念に見回した。

しかし、いくら見回そうと暗闇の森、以外の感想は出てこない。


「はい! そうですね、前に先輩達と来た時も確か、この辺でしたからね。」


ミサもキョロキョロと周辺を見回した。


「ちなみに前来た時は、どうやって連れて帰ったんだ?」


「え?? 連れてなんて帰れませんよ! 何言ってるんですかー冗談きついですよ? 小、田、ぽん☆」


少し俺を馬鹿にしたような顔付きで、右手の人差し指を俺の顔に向けて3回振った。


「いや、だったらどうするんだ? 殺すの……か?」


俺は、ゴブリンを斬った感触を思い出し、固く拳を握りしめた。


「当たり前じゃないですか! じゃないとこっちが殺されちゃいますよー」


当然の事、と言わんばかりの顔で凄まれてしまった。


牛に殺される? 確かに、暴れ牛やら、猛牛やらそういう類いの牛は確かに危険なのだろう。

しかし、俺に生きている牛を殺す事ができるのだろうか。


ズンッ ズンッ ズンッ……


「おわっ、なんだ……地震か? おい、ミサ……

おーい、ミサさーーん! 聞いてる?」


突然、鈍い音と共に足元が揺れ出し、地震が起きたのかと、焦った俺はミサの方にと視線を向けた。


「はわわわわわ きききききままししたよぉぉお……」


ミサは、右手を口に当て、ガタガタと震えていた。


「お、やっとモルゾイさんのお出ましかー?

一丁カルミナの為に覚悟を決めて牛を……牛……

うしぃぃぃぃ!? はあぁぁぁぁぁあーー?

こ、これのどこが牛なんだぁぁぁあー!?」


暗闇の中、ミサの視線の先に目をやると。

最初は牛を見る視線、俺が立ったまま真っ直ぐ前を見るぐらいだったが、その視線は徐々に上へ上へとあがっていく。


「ううううしっ! て、なななんですかー!?

モモモルゾイだってぇ、言ってるじゃないででですかぁ! はぅぅぅぅぅ……」


ミサは、また目がイッてしまっていた。しかも今度はブルブルと震えながら、口から泡のような物までブクブクと吹いていた。


確か、カルミナはこう言っていた。

足が4本、白黒のまだら模様で、モ〜と鳴くと。


確かに足は4本、だが、それとは別に手が2本あり、白黒のまだら模様と言うよりは、

黒色の体に白の線で禍々(まがまが)しい呪文のような模様が描かれているように見える。


あと、鳴き声はモ〜なんて可愛らしい物なんかじゃあない!


モオオオオゥウグワァァアアアアッて、感じだ。

口は裂け、大きく鋭い歯が見える。

体長も牛ではない、象よりも大きい。

いや、コレ完全にクリーチャーですわ……


しかし、このモルゾイ。こちらにあまり関心が無いのか、特に何かを仕掛けてくる様子も無い。


「……ミサ、お前、他に何か魔法使える……ん? おい、ミサ?」


俺はモルゾイから視線を外さぬよう前を向いたままミサに話しかけた。が、返事が無い。


「えへへ……えへ……」


ミサは半笑いで口からよだれを垂らしていた。

コイツ完全に現実逃避してやがる。


モオオゥウグワァァアアアアッッー!


「ヒィッ!」「うにゃあぁぁあ!?」


俺とミサは、モルゾイの雄叫びに、腰が抜けそうなぐらいビビってしまっていた。


怖い、あまりの恐怖に押しつぶされそうだ……


「あ、あはは……私少しちびっちゃいました……うぅ……」


ミサは、目をウルウルとさせながらも何故か半笑いだ。


「……わかった。みんなには黙っといてやるから1度冷静になって策を練ろう。」


「……はぁい……グスン……」


俺はミサの肩にポンと手を置き慰めた。

ミサも少し安心したのか徐々に普通の顔付きに戻っていった。


俺達はひとまず、逃げるように森の中に入り木の裏手へと隠れ、座りこんだ。

どうやら追ってくるような感じはなさそうだった。


とりあえず策を考えねば 、しかし使えるカードは……

素人の剣と、とんでも魔法のみ。

さぁどうしたものか……

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