異世界での は じ め て
ボクは今、青々と木々や草が茂る森を駆けている。全力で。
「ハァハァ・・・ 何で・・・ こんなことに・・・」
息も切れ切れに、額に汗と血を流しながらだ。
背後にからは殺気の様な視線と木々が倒れる音。
意識を向けると、そこにはボクの身長よりも遥かに大きい岩が追いかけてきている。
正確に言えば、岩の様に見える程ゴツゴツと筋肉が盛り上がった猪の様な生き物だ。
勿論、ボクが極端に小さいということでもない。
「普通にこのサイズはありえないでしょ・・・」
誰からも返事の来ない独り言。
わかってはいるが、この理不尽な状況に愚痴の一つも言いたくなる。
「あの、エロじじい・・・ おぼ、え、てろよ・・・」
息を切らしながら、この状況に精一杯の愚痴を零す。
サブタイトルが「異世界での は じ め て」だなんて馬鹿げてるよ。作者はふざけてるとしか言えないなまったく。
そりゃはじめてさ。こんな命の危険を体験したのはね。
そんな訳の分からないことを考えてしまってる程に混乱はしてるらしい。
筋肉の塊から追われ、必死に逃げているので時間間隔は飛んでしまっているが、たぶん1時間くらいは逃げ回ってると思う。
だが、この状況も長くは続かない。次第に足が重たくなっていく感覚に、焦りを覚える。
(いよいよやばくなってきたな・・・。どうにかこの状況を変えないと、食べられて筋肉の一部にされちゃう。どうしよう・・・。)
焦りながらも、必死に足を動かす。歩き慣れない山の獣道を。
不意に景色が広がる。
(やっと広い場所にでられる!!)
走るのを邪魔していた青々とした木々やが無くなり、広げた場所が目に映る
最後の力を振り絞り足に渇を入れる。
(でられた!! 良く頑張ったボクの体!! 今だけ愛してる!!)
しかし、そこには木々以外にも無くなってはいけない物があった。
そう・・・ 地面も無いのだ。
「えっ・・・ ウ、ソでしょ・・・」
間抜けな顔をしていたと思う。何が起こったか理解が出来てない様だ。
走馬灯のように、時間がゆっくりと流れる。
ゆっくりと、しかし確実に、下へと引っ張られる。
やっと思考が追いつき、自分が崖に飛び込んだと理解する。
「お、おちる」
なんとか言葉を発してみるが、絶賛落下中だ。
普通なら崖だと気づく筈だが、全力で筋肉の猪から逃げていて、尚且つ背後に意識をやっていたため、気付けなかったのだ。
下を覗けば、川の水面がすぐそこまで迫ってきている。
自分から飛び込んでいるので、迫ってきているという表現は可笑しいと思うが、本人からすればそんな感じに受けてしまう。
「あべりすfggはs」
上手く言葉が出てこない。頭では多少冷静の様に思えるが、体は正直だ。
状況が上手く飲み込めなく、混乱している。
水面に触れる一歩手前。
どのくらいの高さから落ちたのか分からないけど、運が良ければ助かるだろう・・・と、淡い希望を抱きながら水の中に入る。
全身に叩きつけられた様な痛みが走る。あまりの痛さに意識が飛びそうになる程だ。
心の準備すらなく飛び込んでしまったので、変な体制で川に落ちてしまった。息すら吸えてない。
(意外と深い・・・ 早くしないと息がっ!)
叩きつけられた反動で、かなりの深さまで潜りこんだらしい。
もがきながらも酸素を求め、水面へ上がろうとする。
水面に近づき、あと少しというところで、腕が上がらなくなる。
だんだんと意識も無くなりはじめ、自分の意思では腕が動かせなくなる。
消えていく意識の中、この状況の大本の原因を思い出しながら、ゆっくりと意識を手放した。
これが、不幸体質な少年が、不幸の連鎖により異世界へ飛ばされた、最初の出来事である。
はじめまして。著者です。
今回の小説が初めての投稿となりますので、なにぶん見苦しいところがあると思いますが見ていただけたら幸いです。
今回が第1話投稿となりますが、この後に2~3話ほどプロローグとなる予定で、本編は4~5話目くらいからだと思います。
少しプロローグが長いとは思いますが、出来るだけ早く投稿するので、どうかお付き合いください。
主人公が不幸体質と記されてますが、基本的には何かに巻き込まれたり、被害者側になったりといったものが多いと思います。
これからどんどん書き繋いで行くので、どうかよろしくお願いします。