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H_S ~High_Spec~  作者: シキタ
5/5

学院入学

更新遅れてすみません!

受験で色々と忙しいですがなんとかがんばります!!

ゾクッと3人の背に嫌な汗が滲み出た。


「ッ!!!」


「大丈夫、痛くはしないからさ」


そう言うと八雲はスゥと息を大きく吸い込むと何かを発した。


「____」


人によってはキィーンと言う風に聞こえる音に朱里は首を傾げた。攻撃ではない事に疑問を感じたからだ。


「なんだこれは?こんな事をして何になるんだ?」


「これは、ッッ!!」


「!?どうしましたシルフィ、うっ!」


八雲の不思議な声に最初に異常を表したのはシルフィ、頭を抑え少なからず汗をかいている。慌ててシルフィの元に近づいたソラ=アルヴァージだが突然嫌悪感が押し寄せ足を止めた。


「うぅ!!頭が、痛いッ!」


「ウッ、なん、なのッ」


「ソラ!フィー!どうなっている!?この音のせいか!?」


すぐさま原因に気が付いた滝里 朱里は耳を塞ぐ。そして八雲の心を読むために自身の能力を発動させる。


「____」


心を読んだ瞬間、八雲の思考からこの音の正体が判明した。


「ッ!モスキート音かッ!!」


モスキート音。大人になると聞こえなくなるこの音は不快感を与える。18キロヘルツ前後の高周波音波は日常ではまず聞かない音。

それが聴覚中枢に混乱とダメージを与え、頭痛や吐き気を起こす。


八雲はその音を自らの口から発していたのだ。


「__…滝里さんは心を読んで防ぎましたか、でも2人は暫く動けなさそうですね。どうします?」


「……」


滝里1人だけ影響を受けなかったとはいえ色々とハイスペックな八雲を1人で相手するのは厳しい。

朱里は必死にこの場を打破する策を考えるが思い浮かばない。


「逃がしてくれても別に良いんでッガッ!?」


突然八雲の体が動かなくなった。その八雲の背後からゆっくりとした足取りで近づいている人影が。


「まぁたく、捉えるのにいつまで掛かってはるのですか?遅すぎます」


「りっ!理事長!?」


聖マリエール学院理事長、神代 桔梗 (かみしろ ききょう)。

紫の瞳に綺麗な銀髪をかんざしで団子にし、着物姿をした女子大生にも見える若く美しい女性。京都弁を話し笑顔で温厚な印象を受けると同時にどこか年齢を感じさせる様な威厳のあるオーラをしている。言うなれば和風美人だ。

神代 桔梗は動けない八雲に静かに近づくと軽い自己紹介を始めた。


「堪忍なぁ八雲はん、ウチはこの学院の理事長してますぅ、神代 桔梗言います。よろしゅうねぇ」


「…古金 八雲です、よろしくお願いします」


拘束されても一応挨拶はする律儀な男である。


「動けぇへんところ悪いんやけどこれからウチと話ししてくれまへんか?」


「…それは命令ですか?」


失礼だとは思うが相手に命令されるのをもっとも嫌う八雲は聞かざる得なかった。だがその問いに対して桔梗は苦笑しながら答えた。


「ふふふっ、いえこれはレディーとのお茶会の誘いと考えてくれてかまへんよぉ、勿論優しい八雲はんなら断ったりせぇへんもん」


それに八雲は苦い顔を浮かべると渋々という風に承諾した。


「わかりましたよ、取り敢えずこの拘束解いて下さい。えっと…理事長さん?」


「桔梗さんでも神代先生ぇでも呼び方なんて何でもええよ、ほいっと」


間の抜けた声と共に今まで八雲を拘束していたモノが一瞬で解けた。一般人以上のスペックを誇る八雲をああも簡単に拘束した神代 桔梗の能力。他とは明らかに格が違うその能力を保持している彼女には用心しなければと八雲は再確認した。


自由になった体に異常が無いか点検し終わるとそれを静かに見ていた神代 桔梗はまだ具合が悪そうなソラ=アルヴァージとシルフィ=ドーラの介抱をしていた朱里に声を掛けた。


