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Chapter15 自称 大魔法使いミサ


ロアから貰った長剣を腰に携え、意気揚々と待ち合わせの門へと向かう。

初めて会う魔法騎士に、胸を躍らせ、期待に胸を膨らませていた。


「んーと……まだ、来てないみたいだな。」


俺は、門の周辺をキョロキョロと見回してみた。

以外と早く着いてしまったのか、辺りに人影は無い。


俺は暇を持て余し、転がっていた拳大の石で1人サッカーを始めると、ついつい白熱してしまい、遠くまで蹴って転がしてしまった。


「すいませーん! おまたせしっとっ、と、ぶふぅ……」


そこに1人の女の子が、こちらに手を振りながら焦った顔で走り寄ってきて、

俺が転がした石に、盛大につまずき転んでしまった。


「うわあぁぁ! 大丈夫かー!?」


女の子は見事に顔面から、落ちたように見えた。

俺は焦り、慌てて女の子に駆け寄る。


「……は、はい……大丈夫です! わ、私は魔法騎士のミサですっ。ヨロシクね、テヘッ☆」


女の子はムクリと起き上がり、鼻血を出しながらも、

意味不明にウインクをして、舌を出していた。


ドジっ子キャラか……うむ、これもありだな。


綺麗な刺繍が入った漆黒のローブに、水晶の付いた杖、頭にはカラーコーンのような、THE魔法使いの象徴とも言える帽子。

帽子からはボブカットの黒髪がのぞいていた。

しかも、予想していた以上に顔も可愛い。


「あ、あぁ、よかった……そうだ、俺の名」


「小田様ですよね! 聞いてますよー!

小田様って呼ぶのも堅苦しいんで、小田ぽんと呼んでもいいですか?」


女の子は鼻血をローブの袖でゴシゴシと拭きながら、

俺の言葉を遮るように話す。


なんだ、こいつもあの男と同類か。

というか、この世界にはこんな変な奴らがゴロゴロいるのだろうか?

しかし、可愛い女の子から親しくされるのは、願っても無いことなので、恥ずかしいが許可するとしよう。


「お、おう、好きに呼んでくれ! だから、俺も君の事は……ミサって呼ばせてもらっていいか?」


俺は少し頬を赤らめながらも、恥ずかしさを隠す為に真面目な顔を作った。

女の子を、呼び捨てにする事自体慣れていない。


「えー、別に呼びたいならミサでもいいですけどー」


ミサは露骨に嫌な顔をしていた。

身体を横に向け、腕を組みながら横目でこちらをチラチラと見てくる。


しかし! 俺も1度決めたら貫き通す男だ。


「なぁ、ミサ……」


「何ですか? 小田ちん」


いや、変わっとるがな。


「あ、何ですか? 小田ぽん」


「ミサ以外の魔法騎士はいつ頃くるんだ?」


少しづつ、この子はおかしいと感じ始め、俺は徐々に微妙な顔付きへと変わっていった。


「えー来ませんよー? これぐらいの仕事、

この大魔法使いの私に手にかかれば、チョチョイのチョイ何ですからぁー。だから他の人達には嘘の集合場所教えておきましたっ、 テヘッ☆」


ミサはその場でクルクルと回ったり、杖を振ってみたりと、落ち着きが無い。そして最後には謎のテヘペロ。


男手が欲しいと言われて来たのに一体何なんだこいつ……

よほど腕に自信があるのか、アホなのだろう……

ここは自称大魔法使いちゃんを信用するとしよう。


「とりあえず出発するか」「おーッ☆」


辺りはすっかり、日が落ちて暗くなってきた。

城の門を出て、街とは反対の道へと進む。

ミサの情報によると、モルゾイは平野を抜けた先の森周辺に生息するとの事だった。


「ねぇねぇ、小田ぽんっ」


2人で並んで歩いていると、ミサが肩を叩いてきた。


「ん? 何だ、ミサ?」


俺を呼んだはずの横にいるミサを見るが、ミサとは目が合わない。


「さっきから、ずっと後ろを付いてきてる子供がいるんだけど、小田ぽんの子供?」


ミサは前へと歩きながらも、ずっと後ろを見ながら俺に話しかけていた。


「ばっ……何言って、だいたいなぁ俺は童貞……」


童貞を舐めるなと、謎の対抗意識を燃やしそうになったが、ミサの言った後ろ、と言う言葉を思い出し冷静になる。


ゆっくりと振り返ると……なんか居るぅぅう!?


子供? いや、違う、確かに背はかなり小さいが、グリッとした目、尖った耳、ボロい布を身体に纏い、手には錆びた斧を持っている。

3人がピタっと、同時に動きを止め見つめ合う。

何ともシリアスな絵だ。


「……ね、ねぇ、ミサさん……? この方は通称ゴブリンさんとか呼ばれてないですかねぇ……?」


ピタッと動きを止めたまま、視線だけをゆっくりとミサの方に向けた。


「はわわわわわ、本当……ゴブブブブリリンでですぅ」


ミサは右手を口に当て、ブルブルと震えていた。


「おい、大魔法使いさん! 何震えあがっちゃってんの!? あんた強いんでしょうが!」


俺はミサの両肩に手を置き、ガサガサとミサを揺さぶってみる。


「そそそそうでした……わ、私、とーってもつつつ強いんですよぉぉ〜!」


杖を構えはしたものの、ミサの視線が明らかに変な方向に向いている。


キシャァァアアーッ!


錆びた斧を振りかぶり、ゴブリンが襲いかかってきた。


「や、やってやらぁぁあ!!」


改めてミサの方に目をやるが、完全に目がイッていたので、仕方なく俺が前へと出る。


しかし、俺は初めて見るゴブリンに頭が真っ白になり、完全に腰の長剣の存在を忘れていた 。

必死に繰り出した蹴りが、背の低いゴブリンの顔にヒットし、ゴブリンは吹っ飛んだ。


しかし、こんな物で倒せる訳も無く、すぐに起き上がり、斧を構えなおしている。


「おい、ミサ! 早く何か魔法を使ってくれよ! このままじゃヤバいって……」


俺は焦りと恐怖で、うまく足腰に力が入らない。


「……わかりました……任せて下さい。私の大魔法をお見せ致しましょう……

水の精霊よ、我に力を与え、水龍の加護の元に、我の言霊を具現化せん……」


ミサは左手で杖を持ち、右手で水晶に触り、

聴きなれない言葉で呪文を詠唱し始めた。

さっきまでのイカれた顔付きではない。


あれ……急にキャラが変わったようだ、ミサは本当は凄い魔法使いだったのか!?


「……出でよ!! リヴァイアサンッ!!」


呪文の詠唱を終えたミサがゴブリンに向かい杖を振り下ろす。ミサの前方に魔法陣が出現し、ミサの身体は青白い光に包まれた。


マジか……す、すげぇ……これが魔法!!



ジョババババババッ……


ゴブリンの頭上に魔方陣が出現し、そこからゴブリンの頭にビタビタビタッと水が打ち付けられた。


なんだか気持ち良さそうだ……

例えるなら健康ランドの打たせ湯に打たれる、

中年のオッサンの図と言った所か……


ふーん、 で?

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