鹿・・・?
こんにちは。著者です。
投稿に時間をとってしまいすいません。
今回が6話目となります。
それでは、どうぞ。
ボクは肩を落としながらトボトボと歩いていた。
なぜボクが肩を落としているかというと、狩りの帰りの出来事が原因だ。
狩りの帰り、ボクは自分の身体能力を確かめるついでに、獲物の荷物運び係を申し出た。
ただでさえまともに狩りに貢献できてないので、これくらいはせねば・・・という思いも強くあった。
だが、ここでドジをしてしまった。
獲物が入った籠を持ち上げる時、勢いが付きすぎて中身を盛大にばら撒いてしまったのだ。
沢山の物が入ってる箱を、持ち上げるために力を入れたけど、実際には何も入って無いような軽さだったので、勢いを付き過ぎて姿勢を崩す。 といった感じだ。
説明が下手かもしれないけど、なんとなくわかってくれたら嬉しい。
それだけならまだ可愛いものだったが、まだ続いた。
落ちた獲物を拾いなおす時に、一つを踏んでしまって盛大に後ろに倒れてしまい、頭をぶつけて気絶をするといった、どこかの芸人がやりそうなギャグみたいなことを素でやってしまった。
気絶したボクをルフト達が全員で抱えながら村近辺まで運んでくれたらしい。
ボクが目を覚ました時は、来客用と言われてたボロ小屋の中だった。
(荷物を運ぶつもりが、ボクが運ばれてどうするんだよぉぉぉぉぉ)
自分で自分を罵り、ルフトたちに謝りに行こうと小屋を出て、村の方面に歩いてる。
というのが今現在だ。
「たしかこっちの方角だったと思うけど・・・。」
ため息をつきながら、独り言を言う。
正直、どんな顔をしてルフトたちに会えばいいのかもわかって無い。
あのボロ小屋が自分の家だったら、後二日は寝込んでいたい気持ちだった。
(やってしまったのは仕方ない・・・よね。とりあえず謝って、何とか汚名を返上したいな。)
ボクは汚名返上をどうやってするかを考えながら、歩いた。
歩いた。それはもう沢山。体内時計が正しければ3~4時間は歩いた。
(もしかしなくても、迷った・・・?)
太陽の位置が、小屋を出た時より低くなっている気がする。
詳しい時間が分かるわけではないが、3時のオヤツの時間は過ぎてそうだ。
辺りの景色も少し変わってきている。
ジャングルの様な亜熱帯域の密林という感じが、樹海の様な日本にもありそうな森林といった感じに変化していた。
(どうしよう・・・。真っ直ぐに来たつもりだったけど、どこかで曲がってたのかな。これじゃ来た道を戻るのも無理そうだし・・・。)
朝から何も食べてないし、お腹も減ってきた。
とりあえず、今更戻っても帰れる保障はないので、このまま進むことにした。
(最悪、この森を抜けれれば何とかなるでしょ。)
お腹が減って、気が滅入って来ているのでポジティブなことを考える。 そんな時だ。
「くぃぃ・・・ くぃぃぃ・・・。」
「なにか、聞こ、える・・・?」
耳をすませてみると、確かに何かの泣き声が聞こえてくる。
ボクはその声を頼りに辺りを探ってみる。
するとそこには、鹿のような動物が倒れていた。
「鹿・・・じゃなよね。」
鹿のような、と表現したのは、ボクが知っている鹿よりも角と体が少し違うからだ。
角は先端がガラスの様に透き通ってて緑色だし、全体が少し長めの毛に覆われている。
よく見ると、後ろ足に怪我を負っていて血が出ている。
観察をしていたら、鹿のような動物がボクに気付いた。
咄嗟に逃げようとする動物。
しかい、上手く力が入らないのか、又は痛みに耐えられないのか、再び倒れてしまう。
「怪我をしている場所に力を入れると、余計に悪化しちゃうよ。」
動物に言葉は通じないと思うが、思わず声に出してしまう。
鹿のような動物はボクの言葉に耳を傾けずに、必死に逃げようとする。
動物が好きなボクは、なんとか出来ないかと近づこうとする。
その動きで動物が焦ったのか、起き上がるのを諦めて威嚇をしてきた。
近づいたら攻撃されそうだと思うが、手負いの動物だと安易な気持ちで歩みを進めた。
「ぐいいぃぃぃぃっ!」
動物が咆哮を上げる。
それと同時に、角が緑色に光だし、言い寄れぬ雰囲気が広がった。
辺りの木々がざわざわと騒ぎ始めたと気付いた時、沢山の枝や木の葉が飛んできた。
咄嗟の事だったのでボクは避けることが出来ずに、自分の体を護るように縮こまる。
「い、痛い痛いっ」
枝が針のようにボクを突き、木の葉が刃物にボクを斬るように攻撃をしてくる。
思わずボクのほうが逃げ出した。
少し離れると、枝や木の葉が飛んでこなくなった。
どうやらここまでは届かないらしい。安心はできないけど。
振り返るとボクと鹿のような動物の間には十分な距離が開いていた。
動物はこちらを見て威嚇を続けている。
近づいたら攻撃すると言われているようだ。