「朱里ちゃん早速ウチ八雲クンと理事長室戻ってるわぁ、その2人の面倒よろしゅうねぇ〜」


「はぁ、了解しました理事長。くれぐれも小金に尋問とか加えないでくださいね。それと朱里ちゃんって言うのやめて下さい!」


「尋問?」


滝里 朱里のため息と共に吐かれた尋問と言う物騒な言葉に八雲は着いて行って本当に大丈夫なのかと少しだけ不安になった。

対して注意された本人はさも面白そうに笑った。


「ふふっ、ウチはそんな事せぇへんよぉ。した事も無いしこれからもせぇへんよぉ、それに」


「?」


変な所で言葉を切った桔梗は意地悪そうな笑みを浮かべた。


「朱里ちゃんの気に入った子ぉにそないな事する筈ないよぉ?」


「〜〜ッ!!そんなんじゃないですッ!!」


桔梗の言葉に顔を真っ赤にさせる。

それを見て満足したのか桔梗は八雲の直ぐ側まで来ると手を八雲の肩に置いた。

先ほどの事もあり少し警戒を示す八雲。


「何もせぇへんって八雲はん、これからウチの部屋に移動するだけや」


「移動?移動する超能力となるとテレポートとか転移とかですか?」


八雲は自身の知っている超能力を思い浮かべる。


「物知りやねぇ八雲はんは、せやけどウチのは少し違います」


「?」


桔梗は八雲の肩に置いてない反対の指を鳴らした。パチンと乾いた音が辺りに響くと八雲はすでに何処の部屋にいた。和風の部屋だが一部は靴でも居られるような床があるが全体的に土足ではダメな所でばかりだ。まさに和と言う雰囲気だ。


