第三話 再会と変化と
明日ヒロの話の展開は遅いです。なので今のあたりは退屈に感じる人が多いかもしれません。でも後半から面白くなるのでちょっと暇な人、通勤通学の電車でやることがない人は気が向いたらこの先も読んで暇の足しにしてください。小説とは本来そういうものだと思っています。
「え?」
思わず硬直する。そして英雄の顔をまじまじと覗き込み――冗談を云っている顔ではないと察す。僕は思わず叫んだ。声が震えているのが判る。
「忘れたの? 天川ヒロ! 同じ苗字で、同じ様にヒーローに憧れていて! 一緒にここで会おうって約束したでしょ? 三年前!」
「しらねぇな」
そう吐き捨てる英雄。その瞬間、僕の中で何かが崩れる音がした。
なんで、なんで、なんで――ヒデが僕のことを――忘れている? 嘘だ、でも、どうして?
頭の中がぐるぐるする。必死で今の状況を理解しようとするがまるで掌で水を救っているかのように思考がこぼれ出て行く。考えがまとまらない。今、僕の目の前に立っているのは間違いなく天川英雄だ。僕と一緒に鞍臣先生の下で修行し、別れ際にHTIVSで会おうと約束した天川英雄――なのに、どうして?
僕はさっきまで激しく動いていた心臓がまるで破れたかのような感覚に陥り――膝から崩れ落ちた。そんな僕を他所に他の面々のペアも鞍臣先生により発表された。
「僕は神酒とかー、よろしくねっ」
射鷹は神酒の腰を掴んで上目遣いで神酒を見つめる。神酒は顔を赤らめて射鷹を抱きしめた。
「な、なんなのこの子! 可愛い!」
「うおっ、射鷹ガキの癖に神酒を落としたのー? やるじゃん。ま、花火ちゃんは俺のだけど、ね?」
「う、うん」
佐吉はニヤニヤしながら花火に笑顔を向ける。佐吉のペアとなった花火は苦笑いで返した。札一は呆れた様に云いながらレアの肩に手を置いている。
「不純だな……。ルアー・セニ宜しくな」
「レアだヨ!」
「ガハハハ! ムゲンよ。お前は俺とじゃな!」
シヴァが巨体でムゲンと肩を組む。ムゲンは表情一つ変えずに頷いた。
「ねーアタシ根暗女とじゃん、まじ有り得ないんだけど」
和歌子は不満そうにリカを指した。
「わ、私だってあんたみたいなビッチお断りよっ!」
「なにそれ!」
目を三角にしてリカに掴みかからんとする和歌子をレアが宥めた。
「喧嘩はよくないッテ。これから二人はパートナーになるんだかラ」
和歌子は悪態をついて引き下がった、リカも黙って頷いた。鞍臣先生はそんなゴタゴタを無視してこう云った。。
「まあパートナーには色々あるかも知れねぇけど、コレが終わればパートナーは名目上解消だ。大体のやつらは終わってもつるんでいるけどな。というわけで本格的に始まんのは明日からだ。明日は七時に六階集合だ。今日は寝ろ」
そう云って鞍臣さんは舞台の袖に消えていった。僕はそこで我に返り、後ろにいる英雄に話しかけようと振り返った。
「ヒデ――」
しかし英雄は――気に留める素振りもなく部屋を出ていてしまった
「感じ悪いでしょ?」
美吹が腰に手を当てて不機嫌そうな顔を浮かべていた。僕は頷く。
「うん、でも僕が会いたかったヒデはやっぱり、彼だった」
「そうなんだ……でも忘れられているみたいね」
「どうしてなんだろう……約束までしたのに」
僕はがっくりと項垂れた。すると
「もしかしたらお姉ちゃんが知っているかも……」
と声。僕らが振り返るとそこに立っていたのは姫路花火だった。
「お姉ちゃん? もしかして生徒会長の?」
先ほどの彼女の発言に対し美吹はそう返す。花火は頷いた。僕は内心ぎょっとした。花火のお姉ちゃん……生徒会長なんだ。
「すごいね、おじいちゃんは学園長でお姉さんは生徒会長かー」
「うん……だから私はその七光りでってのもあるかもね」
彼女は少し悲しげに俯いた。
「そんなことないでしょ、どんな形であれ君は魔道具を手に入れたんだ、それは誇りに思っていいよ」
僕は何気なく言った。しかし花火はと云うと、顔を真っ赤にして僕を見つめていた。
「あ、ありがとう……」
「っ!」
僕は息を呑んだ。正直ドキッとした。可愛い。可愛いぞ……。しかし僕は平静を装って云う。声が裏返っているのがわかるが気にしない。
「僕も入手経緯も少し変わってるから、自分への言い聞かせでもあるんだ」
「そうなんだ……。ヒロって見た目は怖いけど……すっごく優しい人なんだね!」
目をキラキラさせてそう云う花火。
――あざといなぁ
◆
