現代人(やくたたず)なボク
こんいちは。著者です。
今回、無事に投稿できました。
それでは、お楽しみください。
精霊人たちの村は朝が早かった。
太陽が顔を出す少し前。まだ薄暗さが残るくらいの明るさ。
そんな時間から、村の猟師たちは森の中に入っていくらしい。
ボクはその声を聞いて目が覚めた。
「ケイ。おきてるか。」
「今起きたところだよ。どうしたの。」
まだハッキリと目が覚めてないボクのところに、 元気よくルフトがやってきた。
「起きてるな。これから狩りに行くんだが、村の奴らと話しててな。獣人を一度見てみたいんだとよ。」
(獣人って・・・。あぁ、そういやボクって今は獣人になってるんだっけ。)
「どうだ。一緒に来ないか。怪我が痛むなら無理にとは言わないが。」
「そうだなぁ・・・」
まだ痛みがあるものの、大丈夫みたいだ。
「わかった。行くよ。もし無理そうだったら見学だけにさせてもらうけどね。」
「よし、決まりだな。んじゃいくぞ。」
ルフトが小屋を出る。
ボクはまだ寝ぼけてる頭を振って、眠気を飛ばす。
ブルブルブル。
あ、今の動き、ちょっと犬っぽい・・・。
そんなどうでも良いことを考えながら、だんだんと頭を覚醒させる。
(よしっ。いきますか。)
体を起こし、小屋を出る。
外でルフトが待っていた。
「案内するから付いてきな。」
ルフトの後を付いて行く。
数分歩くと、村の入り口に到着した。
「そういえば長老が昨日、村のおきてがどうのこうのって言ってたけど。ボク、近づいていいの?」
ボクの寝た小屋は、村からは少し外れたところにある。
小屋から村の方面に歩いたという形で移動したようだ。
周りはジャングルみたいに木や草で生い茂ってるから、方向感覚はすでに狂っている。
「あぁ。ケイには悪意が無いようだから、近くまでなら良いって許可を得てる。もちろん、狩りの同行もな。」
なるほど。じゃぁ少しは信用されたってことかな。
「そろそろ俺達の組も集るころだから、少し待ってくれ。」
村の入り口から覗ける範囲の場所に少し広げた所があり、そこにルフトが走っていく。
何人かと会話をして、戻ってくる。
ルフトの後ろから3人程一緒に。
おっさん1人と若者が2人だった。
「またせたな。他の奴らより遅れてるし、早速いくとするか。自己紹介は移動しながらでいいだろ。」
ルフトの声で、4人と獣1人は移動していくことに。
おっさん面の人がグラフ、身長が低い若者がデール、やや筋肉質な若者がメーシェというらしい。軽い自己紹介を終えた。
移動中、全員から一度は尻尾や背中や耳を触られた。
尻尾もあるとは触られるまで自分でも気付いてなかった・・・。
皆、ボクの姿に興味津々のようだ。
昨日見ていたはずのルフトも、ドサクサに紛れて触っていた。
ひとしきり触られた後、満足したのか全員落ち着きを取り戻す。
そして村での狩りの説明を受けた。
「俺たちは何人かの組に分かれて狩りを行う。話し合いでその日、どこを狩場にするか決めるんだ。俺達の組は今日は川の漁になるな。」
本日の狩りは川で魚を捕ることらしい。
こうやって日ごとに場所を転々として狩りを行い、捕ってきた獲物を村全体で分けるようだ。
腕に自信の無い者は、村で農作物を育てたりして貢献する人もいるらしい。
日本で見た、自給自足生活の番組を思い出す。
現代人のボクにはやること無いだろうと思ってたけど、まさかこんな場所で体験することになるなんて・・・。番組、ちゃんと見てればよかったな。
まぁ、「百聞は一見に如かず」だな。やれば出来る奴なんだ、ボクは。
目的場所に到着したボクらは早速、各々の得物を手にして狩りを始める。
「なにか使うか?」
とルフトから提示された武器の内、弓を選んでみた。
地球に居たころに習っていたので多少自身があった。
だが、弦を引いてみた所、すぐに弓が壊れてしまう。
その様子を見ていた精霊人たちが固まった。
ボクは慌てて謝る。
「ご、ごめんなさい! まさかこんなに脆い物とは思わなくてっ」
「い、いや、怒っては居ないんだ。ただ、驚いてね・・・。」
ルフトが驚いて固まった表情のまま、答えてくる。
「その弓は獣人のケイ用にと思って、村で一番大きく硬い奴を選んで持ってきたんだ。それを随分と柔らかく引いて、簡単に壊したんで驚いてな。」
(これが村で一番硬い奴なのか・・・。じゃぁ普通のはもっと柔らかいのかな。)
その後、木と石でできた簡単な槍の様なものを使ってみるが、それもあっという間に破損。
たぶん、他の道具を使ったところで、その道具を壊してしまう。
完全に壊し損のお荷物状態に。
「も、もっと大きく丈夫な槍をもってくればよかったな。」
その場の全員が苦笑いしている。
このままだと完全に役に立たない奴の認識を得てしまう。なんとかせねば・・・。
ルフト以外の人は魚や川辺に水を飲みに来た動物を狩って、成果を上げてきている。
狩りはお昼手前までで終わるらしい。
なにか良い方法は・・・。
(そういえば、川に大きな岩を投げ込んで魚を気絶る方法があったような・・・。このままじゃ道具を壊しただけで申し訳ないし、やれる事はやってみよう。)
近場の岩を見定める。
人の頭くらいの大きさの岩を見つけたので、手を伸ばす。
ヒョイッ (軽い!?)
