あなただれですか?
◆6
カチャッ。
「ぢゅぎゃぁぁぁぁあ?」
いつも走ってやってくるお兄ちゃんが今日はすぐにこないなとは思ったけど、やっぱりきた!
と、思ったけどやっぱり来てなかった!
あの……あなただれですか?
赤ん坊って多分動物的な感が働くんだろうね。兄ちゃんともお母さんとも違うなんとなく独特な雰囲気がドア周辺から漂う。私はまだ首が据わってないからドア方向を見れないんだよね。
誰かがドアの前で佇んでいるのが分かる。すっごく視線を感じるんですけど……。
あっ今も泣いているよ。いつもお兄ちゃんとお母さんが慰めてくれるから2人がいないと泣きやめない。
「―――――ほう。」
私をずっと見ているかと思ったらためらいもなく私の下に進んできた。
覗きこんだ人は女の人だった。ショートカットの紺の髪と青い目。全身的にきりっとしたなんとなく野性味のあるお姉さんって感じの人。
ってお姉さん!顔近いですよ!!
思わず泣きやんでしまって私もまじまじとお姉さんをみる。
「不思議だね。魔力のにおいがするのに黒の使者とは」
お姉さんがまじまじと私を見ながら言った。
――――――黒の使者。
心臓がぎゅっと縮んだ気がした。
お姉さんがいった。黒の使者と。私のことを。
恐い。恐い。こわい。
また殺されるのか?今、ここで?
今私は赤ん坊だ。簡単に殺せるだろう。
怖い怖い。こわい。
声がでない。助けを呼びたいのに動くこともできない。
あの時のようにわたしは―――――
「あら?マサドーラ。ここにいたの?」
「あぁ。ウルとマリアの子供を見てみたかったからな」
「ふふ。かわいいでしょ。今がだいたい2カ月たったころよ」
「元気に育っているようでよかったよ。それにしても面白いな。黒の使者なのに魔力がある。この娘、将来とんでもない大物になりそうだな」
「サラっていうの」
「そうか。サラか」
いつの間にかお母さんが部屋に入ってきていた。私は恐くて声が出せなかったけど、このお姉さんはどうやら別に私を殺すわけではないみたいだ。
お母さんが私を抱っこする。私はようやく安心することができた。
安心すると一気に涙が溢れてくる。さっきも泣いたけど、今度は堰を切ったように泣いた。
「あら?あらあら?サラちゃんどうしちゃったの?マサドーラは恐くないわよ?」
「見慣れない人間が入ってきたから驚いたんじゃないか?」
お母さんはいつも通りゆったりと私をあやす。
「マサドーラが帰ってきたってことはウルももう帰ってくる?サラが生まれてまだ帰ってきてないし。もうそろそろなんじゃないの?」
「あぁ。私はそのことについて伝令役として帰ってきたんだよ。マリアすまない。ウルはまだ帰れない。あちらの様子が逼迫しててな……。で、生まれてきた子供にこれを渡してほしいといわれてきたんだった」
そういうとお姉さん―――マサドーラさんは私の前にクマのぬいぐるみのようなものをだしてきた。
泣く私を見るマサドーラさんはとても優しい目だった。
私は泣きながらもクマ?のぬいぐるみをみた。淡いピンク色をした赤ん坊用のぬいぐるみだ。
でもなんだろう?
このぬいぐるみなんだか温かい雰囲気がする。
「お前の父がお前のために造らせたものだ。中に精霊が入っているからお守りにもなる」
精霊?