美吹の案内で僕、そして花火は生徒会室までやってきていた。生徒会室は僕ら生徒達の部屋がある五十階。部屋が並んでいる通路の一番奥に構えていた。
「生徒会室」と豪快で達筆な文字で書かれてた紙がドアにセロテープで貼られている。その扉を美吹がノックして扉を開ける。そして飛び込んできた情景は――生徒会室は僕のイメージしていた生徒会室とは大きく異なった。生徒会室というくらいだから、すごく綺麗で整った部屋だと思っていたが……。実際それを表現するのにもっともふさわしい言葉は「魔窟」だった。天井に届くまで積み上げられたり、散らばったりしている資料や本の所為で床が見えない。
「ここが生徒会室……」
僕は思わず呆れ、口をポカンと開けた。美吹は申し訳なさそうに手を合わせる。
「ごめんね、これがウチの生徒会室なんだ……」
「そ、そうなんだ」
僕が乾いた笑いを漏らした瞬間だった。
「その声は美吹だな」
書類の山から凛とした女性の声がした。花火が反応する。
「あ、お姉ちゃん!」
「花火か、そういえば今日は入学だったな。ということはもう一人の男の子も新入生だな」
そして書類の山をかき分けて気品とオーラに溢れた女の人が現れた。
「ようこそ、私は生徒会長であり学園長の孫、姫路有花だ」
「……天川ヒロです」
「ヒロだね。よろしく。まあゆっくりしていってくれ」
――ゆっくりですか……。僕は足の踏み場もない生徒会質を見てため息をついた。
「会長、くつろいでもらうにはすこし汚いんじゃないですかねー」
書類の奥から笑いをこめた男子の声。しかし会長は
「利早、そんなに言うならお前がやれ」
と切り捨てた。彼は悲鳴を上げる。
「えっ? 理不尽」
「いいから」
「はいっ!」
しばらくして、僕ら四人が座れる程度には書類が片付いた、というか無理やり壁に寄せられた。さらに高く詰まれ押し込まれた資料や本は今にも倒れそうにグラグラしている。有花はそんなこと全く気にする風もなく満足げだった。
「よし、それでなんのようだ」
「実は僕、天川英雄と友達だったんです。ここに来たのも彼に会うためなんですけど……覚えてないみたいで、もしかしたらなにかあったのかなーって」
「ヒデか、じゃあ君は彼が中三のときのことを知らないのだな?」
僕がうなずくと会長は紅茶を運んできた少女に手を振った。
「紫苑ちゃーん、彼に解説よろしく」
「うん。じゃあ紅茶でも飲みながら聞いてね」
紫苑と呼ばれた彼女は頷いて僕らにそれぞれ紅茶の入ったティーカップを手渡す。
「ありがとうございます」
僕はお礼を云ってから紅茶をすすった。そして思わず噴戻しそうになった。――変な味がした。慌てて口をきつく結び、無理やりに胃に流し込んだ。まだ下のあたりに残っている不味さを感じながら僕は有花を見る。彼女はまるでお姫様のように優雅な手つきでティーカップを持ち、口へ運んだ。
すごい、優雅でカッコイイなぁ。と僕が思った瞬間だった。有花は紅茶を噴出した。
「早紀ちゃん! また梅干味淹れたでしょ!」
「ば、ばれた?」
資料の山から声がする。有花は怒りに声を震わせる。
「バレるわ! バレないとでも思っていたわけ? ねえ?」
「ご、ごめんなさーい!」
僕は自分に拭きかかった紅茶をぬぐいながら紫苑に聞く。
「えっと、それで紫苑。そのヒデの話って?」
「あ、そうだね。ごめんごめん」
紫苑は微笑んでそれからこう云った。
「ヒデは……記憶を失ったんだ。記憶喪失ってヤツかな」
「そ、そんな!」
僕は狼狽し声を張り上げた。声が震えているのが判る。記憶喪失だって? なんで、どうして……色々な考えが頭の中をめぐる。そんな僕を見て、紫苑は噴出した。
「まあ冗談なんだけれどね」
「へ?」
僕は間抜けな声をあげた。
「だから、冗談。ヒデは記憶残っているよ」
僕は悪戯そうに微笑む紫苑を見つめ、それから情けない声を出しながらヘナヘナと座り込んでしまった。そんな僕を可笑しそうに見下ろし会長が云った。
「紫苑ちゃんはたまにそういう嘘をしれっと云うからね」
なんて人だ。と思ったが僕の中には新たな疑問が浮かんできたのでそれを二人に投げかける。
「じゃあなんでヒデはあんな風になっちゃったんですか」
「ああ、それはね……お前も知っての通りこの学校は最初二人組みでやるでしょ? 君がヒデと組まされたようにアイツが入ってきたときも組まされた人がいた。でもヒデは――無理をした。そしてその人に怪我をさせてしまった。それに責任を感じたヒデは一人で突っ走るようになって。結局無茶に着いて来られなくなった新しいパートナーまで怪我させてお前はなんと五代目のパートナーだよ。今では学校内でも煙たがられている存在さ」
