能力検証
「お待ちどうさまでした」
俺は、にこやかにお客様にお弁当を渡す。
今は弁当屋のバイト中だ。
夕方の帰宅途中で弁当や惣菜を買い求める客で結構繁盛している。
「またのお越しを」
バイト仲間の美樹ちゃん(18)も笑顔を振りまき頑張ってくれている。
そんな頑張っている俺たちの頭上に頑張ってない奴が1人。
うちの魔王少女ミリーだ。
あいつ、一人でふわふわふわふわ目障りなんだよな。
まぁ、働けないとか浮いているってのは、幽霊みたいなもんだから他の誰にも見えないし仕方ない。
けれど、今夜にでも何ができるんか聞いてみる必要がある。
その理由は簡単だ。
視線の先のミリーは全裸のままだ。
聞いたことによると、ミリーに性別はないらしく、男女という概念もない。
だが、少女のような外見のまま全裸というのは些か目の保養になりすぎる。
とくに、下からのアングルってのは凶悪だ。
ミリーに性別がないってわかっていてもついついチラ見したくなる!
俺は自分の欲望と壮絶な死闘を繰り広げて、今夜のシフトを乗りきった。
<今夜はノリ弁♪今夜はノリ弁♪>
ミリーの上機嫌な鼻唄が聞こえる。
初めて知ったのだが俺の味覚を通してミリーも料理を味わうことができるらしい。
イロイロな残り物を味見させた(した?)が、ミリーのお気に入りは竹輪の磯辺あげのようだ。
ミリー、なんて安い奴♪
ノリ弁の入ったビニール袋をぶら下げて、海岸に来ていた。
時間は夜の10時過ぎ。
辺りに人の気配はない。
さて、これから検証開始だ。
「なあ、ミリー、お前のできることを簡単に確認する方法はないか?」
<弁当のメニューを見せるようなものか?>
「ああ、そうだ」
<そんなもの簡単だ。ほれ>
ミリーが、俺に手をかざすとゲームのメニュー画面のように文字が表示される。
<分かりやすいようにここの言葉に変換してあるぞ>
そのスキルとは、
・噴火
・津波
・竜巻
・地震
どれも実際におきたら大災害間違いなしのスキルだ。
試すのは危険すぎるだろ。
「あのさ、初歩の初歩みたいな魔法はできないのか?服を作るみたいな」
<服を作る?ドレスメイクならできるぞ>
「そうそれ!そんな魔法を求めてるんだ。悪いんだが、それで服を着てくれないか」
<構わんぞ>
ミリーが指を鳴らすと、白のゴシックドレスに身を包まれていた。
<どうだ?>
「う~ん」
確かによくできた魔法のドレスではある。
だが、下からのアングルってのは、さらに凶悪になった気がする。
ちょっと確認してから、あんまり高く飛ぶなと注意しよう。……だって、見えもしないのに注意するのも悪いもんな。
「まぁ、とりあえず服はそれでいいとして、移動をどうにかしてする手段はないか?」
現代社会において、攻撃する必要がある機会はないが、移動となれば別である。
人より早く移動できて、そんなことはない。
<移動か。転移と身体能力の増幅くらいなら容易いぞ>
ゲームやラノベで出てくるテレポートとフィジカルブーストってことか?
俺の心の琴線が揺さぶられる。
「まさか俺もできちゃったりするのか?」
<できるだろうな。俺様と魂が繋がっているってことは、魔力も繋がっているってことだからな。俺様がサポートすれば思うだけで使えるはずだぞ>
「マジですか!ミリー様」
<何か急に崇められると気持ち悪いの>
そして、俺はそれらのスキルを期待を込めて実行する。
結果は、
・テレポート…1メートル
・フィジカルブースト…50メートル6秒
実に微妙な数字であった。