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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

狼は血を見て嗤う

作者: oziisan

バッドエンドですのでご注意ください。

 眩い光に思わず目を閉じる。


 次に目を開けた時見上げなければならないほどに大きな人間の前にいた。


(何だ?何が起こった?)


 突然の事に思考が彷徨う。


 見上げた先にいる人物は年の頃は16~18と言ったところか?物語などで主人公を苛めたりしそうな陰険な顔をした青年が立っていた。


 その青年が口を開く。


「くそっ!何でこんな屑が召喚されたんだ!?ステータスもゴミみたいじゃないか!」


(召喚?ステータス?何のことだ?)


(だがそれよりも俺の事を屑だと?良い度胸だちょっとばかり体がでかいからと言って舐めた口ききやがって…)


 青年の言葉にキレて一歩前に踏み出そうとしてコケる。


(何だ!?何が起こってやがる!?体をうまく動かせねぇ…!)


 十全に体を動かせないことに驚き、己の体を見やる。


(な、んだぁ?こりゃあ…)


 そこには白い体毛を持った4つ足の獣の姿があった。顔の判別ができないので憶測でしかないが、フサフサとした毛並みや尻尾を見る限りイヌ科の動物の様に見える。


「満足に歩くこともできないのか!?この糞忌々しい屑が!くそっ!あの嘘つき野郎め!騙しやがったのかぁ!?」


 声を荒げ獣?になった男を蹴りつける。


(ぐっ…!クソが!こいつは抹殺リストに入れる…最優先だ…!)


「貴様はここから動くなよ!」


 男を蹴りつけても未だ怒気は収まらないのか青年は物に当たり散らしながら部屋を出ていく。


(ちっ…見た目以上に脆い体見てぇだな…足蹴にされただけで相当ダメージを受けたみたいだ)


 人間から見て子犬ほどの大きさになってしまったためにヒョロリとした青年の力の籠っていない蹴りでもダメージを負ってしまっている。


(すぅうう…はぁああ…)


 深呼吸して高ぶった感情をリセットする。


(何が起こったか何て考えるだけ無駄だ…この貧弱な体のままであの糞野郎の近くに居たらすぐに死んじまうな…)


(あの野郎召喚だとかステータスだとかほざいてやがったな…ホントにあんのか?…この意味不明な状況だ…あるかもしれんが…)


 羞恥心を抑え込みそれを口にする。


「ひゃぅん…」


 だが漏れ出る声は幼い獣のソレ…変化も何もなく羞恥に悶えそうになったその時、目に飛び込んでくるのは情報の羅列。





 名称:   

 種族:狼(神狼)

 状態:重傷(使い魔契約)

 筋力評価:G-

 魔力評価:G-

 技量評価:G-

 敏捷評価:G-

 運勢評価:S+


『技能』

(契約により封印中)


『魔法』

(契約により封印中)


 総合評価:G+


『称号』

(元異世界人)・(群れの長)・(反逆者)・(神を喰らう者)・(世界の敵)・(神の敵)



(マジか!マジであんのか!?今の状況を見れば雑魚なのは分かり切っていたが…封印?何だそりゃ?評価が運以外全部ゴミじゃねぇか!)


(称号も最初の奴以外身に覚えがないんだが?いつ俺が神とやらの敵になったんだよ?現状に神が絡んでるってんなら敵になってやるがな…)


 心の中で黒い笑みを浮かべながら抹殺リストに青年の次に神と書き連ねる。


(どうやったら封印とやら解除されるのか分かんねぇことにはどうしようも無いんじゃないか?)


(今できることと言やぁ…慣れねぇ体の動かし方を覚えることくらいか…)


 できることがそれくらいしかないため痛みを無視しながら少しずつ体を動かしていく。


(すぐにここから逃げ出したいところだが…契約ってのを解除しなきゃならねぇ…どうやって解除したらいいかなんぞわかりゃしねぇが、まずは情報だ…使い魔ってのが魔法なんだったら魔法書の1つ2つあんだろ…必ずあのクソを殺してやる…)


 蹴りを食らわしてきた青年が無様に命乞いをする様を想像しながらもこれから何をするのかを定める。




 ――――――――――




 あれから狭い部屋に閉じ込められそこから昼間に出ることは叶わず、時折やってくる青年に暴行を加えられながらも耐え、窓の内鍵を開け寝静まった屋敷を歩き魔法書を読み漁る毎日を続け、漸く使い魔契約について書かれた物を見つけた。


(遂に見つけた…まさか注意事項として魔獣側からの契約解除されることが示唆されているとはな…具体的なことは何も書いていなかったが、読み漁った魔法書にパスがどうたらと書かれていた…これが鍵になるはずだ!)