僕はうろたえることなく、紫苑の顔をしっかり見た。
「本当のことって事でいいんですよね?」
「うん、これは真実だよ」
紫苑は真面目な顔で頷いた。
◆
生徒会室を後にした僕は美吹、花火と別れ自室に戻った。すると佐吉が声をかける。
「ヒロお帰り。生徒会室行ったんだって? ヒデについて何か判ったのか?」
ぼくは、うんと頷いてそれから佐吉に云った。
「生徒会が変な人の集まりってコトが」
「え?」
「冗談だよ」
僕はクスっと笑った、それから云う。
「アイツ壁に当たってるみたい」
「そうか」
「鞍臣先生が僕を待ってるって云ってたのってさ、こういうことなんじゃないかな」
「どういうことだ」
佐吉の問いに僕は微笑んで、それから答える。
「アイツを助けられるのは僕だけだからね」
◆
翌日僕らは鞍臣先生の指示通り僕はレア、佐吉と六階へと向かっていた。
「にしてもよぉ六階集合ってアバすぎね? どこの教室とか云われてないよな」
佐吉の言葉には僕もうなずいた。が、エレベーターに乗り込み六階にたどり着くとその問題は解決した。
エレベーターの扉が開いてすぐ、目の前に出現したのは巨大な扉だった。そして六階の廊下にあるのはそれだけだった。
「なるほどね、部屋が一つしかないんだ」
僕は激しくうなずいた。やがてほかの部屋の面々も集まったころ鞍臣先生も美吹を引き連れて出現した。
「おうお前ら」
「おはようございます!」
僕は真っ先に大声で挨拶をする。ほかの皆も大声ではないもののはきはきと挨拶をした。
「元気だな。さて今日はいよいよお前らがミッションで使う大事な部屋を紹介する。ミッション以外にもいろいろ使うことになると思うからちゃんと聞けよ」
美吹がドアを押し開けて鞍臣先生は中に入る。僕たちもそれに続く。二手に分かれている廊下の右側を鞍臣先生はスタスタと行く。それに従って行くとやがて小さな(といっても入り口が大きすぎてそう見えるだけだけど)扉に突き当たった。
先生が近づくと扉は音もなく開き、そして……。
僕らの目の前に真っ白な空間が現れた。見渡す限りの白。床も壁も天井も真っ白のとても広い部屋。奥の方は見えないので相当の広さだろう。
「真っ白すぎて目がチカチカするー」
和歌子が実直に述べた。
「で、ここは何の部屋なんじゃ?」
シヴァの問いに鞍臣先生はモズクのように黒くてぐにゃぐにゃした髪をかき上げた。
「ヴァーチャルシティルームだ」
「ぶぁーちゃ、なんだって?」
「ヴァーチャルシティルーム。仮想空間の街の部屋ってことでしょ」
首を傾げた佐吉に小ばかにするような顔特徴で射鷹が云った。
「射鷹の云う通り。この部屋は仮想空間の街を映しだすための部屋だ」
先生が云った次の刹那僕らは高層ビル立ち並ぶ街のど真ん中にたっていた。
「うわあああっ?」
神酒を含め僕らはぎょっとして飛び上がってしまった。それから周囲を見渡す。どこから見ても街だ。疑いようのない都心だ。道を行きかう人々や車こそないがそこに町が出現した。
「これが……仮想空間なの?」
花火はまるで新しい家に来た小動物のような表情をしていた。だがそれも無理はない。僕だって大して変わらない表情をしていただろう。
目の前に広がる町はどう見ても現実のものであった。映像などとは信じがたい。 「先生、本当に映像なのか? これは」
札一が襟を引っ張り上げていつもより深く口元を隠しながらそう問いかけたので先生はうなずく。
「ああ、映像だ」
「だが……これは」
札一はしゃがみ込んで地面にふれ苦い表情をする。
「お前たちも触ってみろ。地面を」
「なんだよ突然命令口調でさ」
そう云いながらも神酒はしゃがみ同じように地面に触って目を丸くした。
「これ! コンクリートじゃん」
「嘘でショ? さっきまで床はフローリングだったヨネ。百歩譲ってもリアルな映像は映せても感触までは」
「出来るんじゃないかな」
叫んだレアに答えたのは意外な人物。先ほどまでずっと黙っていた幸の薄そうな少年、刀田ムゲンだった。
「あんたしゃべれたのね」
和歌子の嫌味を無視してムゲンは生気のない目のまま早口で続ける。
「ここに移されているのは映像だけじゃない。僕らの五感にリアルタイムで訴える何かが出ているんじゃないかな。最先端の技術を持つHTIVSなら可能かもしれない。ですよね鞍臣先生」
