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俺と魔王と勇者と  作者: 逆さメガネ
現代生活編
3/78

魔王さん、登場

 俺は目を覚ます。


 目を覚ます?……っておかしくないか?

 確か、俺、死んだんじゃなかったか?


 目を凝らすと、そこは異世界……ではなく、ただの病院のベッドの上だった。

 見るとベッドの名前も日本語で『小林恭介』となっている。

 間違いない。俺の名だ。

 異世界でないのは残念で仕方ないが、生きてたというのならそれでもいいだろう。


 あのときのトラック運転手には悪いが、入院費と当面の生活費として賠償はしっかりしてもらうとしよう。

 そのためには自首しているならいいが、ひき逃げしているのであれば、しっかりと犯人を割り出さないといけない。

 バイトも突然休んでしまったし、あの店長夫婦のことだ。えらく心配していることだろう。

 さて、これからどうするかとゴロンと寝返りをする。



<よっ!起きたようだな>



 長い金髪を二つに束ね、所謂ツインテールにした外見の10代前半と思われる少女が、俺のベッド上の真向かいに寝そべりながら、いい笑顔で声をかけてきた。



「へっ?」



 瞳が紅い気もするが、気のせいだろうか?

 というか、他人のベッドに堂々と入っていたらダメだろ?

 とくに女の子なんだから、相手が成人男性の場合は大変な勘違いの原因になってしまう。

 怖い、拳銃とか持ったお兄さんたちに囲まれるのは御免だ。

 とりあえず、名前を確認するか。



「……お前、名前は? どこから来たんだ?」

<俺様は魔王ミリーヒルクライム、こことは別な世界からやって来た魔王様だ!>

「……ああ、なるほど」



 俺は理解した。

 どうやら、この子はこんなことを言ってしまう病気のようだ。

 可哀想に……。

 世の中にはいろんな病気があるもんだ。



<俺様が病気? 俺様はいたって元気だぞ>

「ハイハイ、君は病気じゃないんだよね。今、看護師さんを呼んであげるから自分の病屋に帰ろうね」



 全く、たまたま目が覚めたから良いけど、病院側もしっかりと管理してもらわないと困ってしまう。

 ナースコールはすぐに見つかった。

 手を伸ばせばすぐに届く位置だ。

 ナースコールを押しながら、ふと考える。

 今、さっき、俺の心の声に答えていなかったか?



<当たり前だろ。念話なのだから>



 ほら、また。

 このままでは、自分までおかしくなってしまいそうだ。

 少女を自分のベッドから追い出すべく、布団を捲る。



「ほら、出てけって……へっ!」



 なんで、こいつ、全裸なんだ。

 布団の下の少女は、何も纏っていなかった。

 胸の膨らみもなかったけど、股間にも何もついていない。



「………………」



 思わずガン見してしまう。

 その時、廊下からはコツコツと俺の呼んだ看護師さんの足音。


 ヤバイ、このままでは病院から刑務所に直行で、しかも連泊コースとなりそうだ!

 どうにかして少女を隠せないかとあたふたしていると、ついにドアが開く。

 よりによって、結構かわいい感じの看護師さんが登場。


 ああ、終わった。



「あの、これは……」



 俺がなんとか取り繕おうとしていると、看護師さんが不思議そうに尋ねてきた。



「小林さん、目が覚めたんですね。事故に遭って混乱しているのはわかりますが、何を1人で騒いでるんですか?」

「1人?」

「1人ですよ。他に誰がいるっていうんですか?」



 看護師さんが不思議そうに確認してくる。

 俺がチラッと少女を見るが、ベッドの上で胡座をかいた少女は、あくびをして我関せずって感じだ。

 ここまで堂々として気付かれないなんて、こいつは本物のようだ。

 こいつはとりあえず人間ではない!

 ひょっとしたら、本当に魔王かもしれない。

 俺はそう認識した。






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