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シール

こんにちは。著者です。

今回で7話目となります。

それでは、お楽しみください。

 ぼんやりと、頭の中に誰かの声が響いてくる。


(聞こえますか。)


「これは・・・君の声・・・?」


(聞こえているようですね。よかった。)


「うん。大丈夫、聞こえてるよ。」



 先端に触れると、どうやらこの動物と会話をすることができるらしい。

 異世界ってすごい。



(あなたに聞きたい事と、頼みたい事がございます。)


「ボクに・・・? 傷の手当なら、今はこれ以上は無理だけど。」


(傷の手当のお礼も言ってなかったですね。手当てをしてくれてありがとう。)


「良いんだよ。ボクが悪化させちゃったようなもんだし。」



 実際、ボクが近づかなければ悪化はしなかっただろうと思う。

 他愛も無い会話をしながら、本題に入った。



(あなたは何故、私を殺さないのですか。私はこの森の精霊です。獣人や魔人から命を狙われる存在です。)


「ボクは別に君の命なんて狙ってないし、必要ないよ。ただこの森で迷子なだけ。」



 ボクは精霊人に救われたこと、森を歩いていたら迷子になったことを説明した。

 この歳で迷子って、ちょっとはずかしいよね・・・。



(精霊人が助けたのなら、あなたには悪意は無いのでしょう。しかし、この森を精霊人の案内も無く出歩くと、森の魔力によって道を閉ざされてしまいます。この森は一種の結界となっていますからね。)


 なるほど。ボクが一人で歩けば、迷子になるのは確実だったのか。



(あとで、私が村の近くまで案内します。そのかわりと言っては何ですが、お願いを聞いていただけないでしょうか。)


「そのお願いって、何?」


(私は今、最近この辺りの山に突然住み着いた魔獣に狙われています。今までは私の魔力で迎撃が出来ていたのですが、先ほどあなたを攻撃する際に、多くの魔力を消費してしまいました。)


「ご、ごめんなさい・・・。」


(魔力が回復するまでの間だけで良いので、私を護ってくれませんか。)


「ボク、魔獣から君を護れる自身なんてないんだけど・・・。どこかに隠れていた方が安全なんじゃないかな。」


(いえ、あなたは私の攻撃を耐えれる強い体を持っています。そして力強くもあります。)


「そ、そうなの・・・?」


(実際に私の攻撃を耐えて、押さえつけれる程には。ですので、私を殺せる程の強い存在だと思うのが妥当です。)



 何とも言えない。

 自分が強いと言われても、ピンッとこないのだ。

 この異世界にきてまだ時間が短いのだし・・・。



「えっと、ボクでも大丈夫な奴なの?」


(はい。)



 うぅん・・・。どうしようかな。

 ボクでも大丈夫なら、良い・・・のかな。

 仕方ないよね。このままだと村まで案内してもらえないだろうし。



「わかった。ボクで良ければ。」


(ありがとう。)


「ボクの名前は河野恵。ケイって呼んでくれないかな。魔力が回復するのがどれくらい掛かるか分からないけど、その間ずっと『あなた』ってのも嫌だし。」


(分かりました。ケイですね。私は森の精霊で、皆からは『シール』と呼ばれています。)



 こうしてボクとシールは行動を共にする事になった。

 シールはまだ足が痛むようで、上手く歩けないらしく、ボクが担いで移動することになった。



「ねぇシール。この辺りで食べれそうな果物とか実ってる場所、無いかな。お腹が減ってて・・・。」



 ボクは移動最中、お腹をぐるぐる鳴らしていた。

 食べ物が無くても、水は欲しいな・・・。



(そうですね。では少し左に進路を傾けてください。木の実が生っている樹木があります。)



 やった。食べ物に有りつけそうだ。

 言われたとおり、進路を傾ける。

 獣道だというのに不思議と歩きづらくない。

 シールに聞いてみたら、精霊の加護で木々が避けてくれているらしい。

 加護ってすごい。


 しばらく歩くと、小さな湖が見えてきた。

 湖の周りに、木の実が生っている木も発見する。

 到着したらしい。



「この木の実、食べれるの?」


(ええ。少し甘くて、瑞々しい木の実ですよ。)