「ああ。まあ俺も専門的なことは判らないのだがな。とにかくここでは限りなく本物に近い仮想の街で戦うことが出来る」
先生がそう云った瞬間、僕らの目の前にナイフを持った男が出現、同時にこちらに飛び掛ってくる。それを見た鞍臣先生の体が揺れ、そしてナイフ男の懐に突進し腹に強烈な拳を叩き込んだ。ゴキャリと鈍い音がして男の体がふらつく。が、男は足で体を支え、先生の顔面めがけてナイフを突き出す。先生は素早く一歩引いてナイフを持った男の手首を掴み地面に叩きつける。宙を舞ったナイフを掴み、そして男の首に突き立てる。男はカッと目を見開いて。そのまま地面に崩れ落ちた。周辺の草が赤く染まる。突然の光景に僕らは思わず息を呑む。
そんな僕らを他所に鞍臣先生が指を鳴し地面に伏したナイフ男は空中に霧散した。街も消え、真っ白な何もない部屋に戻る。先生はどんなもんだとでも云う顔でこちらを見て云う。
「機能も少し触れたが、この部屋には歴代のありとあらゆる犯罪者のデータが入っている。お前らはそれと戦ってもらう」
「なるほどのう、より実践に近い形で練習できるということですな」
「でも先生。犯罪者のデータなんかで良いんですカ? 魔獣のデータは出せないのですカ」
レアの問いに僕も大きく頷いた。確かにヒーローは魔獣のほかに犯罪者とも戦う。だが僕らはここに魔獣と戦う力を手に入れに来ているのだ。そんなことを思った僕らに先生は云った。
「魔獣のデータも出せる、だがそんなことをしようものならお前ら全員、仲良くあの世へ修学旅行だな」
冗談めかした云い方だったが僕らは黙りこくった。先生は冗談が下手糞だがそれでも伝わった。魔獣とは僕らが思っている以上に恐ろしいものなのだ、と。
「まあ今の我々は魔道具も、のうなっておるし、犯罪者が良い練習台になりそうじゃな。のうムゲン」
シヴァが豪快に笑ってムゲンの肩を抱く。ムゲンは死んだ目で頷いた。
「シヴァ、ムゲン嫌がってるよー。どっちも別の方向でコミュ障だね」
射鷹がケタケタと笑いながら茶化した。そんな射鷹に先生は云う。
「でだ、射鷹。お前と神酒のペアに早速ミッションをこれでやってもらうと思う」
「え?」
「聞こえなかったか? 何度も言わせるな、お前と神酒に……」
「いえ、聞こえましたよ? ただちょっと理解しかねるというか、だってなにもなしにいきなりなんて危ないですよ? 怪我でもしたら……」
「それなら問題はない。大して強くない犯罪者と戦ってもらう。それに危なくなったらリタイアもある」
射鷹はなおも何かを云おうとする、がそんな彼の肩に神酒が肩を置く。
「良いんじゃない? 最初のミッションってことはこれから同期の皆は私と射鷹の戦いっぷりを参考にするんでしょ。それって天才の射鷹にしか出来ないと思うなー」
それを聞いた射鷹の顔が一瞬輝いて、それからニヤっと笑う。
「なーるーほどねー? 神酒がそこまで云うならやってあげないこともないなー」
上ずった射鷹の声を聞いて佐吉は鼻で笑う。
「やっぱガキだな」
「というか克己ミカは木島射次郎の扱いを会得するのが早くないか?」
「そうだね……そして札一は皆の名前を会得して」
花火がため息をついた。
◆
鞍臣先生の指示で僕らは先ほどの入ってすぐの分岐した廊下の左側へ案内された。同じように突き当たりに自動ドアがあり、中に入ると薄暗い部屋が待っていた。壇上に椅子が並び奥には巨大なスクリーンがかかっている。
「映画館みたいだね」
花火のもっともな感想。
「つまりあの二人のミッションを俺たちはこちらで観覧できるというわけか。ほかにも客もいるようだしな」
札一の云う通り同期だけでなく数名の生徒が座っていて、その中には先生と見受けられる金髪の女性までもがいた。彼女は僕らに気がつくとテンション高く声を上げて近づいてきた。
「おおっ、新入生だねっ? 仲間が戦うのを見るんだよね。ここは普段から特訓としても使われているし観覧も自由なんだよ。それにしてもいつ見ても新入生ってのはワクワクするよね、新しい環境に溶け込めるというかのドキドキ、初々しい表情っ、嗚呼、堪らなく美しいっ、芸術的だっ!」
異常なテンションの彼女に僕らは呆気にとられる。常時ガハガハ笑っているシヴァでさえも目を丸くして黙っている。そんな僕らをみて彼女は冷静な声で云った。
「教師の村羽照菜です……」
そしてそのまま席に座ってそれっきりなにも云わなかった。佐吉が戸惑いながらも問いかける。
「えっと、照菜先生?」