普通なら、枝や木の葉があんな飛び方はしない。
動物の角が光っていたし、もしかしたら魔法か何かで攻撃してきたのかな。
異世界にはまだ知らないことが多すぎる。
しょうがないので諦めようとした時、ボクは気が付いた。
動物の足から出ている血が、明らかに多くなっている。
さっき無理矢理起き上がろうとした時に、傷口が開いたのかな。
ボクは後悔した。
(ボクが安易な気持ちで近づかなければ、あの動物は傷の回復を待って、自力で動けたかもしれないのに・・・。傷口が広がったのはボクの・・・せいだよね・・・。)
最初に見た時にはすでに血流していたが、今は更に多くの血が流れている。
(このまま、知らない顔なんて出来ないよ・・・。)
そう思った時には、決心していた。
(痛いのを・・・ 枝や木の葉を我慢して、止血だけでもしよう。さっきの木の葉の攻撃で、制服も丁度良く切られてるしね。)
ボクは上の服を脱いで、上半身を露わにした。
あ、脱ぐのが女性じゃなくて狼男でごめんね。
サービスシーンは諦めて下さい。
(誰に向けての謝罪かは自分でも分からないけど、この服と、手ごろの枝があれば、止血とテーピングが出来る・・・よね。)
枝はすぐに見つかった。
これで止血とテーピングができるはずだ。
準備は出来たので、あとは勢いでいくしかない。
「よしっ。今から行くから覚悟してね。」
鹿のような動物に向けて言う。
動物は再びこちらに向けて、威嚇をしている。
「いちについて、よおい・・・・・どんっ。」
ボクは一気に走る。
距離は50m程だ。
走り出したと同時に、動物が咆哮をあげる。
さっきと同じ攻撃のようだ。
「いたたっ、痛い痛いっ」
肩や腕や背中や足をチクチクと針で突かれる感覚に近い。
我慢をして、動物の方へ近づく。
近づく程、攻撃も激しくなる。
(あと少し、で・・・届く。)
と思った時、枝や木の葉の攻撃がピタリッと止んだ。
(あれ、止まった・・・?)
よく見ると鹿のような動物が息を切らしていた。
どうやら短い時間しか攻撃できないらしい。
動物は息を切らしながらも、角を振って攻撃をしようとしたり、暴れたりする。
「少しだけ、じっとしてて・・・。 お願い・・・。」
暴れ動く動物の体を押さえつけ、怪我をしている足に切れた服を巻きつける。
薬か何かがあれば良いのだが、今はこれが精一杯だ。
後は巻きつけた服の上から、枝を支えのように固定して、また服をまきつける。
「はい。おしまい、だから・・・ あばれないで。」
動物も暴れていたのでかなり不恰好な形だが、何とかテーピングまで出来た。
そしてボクは動物と少し距離を置く。
「もう近づいたりしないから許して。これくらいしか出来なかったけど・・・。」
動物は少しキョトン、としていた。
距離をとったので、少し落ち着いたように見える。
「ボクはもう行くから、君はそこで休んでなよ。邪魔しちゃってごめんね。」
ボクに出来るのはこれぐらいだろう。
他にできることも無いだろうし、ゆっくりと立ち去ることにした。
「くぃぃぃ・・・」
先ほどの威嚇とは別に、弱い泣き声をだす。
どうやら、こちらの意思は伝わったみたいだ。さすがは異世界。
ボクは背中を向けて、歩き出した。
「くぃぃぃ・・・・」
案外、可愛い泣き声だなぁ。
なんて考えながら歩く。
「くぃぃぃぃぃ・・・・・・」
意外と声が大きいようだ。
まだ聞こえる。
「くぃぃぃぃっ くぃぃぃぃぃぃ・・・」
何かおかしいと思い、振り返る。
鹿のような動物が、ヨロヨロと歩きながら付いてきていた。
テーピングは成功していたらしい。
ってそうじゃないな・・・。
「どうしたの。君のお家はこっちにあるの?」
動物はボクの傍に来て、首を振った。
あれ、言葉が通じるのかな。
「ボクのテーピング、どこか悪かった?やり直そうか。」
また首を振る。
どうやら違うらしい。
何かを伝えたいのだろうか。
すると動物が頭を下げて、角の先端をボクの前に出す。
ガラスのように透き通ってて綺麗な部分だ。
「触って・・・いいの・・・かな。」
どうしようか迷っていると、動物が角で軽く突くようにしてきた。
どうやら触れと言ってるようだ。
ボクは恐る恐る、その先端に触れてみた。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
前回のあとがきで、1~2日に1話の投稿を~とか言っておきながら時間があいてしまいました。
文が思いのほか纏まらなかったのと、完成した文を保存したはずが、データが消えてしまったのが原因です。本当にすいませんでした。
次も早く投稿する予定ですので、良ければまた読んでください。
今回も見苦しい文や表現があるだろうと思いますが、楽しんできただけたら何よりです。
次回もどうぞ、よろしくお願いします。