悪魔でメイドですから。
言葉は、世界を、形作る。
言霊
悪魔でメイドのウテナと名乗った女性。
彼女から、名前を聞かれる。
ニックネームでも何でも良いとの事。
スマホゲーム内で、使用中の名前を、伝えた。
「まさおさま、で」
「まさおさまですね。かしこまりました」
「下から読んでも、です」
「カイブン」
彼女は、ほうっと、納得したように軽く頷く。
アクマでメイドとしての笑顔を、くれる。
回文で、怪文が、この名前のポイント。
正しい男に、怪しさが、付加される。
上下左右も、無くなる。
センスとか、フィーリングといった微妙なもの。
気の問題。
気づくか、気付かないか。
わずかな差、ほんのわずかな差。
それが、将来、明暗を、分ける。
カイブンと、すぐ返せるのは、素晴らしい。
思考能力の高さを感じさせる。
賢いと、愚かの違いは、結局、するかしないか。
思ったり、考えたり、想像したり。
気配り、心配り、そういったもの。
お仕事するにあたり、最も大切なもの、と、言える。
接客業なら、なおさらの事。
タクシードライバーもそうだ。
運送業では、無く、接客業。
それから、彼女に、色々ご教授して頂く。
ルールやシステム説明。
懇切丁寧に、悪魔でメイドとして。
新しい主人に対する初教育。
手慣れた感じ。
唯々諾々と、従う。
教育は、重要だ。
スムーズに、分かりやすく、テキパキと真剣に。
こちらも、真剣に受け止める。
真摯に、そうでないと、失礼にあたる。
ほれぼれする。
後で、お屋敷のメイド長である事を知る。
ハイレベルな理由を、納得する。
あくまで、悪魔のメイド長。
どんな長でも、長は、長。
全体を、見渡し支配する存在。
お給仕やご奉仕のみが、メイドの責務では、ない。
大切なのは、教育。
自己教育だけで無く、他者への教育も。
新主への教育は、完璧。
その後、他を数軒あたる。
念の為、確認の為にだ。
最初のこのお屋敷に落ち着く。
もうその時には、心を掴まれている。
そう感じていた。
恋の予感。
それから、何度か、ここに、帰宅する。
中では、基本、無言だった。
いる間は、ずっと意識を、向けていた。
彼女に、そして、お屋敷内全体に。
黒ウーロン茶を飲み終えて、お出かけ。
お見送りしてくれる時に、少しお話し。
何度目かの、お出かけの際、聞いてみた。
「欲しいものは?」
少し考えてから、答えてくれた。
悪魔でメイドとして、悪魔の笑顔と共に。
「極上の魂」