00:月は東に日は西に
「ラストの線画どれくらいで終わりそう?」
「あと一時間で終わそうじゃ! もう少し待っててくれ!」
「はーい。アタシがやれることある? もう塗り終わってるし」
「じゃ、じゃあこっちのスクリプト、お願いできますか……?」
「りょーかーい。どれくらい打てばいい?」
「えっと……キャラ指定と背景指定をやっていただければ……」
「あれ……なんでここのCG表示されないの? なんで? あれ? あれ?」
「スクリプト打ち間違えてるんじゃない? もしくはファイル名の方が違うとか」
「あ、そ、そうね。確認してみる」
「戻りました。栄養ドリンクと夜食買ってきたので、皆さんどうぞ」
「ありがとー」
「フタ開けて我の口に入れてくれ!」
「ご飯くらい普通に食べた方がいいって。それくらいの余裕はあるし」
「少しでも早く終わらす! 我が遅れたんじゃからな!」
「……では少しでも早く終わらして休憩してください。どうぞ、ドリンクです」
「助かる!」
「私も何か出来ることありますか?」
「……ごめんなさい。このルートのCGの差分、確認してもらっていい?」
「もしかしたら一つズレて書いてしまったかも……」
「了解デス」
「俺も他のルート確認しとく」
「……ありが、とう」
キーボードを叩く音、ペンタブを走らせる音、マウスをクリックする音が小さく響く。
みんな必死で、一生懸命で。
「……売れてほしいな」
こんなに頑張ってるんだ。報われてほしい。
窓の外、沈みかけた陽と浮かんできた夜。
二つが作る、夕暮れに照らされながら。
心から、そう思った。