 木にはオレンジ色の小さな木の実が生っている。サクランボのような形だ。

 いくつかを採って、湖で軽く洗い、口に入れてみた。



「あ、甘い・・・。おいしいねコレ。」



 再び木の実を採り、シールにも渡す。

 ボクとシール・・・ 獣二匹が木の実を食べる光景は少しシュールかも。


 再度、木の実を採ろうとした時、物陰から動物が飛び出てきた。

 丸い黒豚の様な動物だ。

 あまり可愛いとは言えない不細工な顔をしている。

 ボク、割と豚って好きなんだけどこれはちょっと・・・。

 皆にはこの感じは伝わらないのだろうけど。



「くぃぃぃっ くいぃぃぃっ」



 シールが叫びだした。

 あ、触れていないから声が聞こえないのか。

 近寄って触れると、シールの声が響く。



(ケイ、早く逃げて! あの魔獣の手先ですっ)


「あれが手先だったのか・・・。」



 事前に魔獣の特徴を聞いておけばよかった。

 シールを担いで逃げようとした時、背後から大きな音が聞こえてきた。

 何かが近づいてくる。

 どこかで聞き覚えの在るような音だ。


 「ドドドドド」といった効果音が適切なくらいの大きな足音。

 ボクは嫌な予感がしてきたので、シールを落とさないように抱えなおして走り出した。

 それと同時にボクたちが休んでいた場所に、足音の正体が出てくる。



 感が良い人はお気づきでしょう。

 あいつです。

 あいつが犯人です。

 ボクが異世界に落とされて、最初に接触した生き物って、な~んだ。



 筋肉が盛り上がっていて、岩のようなゴツゴツした体をしている猪みたいな動物だった。



「げっ! あいつじゃん!」



 ボクは後ろを確認してみると、見覚えのある動物が追ってきているではありませんか。

 すっごくデジャブな感じが・・・ とりあえず猛ダッシュをする。



(あれが私を狙って、追ってきている魔獣です。)



 でしょうね。ボクも命を狙われたことがあります。


 魔獣は目が血走っていて、口からよだれを垂らしながら追いかけてくる。

 シールはこんな気持ち悪い魔獣から、追い掛け回されていたなんて気の毒に。

 ボクだったら誰かれ構わず、助けを求めちゃうな。泣きながら。



「ねぇ、シール。いつもはどうやって逃げ切れていたの。」



 走りながら、ボクはシールに質問した。



(普段は森の加護で位置を把握させないようにしているのですが、時々あの小さな魔獣と遭遇します。あれは偵察用の魔獣ですので、見つけ次第殺していたのですが、今回は私の魔力が無かったので倒すことが出来ず、こちらの場所を把握されたようですね。)



 なるほど。あの豚のような動物は、猪のような魔獣と連絡が取れるらしい。

 今回は、ボクの対処が遅れたせいで、見つかったというわけか。

 ついてないなぁ・・・。



(それに、あの魔獣は私たち森の精霊を何体か食べています。森の加護の効果が思うように働かなくなったのも、私達の精霊の力を吸収しているのが原因と思います。)



 ますますついてない。

 また前回みたいに何時間も逃げ続けなければいけないのかと思うと、気分が悪くなってくる。

 シールの森の加護ってやつは期待できないし、自力で何とかしないといけないのか。


 少し気が遠くなるのを堪え、ボクは足に力を込めて速度をあげていった。

ここまで読んで頂き、ありがとうございます。

無事に投稿でき、安堵しております。次回も早い投稿になりそうです。


誤字や脱字等にお気づきになられたら、気軽にご指摘ください。


今回も見苦しい文があると思いますが、楽しんでいただけたら何よりです。

次回もどうか、よろしくお願いします。

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