「黙って!」
先生は早口でまくし立てる。
「今からミッションが始まるんだよ。集中させてくれ」
そういって真剣な眼でスクリーンに視線を送って何も云わない。僕らはお互いに顔を見合わせて、それから席に座ってスクリーン越しに射鷹と神酒に目をやった。二人はすでに高層ビル街の中に立っている。二人はそれぞれスナイパーライフルと槍を持っている。
「今回のミッションは最も難易度が低い奴だね。犯罪者もただの犯罪者だし交通人のホログラムもない。その代り武器は魔道具じゃなくて支給品で、なんの特殊能力もない普通の武器だ」
照菜先生が僕らにそう説明してくれた。
「なるほどな、仮想の一般人も出せるのか」
「そうだろ札一。俺らが将来的に守っていくのは一般人なんだから」
佐吉がそう云ったときブザーが鳴り響く。僕らはスクリーンに視線を注いだ。神酒と射鷹の前に屈強な男と老婆が出現した。そして男が老婆に突進したと思うと手に持っていたカバンを奪い取った。
「おばあさんを狙った引ったくりだね……」
花火がポツリと云う。シヴァもうむと頷く。
「実際の犯罪者のデータをつかってその事件を再現。それを倒すことがミッションということじゃな」
「んなこともう皆わかってるわよ。それよりひったくりとはいえ実在の犯罪者の再現なんでしょ? 所詮ひったくり犯とはいえ、あの二人大丈夫なの?」
和歌子が心配げに云う。僕らは再びスクリーンに視線を戻す。神酒が闘争中の男の前に立ちはだかる。スピーカーを通して男の声がする。
「なんだてめえ?」
「わたし達はヒーローだよ。引ったくり男。貴方を捕まえるね」
神酒の声もスピーカーから聞こえる。男は舌打ちをして、それから神酒に向って突進する。その手にはナイフが握られている。
「危ないぞ!」
札一が叫ぶ。彼の云う通りさっきまでの再現率の高さを考えればナイフに刺されたら実際に怪我をすることは間違いない。僕はナイフに突き刺される神酒を想像し目をつぶった。しかし――いつまで経っても悲鳴は上がらない。僕がおそるおそる目を開けると射鷹が男の足元に飛び込んで足払いしている光景が飛び込んで来た。
「手元に集中しすぎ、足元がお留守だよおじさんっ」
ニヤっと笑った射鷹。僕は歓声を上げた。
「うまい、神酒が注意を引き付けて射鷹の小ささを活かして動きを封じたぞ」
しかしそれを見た引ったくりは怒鳴り声を上げ、ナイフを持っていた方の手とは別の手で射鷹をぶん殴った。
「ぎゃあ!」
射鷹は殴られた方向にそのまま数メートル飛んでいきコンクリートで数回跳ねた後、ドサリと床に崩れ落ちてしまった。
「射鷹ガ!」
レアが悲鳴を上げる。一方神酒はたじろがずに男の背後に躍り出て槍を突き出す。
男はすばやく振りかえり足を上げて槍をはじいた。槍は神酒の手をすっぽぬけて明後日の方向に飛んで行ってしまった。
さらに反動で空中に投げだされた神酒にナイフで切りかかる。神酒は着地と同時に後方に飛んで回避するが鼻っ面をナイフが切りつけた。
「おいおい、えげつねえぞ。ただのひったくりとはいえ普通にアイツ武術の心得がある」
佐吉が真剣なまなざしで云う。僕も頷く。
「ああ、このままじゃ……」
一方神酒もひったくりに背を向けると一目散に走り出した。
「逃がすかよっ、殺してやる!」
男は怒声を上げて神酒を追う。そこから三分ほどビルとビルの合間をぬった二人の追いかけっこが続いた。神酒の顔には明らかな疲労が見える。一方でひったくりは表情とナイフをギラつかせて余裕の笑みだ。
「やばいんじゃないかなこれ」
リカも表情を曇らせた。 しかし意外な人物が口を開いた。
「いや、違うかもしれない」
そう云ったのはムゲンだった。
「あんたさっきから突然しゃべるね」
和歌子は率直に云う。一方レアは怪訝な顔で問いかける。
「どういうこト?」
レアの問いにムゲンはガラスの向こうを指差して云う。その口調はすこし早口で独り言のようなしゃべり方で若干聞き取りづらかったが彼はこう云っていた。
「おそらくだけど犯人は克己さんの挑発に乗ってしまった時点で負けが決まったと思う。おとなしく逃げればいいのに」
「わかりづれぇよ! もっとストレートに云えよ!」
佐吉が突っ込む。しかし彼は
「もう少しで判ると思うよ。彼女は闇雲に逃げているんじゃない。最初からこれを狙っていたんだ」
僕らが首を傾げた刹那。神酒はビル街を抜けて開けた通路に抜けた。それを追ってひったくりも通路に飛び出た、その時だった。神酒が叫ぶ。