「ッ!」


「到着したでぇ、色々と言いたいことがあると思うけどぉ、まぁテキトーに座りぃな」


畳のある場所に桔梗は静かに行き座ると改まって言った。


「ほなぁ、改めてようこそ。聖マリエール学院へ」


早速やけどと桔梗は自身の和服の胸元に手を突っ込み又出すとそこには数枚の紙束とシャーペンが取り出され八雲に手渡された。

先ほどのことと言い桔梗の能力は何か分からないがどんなものなのか検討も付かない。


「へぇ凄いな」


「…あんま見られると恥ずかしいよぉ?」


桔梗の能力に見入り八雲は紙束などが出てきた胸元を凝視していたようだ。若干の照れで胸元を隠し顔を赤く染めた桔梗に注意された。


「っと、すみません。単にどこにそんなモノをしまうスペースがあるのかと感心しただけですよ」


「…そこに感心しただけなん?」


「?そうだが?」


何か女の部分にダメージを受けた気がする神代 桔梗だった。目の前にいる青年は色気に縁が無いのかもしれない。


「まぁええわ、じゃあ前座はこのくらいで本題に入らせて貰います。率直に聞くと八雲はんはここと良く似た世界から来なはったんですよねぇ?」


「滝里先生から聞いたんですか、多分それで合ってます。俺のいた世界から気がついたらここに移動していた」


八雲は自身の世界には超能力はあまり縁のない事、東京23区の事、自身の世界の事をより細かく話した。


「ここに来た方法が分からない以上帰る方法を見つけたいんです。ここが俺の世界と似ていても違うし仮にも俺の故郷ですからね」


「『仮にも俺の故郷』ねぇ?…」


八雲の過去を少なからず聞いていた桔梗は彼のその言葉が意味深に聞こえた。

桔梗はしばらく考える素振りを見せると言った。


「八雲はん?君は頭が良いほうかなぁ?」


「さぁ?結果に興味なかったから分からないが多分それなりにテストの時は上位にいたと思うぞ?」


母が死んでから八雲は毎回定期テストなどを受けるだけで終わってしまい、結果を見たことが無かった。そのため自身がどの位の成績なのか知らずにいた。

実際は毎回前代未聞のオール満点を叩き出し教師からある意味教師から絶賛されているのだがそれを知らない八雲は自身の出来の感じから言うのだった。


「ではさっきウチが渡した問題をやってみてくれへんか?」


「これですか?別に構わないけど」


部屋に置いてあった机を借りスラスラと先ほどの数枚の紙束を別段苦も無く解いていく。

20分ほどすると八雲はペンを置き見直しをする為に目を走らせた。


「…終わったぞ、これでいいかな?分からないけどとこもあったが独自に解釈してみたのだが…」


「分からなかったらしょうがない……ッ!!」


彼の解き終わった答案用紙を受け取り見る。そして驚いた。

彼に解かせた物は数学、物理、生物学など、さらには初歩的な超能力学を解かせたのだ。普通の、それも高校程度ならば問題ないのだが解かせたのは有名な超難関大学の問題だ。

それを満点と言うしかない答えと彼の言っていた独自で答えを導き出したと言う、超能力学の部分ではこれまでの常識を覆すような解き方をしていたのだ。


「これはまぁ…凄いわぁ、これなら…」


「あの、神代さん?」


1人の世界に旅立とうとする桔梗を無理やり戻し、話を進める。


「あっ、堪忍なぁ?ウチ考え事するとすぐ周りが見えへんようになってなぁ。所で八雲はん」


「なんです?」


「八雲はんは、あんさんは元の世界に帰りたいんやろ?その方法があるかもしれへん言うたらどないする?」


「帰る方法があるんですか?ならそれを教えてください」


帰る方法がある、そう聞いた八雲は少なからず感情が高ぶり知らずのうちに語尾を強めた。


「教えるゆうてもウチもあまりしらんしまず説明せなあかん事があるんよぉ」


「聞かせてください、後は自分の判断で動きます」


帰る方法が今の所その情報しかない以上聞かないという選択肢はない、何としても聞かなければと八雲は頑なにお願いする。その姿勢にやれやれと言うように桔梗は肩を下げ話し始める。


「せやなぁ、先ずはこの23エリアについて説明せなあかんわ」


東京都23エリア、東京都全域の超能力開発兼育成機関の総称。

世界中から超能力者が集まってくる超マンモス機関である。


それぞれのエリアに1校ずつ、計23校存在する超能力開発育成学院。

そして学院には序列が存在し、高ければ高いほど生徒数は少ないが強力無比な能力を持つ生徒が多く在校している。

23エリアの中央エリアに行くにつれそれは強くなり生徒が少ない分面積も小さくなる。いわゆる少数精鋭になっていくのだ。


ちなみにわかりやすくすると、


序列23位 セタガヤ

22位 オオタ

21位 スギナミ

20位 エドガワ

19位 カツシカ

18位 アダチ

17位 キタ

16位 イタバシ

15位 ネリマ

________________

14位 シナガワ

13位 ナカノ

12位 スミダ

11位 アラカワ

10位 トシマ

9位 コウトウ

8位 メグロ

7位 シブヤ

_______________

6位 シンジュク

5位 ミナト

4位 ブンキョウ

3位 タイトウ

2位 チヨダ

1位 チュウオウ



また、チュウオウに近づくにつれ外側とは比べものにならないほどの超常的実験をする施設が多くなる。


「つまりその中央区に行けばなんとかなるということか?」


「そうは言うたけどさっきも説明した通りここは序列23位のセタガヤ、権力が一番小さいんどす」


それに、とニヤリと笑うと桔梗は付け加えた。


「あそこは弱肉強食の世界を体現したような所、それも閉鎖的なんよぉ?、八雲はん1人で行っても辿り着く前に他の序列のエリアで門前払いされるのがオチやで」


あまりにも無責任な物言いにでは何のために話したんだと若干のイラつきを覚える八雲。

思いっきり睨みつけてみた。


「あっ、そないな怖い顔で睨まんといてぇよぉ!じょ冗談やん?」


そういえば眼鏡壊れていたんだった。八雲の素の顔で睨まれると鋭い目がより一層怖く見えるのだ。


「そんなに怖がらなくても…、それより神代さんなら俺どうすれば良いんです?自力でもダメとなると」


弱気な八雲に対し、その言葉待ってましたとばかりに目をキラキラさせる年齢不詳のみため大学生理事長。

先ほどの紙束もとい答案用紙をちらつかせて言った。


「ならウチで働かん?」


「ん?」


何か痛い人を見る目で桔梗を見る八雲。


「…うほん!、せやからウチの学院で働いたらええよぉって、それなら情報も手に入るし月に一回行われる超能力検査ん時に各エリアから来るお偉いさんとも仲良くできる機会が出来るよぉ?」


「…俺超能力とかも使えないですし、学力も普通ですよ?無理ですって」


「学力はさっきの超難関大学入試問題を軽ぅく解いたから大丈夫やし、超能力やないけど八雲はんの化け物じみた身体能力は超能力級やし」


桔梗はまた胸元から今度は黒塗りの煙管を取り出し火をつける。何か八雲が慌てた反応を示すかと横目で確認するが全くそんな事はない事に少しがっかりする。


「…それになぁ働く言うても頼んだ時だけでええんよぉ、それ以外はこの学院で生徒と一緒に授業受けてくれればええねん」


どうだ?と言わんばかりに八雲の前に身を乗り出す。

確かに行くあてもない八雲にとっては情報も超能力と言う興味深い事も教えて貰えるとなると願っても無い。

ただこんな破格の条件に対してただ仕事をしてくれれば良いなどと少し話が上手すぎる。


「(だが、釣られない事には何も始まらないか…)」


「どないする?」


逃げ場は無いぞ、とばかりに満面の笑みで問いかける聖マリエール学院理事長 神代 桔梗。

それに対抗する様に八雲はしっかりと目を見返し静かに言った。


「…その条件飲んでやりますよ」


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