思わず川に捨ててしまう。
ドボンッ
音だけは重たそうな音だったな。
そして次は、人の体ぐらいの大きさの岩に手を伸ばす。
ヒョイッ (これも軽い!?)
再び川に捨てる。
ドバンッ
音だけで大したこと無いな。
さらに大きい岩に手を伸ばす。人と同じほどの大きさだ。
スクッ (お、程よい重さ。両手で軽く持ち上げれる程度か)
「おい、それを川に投げるつもりか・・・?さすがに怪我人がでるから少し待ってくれ。」
「見た目は重そうに見えるけど、別に大した重さじゃないよ。怪我するほどじゃぁ・・・」
そう言っている最中に、若者二人とおっさんが慌てて川から離れる。
誰も居なくなったのを確認して、岩を放り投げる。
ドッバーーーーンッ!!
予想以上の音の大きさに、自分もびっくりする。
精霊の人たちも、かなりビックリしているようだ。
おっさんなんか、腰をぬかして座り込んでる。
「話では聞いてたけど、獣人ってのはすごい力持ちなんだな・・・。」
「いや、そんなに重い岩じゃないよ。持ってみてよ。」
若者とルフトが投げ入れた岩に近づき、持ち上げようとする。
しかし、人程の大きさの岩は、ピクリとも動く気配を感じさせない。
「こんなのが軽いだなんて・・・。それだけ力が在ると、村にある道具じゃすぐに壊れちまうわけだ。」
もし、川に落ちた時の音で岩の重さを仮定するなら、ボクの常識だとルフトたちが正常で、ボクが怪力の持ち主になった事になる。
しかし、ここは異世界だ。あまり早計に決めるのもよく無いだろう。ボクが正常で、ルフトたちが非力なだけかもしれないし。
すこし考えてみたが、検証しようにも、比較対象がボク一人だと意味が無い。
とりあえず、検証は後回しだ。
岩の衝撃で気絶した魚が浮かんできていた。運良く二匹もだ。
どうやら成功したようで、これでお荷物ではなくなったと思いたい。
「と、とりあえず、魚を捕ってしまうね。」
その後、何度か同じ大きさの岩を落としてみたが、魚は浮かんでこなかった。
ルフトがいうには、ボクがやった狩りの方法は、冬場に行うのが普通らしい。
岩と岩がぶつかって、その衝撃で魚が気絶するものだと教えてくれた。
無知なボクには勉強になった。
岩を投げ込む方法ではこれ以上成果をあげれないと思ったので退散。
川を出て、辺りを見渡す。
若者の一人が、弓を引いて狙いを付けているのに気が付く。
どうやら、何かの小動物を狙っているらしい。
弦を離し、ヒュッと乾いた音が鳴る。
どうやら逃してしまったらしい。悔しそうにしている。
ボクも真似をして、あたりを見渡す。
川の向かい側の茂みがゴソゴソ動いてるのに気が付く。結構大きいようだ。
足元の岩を持ち上げる。
大きさは人の頭ほどの大きさだ。
(よし。検証第二段階。物量の検証だな。)
ボクがかなりの力持ちと仮定して、この岩を動物に当てると、ボクの力と物量であれば致命傷をあらえられるはず。
もしボクのちからが普通で、この岩の物量の重さがボクの感じたもののままであれば、ぶつかった獲物は逃げていくだけだ。
そう考え、岩を全力で投げる。
ズギャン。
音が響く。その後、茂みの後ろの木がゆっくりと倒れた。
ふむ。獲物には当たらなかった様だけど、検証結果はでたな。
どうやらボクは怪力の持ち主になっているらしい。今のところは。
『・・・・・・・。』
精霊人達からは、すでに呆れているような目線を向けられることになっていた。
こうして、ボクの検証を含んだ、初めての狩りが終わった。
結果は、魚二匹・・・。
ルフトやおっさん達は魚以外にも水辺に咲く薬草や果実、小動物などを捕ってきている。
やっぱり、今の現代人に自給自足は厳しい様です。
お疲れさまでした。
ここまで読んで頂き、本当にありがたいと思っています。
今は1~2日に1話の投稿ペースでやっておりますが、最終的には1週間に1話ペースで落ち着けたらなぁ、と思っています。
まぁ今のところは、すでに考えてあるプロットに沿っていきながら、書きたい事をバシバシ書いている最中なので、暫くはこのペースで行くと思います。
今回も、見苦しい文と表現があると思いますが、今後も読んでいただければ嬉しいです。
どうぞ、よろしくお願いします。