 日々積み重なる復讐心を糧に傷つきボロボロになった体を引きずって部屋に戻る。


(首を洗って待ってやがれ糞野郎…)




 ――――――――――





「この屑がっ!貴様を召喚してしまったおかげで私の計画が台無しだ!このっ!このっ!」


 今日もいつも通りやってきてすぐに手に持った鞭で叩く青年。


 だがいつもなら唸り声を上げながら睨み弱弱しく倒れこむだけだったはずの狼から何もアクションがない。


「何だぁ?ついにくたばりやがったのか?ちっ!貴様を召喚した触媒が惜しくて今まで生かしておいたが、結局は無駄だったか!」


 反応を見せなかった狼が震える手足で立ち、青年を感情の無い瞳で見やる。


「何だ?その目は!?このっ…」


 プツンッ


 何かが切れる音がして、青年は思わず手を止めた。


「今のは?…お前が何かしやがったのか!?」


 使い魔の狼を睨むが、当の狼は一転して口元を愉悦に染めて青年を見ている。


「何を笑っている!?おま「黙れよ糞野郎」えが…え?」


 何者かに言葉を遮られキョロキョロと辺りを見回すが狼以外誰も居ない…


「どこを見ている?貴様の前にいるだろうが?あ?」


「…貴様、喋れたのか…?」


「いいや?喋れるようになったのはついさっきだ。貴様が不用心だったおかげでこうして契約を俺の方から切ることができ、本来の力を取り戻したからだ…」


 見た目は愛らしい子犬の様な見た目の狼が大口を開けて愉快そうに嗤う。


「契約を切った?本来の力?一体…どういう――」


「こういうことさ…」


 言うや否や子犬ほどの大きさだったはずの狼はみるみるうちに大きくなっていき天井を突き破る。


「な、な、な!?」


 何が起こっているのか分からず狼狽するだけの青年。そこへ元狼だった神狼が告げる。


「俺は神狼…貴様が分を越えた召喚をしたために本来の力を封印されてしまっていた哀れな神獣さ…だがそれも契約を切ったことで本来の力を取り戻した」


「お、おぉ!素晴らしい!素晴らしいぞ!お前の力が有れば私の計画が…」


「何を言っているんだ貴様は?力を失っていた俺に行ったことを忘れたのか?俺はすでに貴様の支配など受けていない…混乱し思考がうまく定まらなくともこれから何が起こるのか理解できるだろう?」