「いまだ!」
ターン
銃声が響いた。そして引ったくりの動きが止まり、その場に崩れ落ちた。スクリーンの前の僕らは唖然だった。
「なにが起きたんだ?」
「忘れたの? 木島君がいることを」
「射鷹? あいつは早々にやられただろう」
「藤代君ってなにも見てないんだね。克巳さんがあいつと戦っている間に彼は起き上がってそばにあるビルに入って行ったんだ」
早口で話すムゲンの言葉を聞いてようやく僕らも合点がいってきた。
「つまりあのクソガキはやられたふりをしてた。それで神酒が注意を引き付けている間にビルを上って犯人を撃ちぬいたっていうの?」
和歌子の言葉には照菜先生もうなずいた。
「そうみたいだね。神酒は逃げるふりをして射鷹が犯人を撃ちやすいように誘導してたってことだね。やるじゃん。先生濡れてきた……」
「何云ってんだこの先生。まとりあえずあの二人はこれでミッションクリアってわけか。やるなぁ」
佐吉の言葉に僕はうなずくしかなかった。こんな感じのことを僕は英雄とやらなきゃいけないんだ。今の英雄と。
◆
「いやーすごかったのう! 二人の作戦は! それに射鷹のスナイプ技術も!」
食堂、夕食を皆で食べている中、シヴァが射鷹を絶賛していた。射鷹は味噌汁をすすりながら云う。
「まあ当然だよ。念のため開いた場所に誘導してもらったけど正直ビル街でもあたったんじゃないかな。まあでも、なによりこの作戦考えたのは神酒だよ」
「へっ、なかなか策士だな、攻撃を食らった振りをするなんて考えるのよ。それに射鷹が銃を持って屋上まで駆け上がるまで時間を稼いだのもな」
肉丼を既に平らげた佐吉もうんうんとそう云う。
「まあ挑発に乗るかは賭けだったから云い作戦とは言えないけどね。犯罪者なんだし逃げた方が正解でしょ? 本来。ただミッション開始前にちょっとした資料渡されて、激高しやすくプライドが高いってあったらか思いついたんだ」
「なるほどな。まあ悠長なことは云っていられない。俺達も明日からは順番であれをこなせばならんのだから」
札一が漬物をバリボリと食べながらした発言にみんな縮まりこむ。
「た、確かにそうだよね。しかもこんな頭の悪そうな女となんて絶対無理よ」
和歌子が端で向かいに座っているリカを指差す。リカもまた
「こっちだってお断りですよ」
と言い返す。二人の間に険悪な空気が流れるのをみた花火が慌てて云う。
「えっと、そういえばさ、さっきのムゲンすごかったね」
「ああ、そうだったね。アイツこの場にいないけど」
佐吉が空席を指差して云う。射鷹は馬鹿にしたような口調で
「彼人付き合い苦手そうだもんねー。こういう席にはいられないでしょ? で彼が如何したの?」
と聞いた。そこで僕は先ほどムゲンが二人の作戦を読んでいた話を一通り話した。それを聞いた神酒は心底感心したようで。
「へー、すごいね彼」
といっていた。一方射鷹はあいからず見下した口調で
「まあ偶然でしょ」
と述べた。その後話題は別のものに移り、皆その話題に没頭してムゲンの話などなかったようになり僕も刀田ムゲンのことなどすっかり忘れていたのだった。
よって僕らは知る余地もなかった。このメンバーの、いやこの学校の関係者全員の人生において刀田ムゲンというひょろっとした無口の少年が忘れられない存在になるという未来を。
◆
部屋に戻った僕は、さっさと眠ってしまったレアを横目に円机をはさんで佐吉とばば抜きで勝負をしながら会話をしていた。最も二人でやるババ抜きほど実りのないものはないのだけれど。
「ねえ佐吉」
「んー?」
「明日最初の休みじゃん」
「そうだな、早速過ぎるけど」
「僕、ヒデをつけてみようと思うんだ」
佐吉は目を細めて僕の手札から一枚取る。そして声を発す。
「まあそうすれば何か判るかもしれねーな。あ、悪いけど俺は同行できねーよ。野暮用があるからな。美吹にでも着いてってもらえ」
「良いよ、ヒデは僕の友達でパートナーだ。アイツの問題は僕一人で解決するよ」
そういって僕が佐吉からとったカードは腹立たしい顔をしたピエロの描かれたカード、つまりジョーカーであった。僕は動じず冷静な顔を保つがこれもまた二人きりでやるババ抜きでは無駄な行為であった。
◆
翌日、僕は朝早く起きて学校の一階、ホールにある待合室の椅子に座ってヒデが現れるのを待っていた。僕は昨日の夜、美吹の部屋を訪れ交わした話を思い出す。
「ヒデも訓令生だから明日は休みよ。アイツは暇だから休日は校外に出てるわ」
