表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
H_S ~High_Spec~  作者: シキタ
2/5

鬼ごっこ開始!

こんにちは、こんばんわ!

作者のシキタです。基本的に不定期な更新となってしまいますがなるべく間隔は開けないようにしたいと思ってます!

「寝ている間に神隠しにでもあったのかねぇ?」


とにかく今の状況は明らかにシルフィの言い分通り侵入者。事態の悪化を防ぐためにこの場から一刻も早く逃げ出すのが好ましい。


「…えっと滝里さん、一つお願いがあるんですが…」


「ん?どうした?眼鏡外して?」


眼鏡を外して制服の内ポケットにしまう。とにかくこの場から離脱するために嘘を並べる。それと同時に会話と同時並行で思考を加速させる。


「少し用を足したいんですけどここの学校のトイレを教えていただけませんか?(一刻も早くここから出ないとな、出口はどこだ?)」


「出口なら階段下がって右だ、早く戻ってこいよ」


「そうですか、ありがとうございま_」


そこで八雲は滝里 朱理との会話に違和感を感じた。今、八雲はトイレの事を滝里 朱理に聞いた筈、だが帰ってきた答えは思考していた出口の場所だ。

八雲の背中に冷たい汗が流れた。

そこへ笑みを隠し切れて居ない滝里 朱理が面白そうに声をかけて来た。


「どうした古金 八雲クン。さっさとこの場を離れたいんだろ?」


「ッ!お前!」


またもや思考を読んだ事に驚いた八雲は敬語を忘れて焦っていた。


「…あんた、いや滝里さんは思考が読めんのか、SFで言うところのテレパシー能力って所か」


「ああ、正確には精神感応能力。読心、感応、が主な能力だ。まぁその中でも私の場合は精神操作も可能な訳で、固有能力名なんてものもあるちなみに私は『心断』(ディアグノース)だ」


「…怖いね、笑えねぇ冗談だな」


口元をひくつかせる八雲。滝里 朱理が精神系の能力者ならば今この思考も読まれていると言うこと、ならば八雲が取るべき行動は一つ_


「思考を読まれるより早く行動させてもらおう!」


「あっ!ちょッ!待ちなさい!!フィー!」


「はい先生!!」


『えェェッ!?』『嘘ッ!飛び降りた!?』


言うや否や八雲は勢い良く教室の窓から外に身を投げ出す。3階建ての3階から一般人が落ちて無傷で済むわけが無いがそれはあくまでも一般人の話だ。

人よりもかなりハイスペックな八雲が落ちた所でブランコから飛び降りるぐらいのレベルな訳だ。

落下の衝撃を柔らかくするために落下中にあった木の枝をさながら忍者の様に着地し素早く地面に降りる。


「よっと!…結構高かったな、さてと。追ってが来ないうちにトンズラするのがベストなんだが…」


内ポケットから出した伊達眼鏡を掛け直し、周りを見渡すと学校の周りには高い柵が張り巡らされている。先ほどの滝里先生の言っていた出口へ行って見ても良いのだがある考えが浮かんだ。


「…滝里さんは精神系の能力者心が読める、あの時点で俺の考えも読めた筈、いや最初から読めていた筈だ。それなのに出口の場所を教えたのは何か罠があるって考えた方がいいか…」


と言うことは別ルートでしらみつぶしに出口を探すしかないと言うこと。正直面倒な作業に八雲は1人ため息を吐くのだった。

ちなみに滝里と八雲が自己紹介した際に滝里に対して下心の無い八雲に嬉しさと興味を持ったのはここだけの話。







その頃、滝里 朱理とシルフィ=ドーラは逃走した八雲を血眼で探していた。


「まったく、いったいあの男どこ行ったのですか?」


「私が教えた出口の場所には来なかったのを見ると罠だと気づいたな?面白い」


両者とも八雲を捕まえると言う目的は一緒だが、それぞれ別の感情を持っていた。

シルフィ=ドーラの場合、突然現れた男に髪の色を馬鹿にされ制裁を加えるため。

滝里 朱理と場合はその美しい美貌と高い自身の能力だけを見て言いよってくる男の中で唯一下心も無く接して来た八雲に興味が湧いたから。


似て非なる理由の2人。その目的の男だがどこにいるのか検討も着かない。


「このままでは逃げられてしまいます先生」


「大丈夫だ、ここはかの特殊能力者機関だぞ?逃げられる筈が無い。捕まえられるのも時間の問題だ」


「確かにここから出るためにはテレポート系の能力が必要不可欠ですからね」


そう、ここ聖マリエール学園は特殊能力者研究機関及び育成機関。セキュリティは万全で、学院内に出口と言う物は存在しないのだ。その代わり生徒はテレポート能力によって学校の出入りをしている。