「あ…ひっ!?」


 自身へと向けられる殺意に顔を青ざめさせ、青年は悲鳴をあげる。


「そうだ、そうだ!その顔が見たかったぞ!」


「ひ、あ…た、たしゅけ…」


「クハハハハハハハハ!お前を生かす選択肢は無い!貴様は今ここで俺が食い殺す!…だが、そうだな?貴様の手足をもぎ取り…(ボソボソ)にしても良いかもしれんなぁ!」


「あ、あぁああああ!いやだ!いやだあああああああ!」


「ハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」


 青年叫びと神狼の笑い声がこだまする。


 既に死んだはずだった神狼を解き放ち、剰え人間に対する憎悪を掻き立ててしまった哀れな青年と世界の末路は…




 ――――――――――




「ひぃいいいいいいいいいいい!!で、でたあああああああ!神狼だああああああああ!!!」


 世界の大半が破壊しつくされ人の住む町はもはやこの場所一つ。


 神により遣わされた幾人もの勇者達は既に亡く…世界を守護していた神も隠れ…


「ハハハハハハハ!楽しい!楽しいぞクソ共!…なぁ?お前もそう思うだろう?」


 神狼は己の首に掛けた首飾りに声を掛ける。


「アハハ…あぁ…楽しい…楽しい…ハハ…ハハハ…」


「そうだろうそうだろう!ハハハハハハハッ!」


 楽しそうに神狼は破壊を続ける。


「くそがあああああああああこの悪魔めえええええええ!」


 多種多様な人種達が寄り集まり最後の城を守らんと立ち向かうが…


「クッハハハハハハハハハ!死ね!死ね!死ねぇえええええええええ!ハッハハハハハハ!」


 神狼に敵う筈もなく次々と地に倒れ、返り血で真っ赤に染まった神狼は、世界に生きた人種を残さず食い殺し…


「あぁ…これでゴミが居なくなった…楽しい時間はあっという間だな?なぁ首飾り…」


「終わり?終わった?」


「その通り!終わったぞ!約束通り…」


「早く!早く!早くうううううううううううううううう!!」










「一番最後に食い殺してやるよ」









「アッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ‼‼‼」


 世界に生きる者は何も無く荒れた大地と真っ赤に染まった狼が一匹だけ。


 こうして世界が一つ死に、世界の敵が解き放たれた。


 血を見て嗤う狼は…いつの日か元の世界へと舞い戻りそこでも嗤い続けるだろう。





 ==========END==========




『神狼』

 神獣として生まれ、世界を守る守護者として生きるはずだった獣。


 生きる者を食い殺し、己が力とすることを生きがいとして暴れ回った。

 それに気づいた神が神狼を討伐しようとしたが返り討ちに会い、さらに力を付けさせる結果に。

 神狼対神達で戦争が始まり、初めは押していた神達だったが、一柱ずつ狩られ力を付けられてしまい敗北。

 しかし勝利で気が緩んでいたところを強襲されあっけなく敗れる。

 力を付け過ぎた躰を破壊することができず、ただ封印するだけでは解放されてしまう危険性があったため、心を破壊することに。

 心を破壊され、抜け殻となった躰を悪用されぬように封印したが、青年によって長い時の間に弱まっていた封印を破られ召喚されてしまう。




『青年』

 元上級貴族の生き残り。血統だけは最上級


 元々は上級貴族の一員だったが、汚職により没落。

 一族郎党処刑されるはずだったが逃亡に成功。

 国を逆恨みし、召喚魔法によって強力な魔獣を呼び出して王都の破壊を目論んだ。

 嘗て暴れ回った神狼の悪しき伝承から神狼の召喚を目指し怪しい古物商から神狼の毛を高値で買い取った。

 高い金を払って召喚した結果が幼い狼だったため騙されたと思って激怒。

 万が一があるため生かしておいたが、沸々と湧き上がる怒気を抑えられず幼狼に暴行していた。

 その結果が手足をもがれ首飾りに…。

 神狼によって世界が崩壊していくのに耐えきれず精神崩壊しそうになっていたが、そのたびに治され狂えず、生き残り最後に殺された。




『召喚された男』

 元日本人。


 両親は共働きで鍵っ子だった。中学に上がる際引っ越したが新しい学校に馴染めず苛めにあう。

 即座に担任に助けを求めたが、日和見主義の教師で苛められるお前が悪いと逆に怒られる。

 誰にも相談できず我慢していたが、大切にしていた両親からのプレゼントを壊されたことで我慢の限界を超え殴った。

 すぐに互いの両親を呼ばれ話し合いをしたが男の言い分は通らず、両親にも信じてもらえなかった。

 その日の夜遅く、両親が口喧嘩を始めその中で自分は望まれて生まれたわけでは無いことを知り人間不信に陥る。

 非行に走り荒んだ中学、高校生活を経て人間不信に磨きがかかり大人になっても変わらず荒んだ生活を続けていたが、その筋の人間と争いになり命を落とした。

 元人間であるのに神狼になって人殺しに躊躇が無いのは神狼の狂気に元からあった人間に対する不信が増幅され憎悪にまで至ったから。人間というだけで殺したくなるくらいには人間が嫌い。



ここまでお読みいただきありがとうございます。

すぐにお気に入りの小説で口直ししましょう。


何と言いますか、書いて居て全然楽しくないんですよね、バッドエンドw

長編とかでバッドエンド書ける人はすげぇな…と思いますね。

元からバッドエンドが嫌いなのもありますけど、もう二度と書きたくないですねぇw

主人公の運評価が高いのは主人公にとってはハッピーエンドだからです。


苦心しながら書いたこれが皆様の暇つぶしにでもなれば幸いです。

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