「ありがとう。でも美吹ヒデの情報にいやに詳しいねぇ」
「え? そりゃそうでしょ! ほら、アイツ問題児だから! 鞍臣先生の最高の秘書になりたい私としてはそういう人のスケジュールは把握してるの! じゃあ余計なことは良いから部屋に戻ってね!」
そういって僕は追い返されてしまった。まあ美吹とヒデの関係に関してはあえて言及しなかったが。そんな風にいろんなことを考えて待つこと二時間。英雄が姿を現した。そして座っている僕に気づくそぶりも見せずにホールをつきぬけ学校外に出て行く。僕はニヤリと笑って、それから立ち上がる。
――追跡開始だ。
◆
英雄を追跡する間にこの町、シブヤことネオシブヤ町の紹介をしたいと思う。シブヤは昔は流行の中心とも呼ばれる街だったが魔獣の出現によりそのような「華やかさ」は全て失われた。しかしそれでも魔獣によって壊滅する街が多数ある中この町は生き残った。そして魔獣の出現から十年。ついに魔獣のデータから町ひとつを覆える程度の魔獣を寄せ付けないバリアが作られた。そのバリアが最初に展開された街がこの町シブヤである。そして各地に散らばっていたヒーローたちを学園町でもある姫路氏が集め学校を設立。魔獣対策の本部を据え、シブヤは数年前の流行の最先端の町から魔獣対策の中心、ネオシブヤになった。最も世間では魔獣があふれているのである意味流行の最先端かも知れないが。今では魔獣対策の町として栄え、バリアの展開されている街でも一番人口の多い町になっている。またネオシブヤが渋谷であったころよりも現在シブヤとされる場所はずっと大きい。
そんな町で僕は英雄を追跡する。最初は英雄が目的もなく歩いているように思えていたが町はずれの路地裏に入った瞬間僕はピンと来た。不良のたまり場として有名だって美吹が云っていたゲームセンターだ。最もこの先にあるのはそれくらいしかないのだが。
「ヒデのやつそんなところで遊んでいるのか?」
僕の気持ちが重くなっていくのが自分でも判った。もし英雄が荒れて不良になり、ヒーローなど当に捨てていたらどうしよう、と。そんな考えが僕の脳裏をよぎった。そしてゲームセンター前までたどり着くと英雄は立ち止まる。僕は慌てて踏みとどまって見つからぬよう路地に隠れる。英雄を見ると携帯電話を開いて時間を確認している。誰かを待っている風ようだけれど。そしてそのまま五分。ゲームセンターの中から僕らと同い年くらいの少年が二人出てきて英雄に声をかける。
「よお、ヒデ」
「うっすヒデ」
「遅かったなぁ」
英雄は答える。僕はその姿をみて硬直した。彼らの頭はピンクと青で顔にはアクセサリーがたくさんついている、佐吉を悪くしたような見た目。それがヒデに話しかけている。状況から察するに英雄の待ち人はこの二人のようだ。僕は不安を膨れ上がらせながらさらに状況を伺う。脳内では昨日消灯してから佐吉が僕に呼びかけた言葉が響く。
――なあヒロ。もしヒデがお前に救えないような状態になってたとしたら、お前は如何するんだ?
◆
英雄と二人は会話しながら移動を始める。僕は数十歩後をつけながら会話を聞こえる限り拾いピンク頭のほうがダイキ、青頭のほうがハルトという名前だと知った。ヒデ達三人は町中をブラブラして回っている。今度こそ特に目的もなく、同じ場所を何度も通りながら彼らは町を練り歩いた。そして昼になり彼らは駅のロータリー付近にあるマックに姿を消した。僕はその向かいのカフェり入りサンドイッチと紅茶の昼食を取りながら三人が出てくるのを待っていた、つもりだったのだが……。
次に気がついたときにはカフェに設置された時計の針は一時半をさしていた。僕は一瞬混乱したがすぐに察する。眠ってしまったんだ、と。今日は云い天気だしお腹も膨れてつい、などと云い訳しながらも僕はカフェを飛び出てマックに飛び込む。既に彼らの姿はなかったが僕は冷静にそこにいた店員に聞く。
「ここに銀髪とピンク髪と青髪の三人組がいませんでしたか?」
「ええ、いましたよ」
「どこに行ったか判りますか?」
僕の問いに店員は困ったような顔をする。判らない、か。僕が悪態をついたときだった。近くに座ってハンバーガーを食べていた年配の男性が僕に声をかける。
「あの派手な集団なら町外れの倉庫に行くって云っていたな」
僕はそれを聞いた瞬間。ありがとうございますと叫んでマックを飛び出していった。
◆