「つまりそれを知らない古金は永久にここから出ることは出来ないのだ!」


「先生何処に向かって言ってるんです?」


いつの間にか逃げられない状況に追い詰められる八雲。







所変わってそんな事はこれっぽっちも知らない男、八雲は隠れながら探索をしているうちにあることに気がついた。


「この学校、いや能力者ってのは男性の方が絶対数が少ないのか?」


探索して1時間移動中見るほとんどが女性。たまに男性も見るが片手で足りる程しか見かけない。どうやら能力に目覚める者は女性が多いらしい。

確かに女性には男性よりも優れた点がいくつかあるという。

1番有名なのは出産だろう。

一般的に出産の際に出る痛みは男性が味わうと脳内麻薬、つまりエンドルフィンを分泌させてもショック死する程の痛みと言われる。それを女性の場合は出産の際に通常の3〜6倍のエンドルフィンを発生させると言う。

それ以外にも男性より優れた点が幾つもあるのだ。この世界ではさらに能力に目覚めやすいと言う長所が出て来ても何ら不思議ではない。


「ホント面倒臭そうな世界だな、ッ!不味い」


とんだ世界に来たもんだとため息をついていると前方から女子生徒が2人歩いてくるのが見えた。すぐさま近くの木の上に身を隠して通り過ぎるのを待つ。


『そういえば滝里先生のクラスさっき不審者が現れたんだって!』


『へぇ〜、それは大変そうねぇ』


歩いて来たのは青い髪をショートカットにしてその上からニット帽を被った元気っ子な美少女と茶髪に光る花の形をした髪留めに肩まで掛かるロング、落ち着いた雰囲気の美少女だ。


「(2人の会話からすると全生徒に俺の事伝わってると見た方がいいな)…めんどくさい…」


ボソッと呟く八雲は重要な事を忘れていた。この学校がどういう者を育てるのかを‥


「?誰かいるの?」


「ん?どうしたんですかナツ?」


「ッ!」


気づかれた。何かの間違いと思いたいが元気っ子美少女の方が今八雲がいる場所を凝視している。


「隠れてるつもりかも知らないけど全部聞こえてるし匂いでわかっちゃうんだよー」


「いつもながら面白い能力よねぇ」


「(聞こえてるって、ここから30m離れてるし、ボソッと呟いただけだったんだがなぁ?)」


どんな耳と鼻してるんだ、と内心毒づきながらどうするか考えるが良い案が浮かばない。そうこうしている内に元気っ子美少女の方が痺れを切らした様だ。


「ムゥ〜、出てこないんならこっちから行っちゃうよ!」


「あらあら、怪我させては行けませんよ?まぁ不審者ならばいいでしょうけど」


元気っ子美少女の方が地面を蹴ると八雲の居る木に向かって弾丸の様に突っ込んで来た。しょうがない、と八雲は木から素早く降り、静止を促す。掛けていた伊達眼鏡も、もしもの為に外しておく。


「ちょっと止まれ、俺に戦う意思は無いぞ」


「ッ!!男!?」


「男性!?」


「あぁ男だが別に君らに危害を加える様なことアブっ」


最後まで話すことが出来ずに何故か殴りかかって来た元気っ子美少女の拳を目で追い軽く避ける。


「避けた!?」


「いやだから待て、君らと敵対する、よっと」


後ろから来た気配を感じ取り頭を低くする。すると丁度頭があった場所を水色に発光した薙刀が振るわれた。一般人には到底追えない速度の通り過ぎる薙刀の柄の部分を目で確実に捉え、掴み動きを抑える。


「えっ!?」


「申し訳ないな、少し大人しくしてくれ」


「ミサちゃんから離れろォォ!!」


その時、目の端で捉えた先ほどの元気っ子美少女が凄まじい速度の拳を八雲の丁度胸の辺りに振りかぶる瞬間だった。


「おっ、早いな」


彼女の渾身の拳は八雲の目には少し早いぐらいの速度で捉えられる。もっとも通常では反応すら出来ない程の速度の拳だったのだが。迫り来る拳の場所に受け止める様に手を出す。


「な…んで!?」


「なかなかいいフォームだぞ?」


ドパァンと言う派手な音の割りに力が無い拳だな、と八雲は感じたが、彼女の放った拳は普通なら鉄の壁をも貫くリアル戦車並みの威力を誇る筈だった。だがこの男は片手で傷ひとつ無く受け止めたのだ。


「取り敢えず2人とも俺は敵対するつもりは無いからさ、襲ってこないでくれると助かる」


その証拠に、と掴んでいた薙刀と拳を離す。


「あの、貴方が滝里先生のクラスに来た不審者なのですか?」


「えっ!?そうなの!?」


「まぁ滝里先生のクラスに居たのは事実だが、別に不審者と呼ばれる事はしてないよ」


「そうなのですか?」


「目つき悪いのにぃ?」


「…悪かったな目つき悪くて」


実は悪い目つきを緩和するためと『ある事情』の為に掛けている伊達眼鏡だが先ほどの戦闘の際に取り、現在どこぞの不良ですか?ぐらいになっているその目つきの事を言われ多少なりショックを受ける。

落ち込んだ八雲を見て危険が無いと判断した茶髪の美少女が自己紹介をした。


「あっあの私は水龍院すいりゅういん 美岬みさきと言います。2年生です。」


「あっ、じゃああたしも!あたしは風見かざみ 奈津なつなーちゃんて読んでね、ミサちゃんと同じ2年だよ!」


先程の戦闘を見ると風見の能力は五感及び身体能力の強化だと思われ、水龍院の能力は薙刀に水らしき物があった事から水系の能力を持っていると思われる。ただ水龍院の能力は八雲の知っている超能力にはない物。つまりこの世界にはオーソドックスな能力だけでは無いということだ。

これからは気を付けようと八雲は再確認した。


「別に呼ばないけど…俺は古金 八雲。2人と同じ2年生だ、よろしくな」




「…私達の事知っても態度変えないんだぁ」


ボソッと呟いた風見の言葉は八雲の耳に届かなかった。


「…所で八雲さんは出口へ行きたいのですよね?お教えしましょうか?」


「出口を教えてくれるのか?教えてくれるなら頼むよ」


これには八雲は驚いた。見ず知らずの男に親切に教えてくれるなんて落ち着いた雰囲気通り彼女は気が利く。そんな事を思う八雲。


「ええ構いませんよ、八雲さん追われているのには何か訳があるみたいですから」


「またまたぁ〜、ミサちゃん本当は八雲君の事少し気になぶぁッ!?」


意地悪そうなにやけ顏の風見に無言の笑顔で手に出現させた水球を容赦無くぶつける。


「…まぁ正直ここの学校の広さには参ってたんだ。広い上に人が多くて、集中しても精々200m先の人を判別するのに神経使っちゃってた所なんだ」


「へっ、へぇそそうなんですか?大変ですね?」


200m先の者を生身の人間が判別出来るものなのかと水龍院 美岬は顔を引きつらせる。普通なら出来ない事も能力者2人相手に能力無しで勝てる八雲なら出来るだろうと思わされる。


「コホン、それで出口の場所でしたね。ここから壁際を歩いて行きますと白い装飾をした水晶があります」


「ケホケホ、そこに行けば外に出られるよ」


「水晶か、そこへ行けば良いんだな?分かった。ありがとな」


追ってが来る前に急ごうと2人に軽く別れを告げ八雲は茂みの中に消えて行った。八雲が完全に見えなくなったのを確認すると水龍院 美岬が口を開いた。


「ふぅ、上手く行きましたね」


「そうだねぇ、八雲君を騙した様で悪い気がするけど」


「仕方ありませんよ、滝里先生の命令ですもの。『黒髪黒目の不思議な雰囲気のした男を見つけたら正門前に誘導する様に』って言われたんですから」


「でもねぇ?」


そう、滝里 朱里はすでに手を打っていた。彼女の能力は曰く精神系能力の高位のもの。読心、心の感応、さらには精神操作も可能な程だ。

その中で心を読む読心は簡単に言えば相手の思考を受信していると言うこと。

ならば逆も出来るとしたらどうだ、自身の思考の送信それも複数の者に。

つまり広範囲テレパシー能力も出来るのだ。

この事に八雲が気づいていれば八雲に関しての連絡がこの広大な学校中に行き届いているのが早すぎる事に疑問を持っただろう。


「それにしても不思議な方でした」


「うん、あたし達の事を見ても普通に接してきたね、あたし魅力ないのかな?」


「いえ、ナツは十分可愛いですよ、あの人はただ真面目なんですよ」


その言葉に若干の愛おしさを感じた奈津は美岬の顔を見る。その頬はほんの少し赤みがさしている様にも見えた。


「あっれ〜!!ミサちゃんもしかして八雲君に興味があるんじゃ無いの?」


「かっ!?ばっ!良い加減にしてください!今日初めて八雲さんにこっ好意を寄せてなんか!?」


「いや、好きなの?とは言ってないよ!」


そんな2人の会話があった事など知らない八雲は水晶の場所を目指す。それが自分を掴まれる為の罠だとも知らずに。

コメント、登録どしどしお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