町外れの倉庫とは駅の向こう側にある使われていない巨大倉庫のことだ。駅の向こう側に行くとにぎやかな町のイメージとはかけ離れた閑静でひと気のない路地が姿を見せる。そんな路地の先にある捨てられた倉庫はゲーセンに次ぐ不良のたまり場として有名らしい。嫌な予感ばかり募る中、僕が倉庫でたどり着いた先で見たものは、複数の男達と殴りあうヒデとその友達二人の姿であった。
僕は倉庫の開かれたシャッターの陰に隠れ入り口から中の様子を伺う。中にいるのは英雄、ダイキ、ハルト。そして彼らに襲い掛かっている「見るからに」不良な集団だった。ヒデたちが三人なのに対して相手は十数人いるのが確認できる。然し英雄たちはそれを圧倒していた。英雄は一瞬で四人を蹴り倒した。ハルトは相手の攻撃をひらりと避けながらブローを叩き込む。ダイチはバットで殴りかかられたのにもかかわらず動じずに、紙一重でバットを掴んでそれをへし折った。僕がたどり着いてから三分後――倉庫内には気絶した不良たちが転がり、英雄たち三人が堂々と立っていた。やっぱり英雄は強い、と思うと同時に僕は彼が不良に堕ちてしまったっと確信した。
紫苑の云っていたことが原因であろうか、など僕が不安を増大させていたときだった。
ハルトが突然声を発した。
「もう良いぞ」
すると倉庫の奥にあったドラム缶の影から女性が一人震えながら顔を出した。
「えっと、終わったんですか?」
「ああ、ったくクソ野郎だよ。女を集団で襲おうなんてよ。さ、どっかに逃げて」
英雄が床に伸びている不良を見下し、それから彼女に微笑みかけた。
「あ、ありがとうございます!」
彼女はペコリと頭を下げてからパタパタと去っていった。英雄はそれを見送ってふうっとため息をついた後ハルトとダイチに云った。
「悪いな、俺のまたせいでケンカに巻き込んじまってよ」
するとハルトはクックと笑う。
「いいんだよ、俺もダイチもケンカは好きな性質だったし」
「ああ、それになによりヒデ。お前には借りがある。お前が魔道具を使うのを禁止されていてそれでも人助けをしたいってのなら俺はどこまでも手伝うぜ」
英雄はそれを聞いて照れくさそうに笑った。
「大した事なんかしてねーよ」
「いや、お前はすげーことをした。見ず知らずの俺らが他校のやつらにボコられて死にそうなところを助けてくれた。俺はそのときからお前のファンになったんだよ」
「俺もダイチに同じさ、俺のヒーローはお前だけだよ。ヒデ」
ハルトはニヤっと笑う。ヒデは彼らに背を向けてわざとらしく大声で叫んだ。
「あー、あー判った判った。それどういたしまして。でもよ、最近変な武器を使うやつらもいるし危険になったら逃げろよ?」
「へへっ、バカ野郎。やられるときは一緒だっつーの」
そんな会話をするヒデと二人を見ながら僕は思わず微笑み、それから倉庫を後にした。
◆
僕が部屋に戻ると部屋にいた佐吉がゲーム機から顔をあげる。
「おっ、おかえり」
「ただいま」
「ヒロ、どうだったヒデの追跡は」
僕はそれを聞いて、少し考えてから作れる限り最高の笑顔でこう答えた。
「大丈夫、アイツは何も変わってなかったよ。強くて不器用で、それでまっすぐなアイツのままだったよ」
僕は今日のヒデの姿をみて心底安心した。ヒデがあんな態度を取る理由はわからなかったけれど、ヒデはまだヒーローをやっていた、人助けをしていた。それだけで充分じゃないか。
◆
路地裏、英雄たちにボコボコにされた不良達が文句を云いながら屯っていた。
「ったくよ、女を俺らがどうしようと勝手だろうがよ! あいつの女でもないし」
「うっとおしいいよな、無駄に強いし」
「なんで殴りかかってくんだよ?」
「正義感、ヒーローきどりってヤツだろ。ウザイウザイ」
――そう、ほんっとウザイよね。ああいうやつさ
不良たちの愚痴り合いに彼らの誰でもない声が混ざった。
「誰だ!」
集団の誰かが叫ぶ。声はかまわず続ける。
「まあ落ち着いて。俺らも天川英雄にはイラついていたんだ、だから一緒に倒さない?」
そういいながら姿を現した人物を見て不良たちは目を見開いた。
「てっ、てめーらは!」
現れた二人組みのもう片方がクックと笑う。
「怒るなって、いいから俺の目をみてYESかNOだけで答えろよ? 一緒にヒデをつぶさないか?」
そういって――ハルトとダイチは不良集団に微笑みかけたのであった。
第三話 完
次回予告
「ヒデは変わってなかった」
安堵するヒロだったがその英雄を予想外の出来事が襲う。親友の裏切り。それを知ったとき天川英雄がとった行動は。
次回第四話「孤高のヒーロー」