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オモワヌもの  作者: トキ
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はじめまして

気が付いたら私は赤ん坊になっていた。

どうして?

私が怒りの叫びをあげた時、周りでは歓声が起こった。

なかなかの難産だったらしい。声を上げた後マリアと呼ばれていた―――私を産んだお母さんに抱きかかえられる。産まれてきてありがとうといって、本当に嬉しそうな顔をしていた。

でも今の私は訳がわからなくて、死んだ時怒りや悲しみもあってそのあとずっと疲れて眠るまで泣き続けた。



私は今、ゆりかごの中にいる。

赤ん坊とはとても厄介だ。首がすわってないから首すら動かすことができない。しかも暇だ。すぐに眠くなるし。

動けない時間、私は考える。

―――どうして殺されたのか?

―――あの場でもっと抵抗していたら何かが変わったのかもしれない。

家族のことも考える。だって最後に話したのなんだっけ?

確か今日の帰りに漫画かってきて、めんどい、いや、とかそんなくだらない話しかしてない。

なんかいやだ。

あぁ部屋も片付けてなかったし、きっと行方不明扱いになるだろうな。お母さんもお父さんも泣くだろうな。せっかく去年弟が生まれたばかりでかわいい盛りなのに……。

どうして私こんなところにいるんだろう?

そう考えると悲しくなってきた。


「ふにゃらぁぁぁぁぁ!!!<もうやだぁぁぁぁぁ!!!>」

私が泣いていると遠くから足音が聞こえてきた。ドアの開く音も聞こえる。

だれか来たけど気にしない。

「サラが泣いているよ。お母様!早く!早く!」

「おぎゃおぎゃぁぶぅぎゃるにゃぁぁ!!<いやぁいやぁぁかえりたいよぉぉ!!>」

ドアを開けたのは4歳くらいの男の子だった。髪はすこし癖のありそうな金髪。

元気な声でそういって泣いている私の顔を覗き込んだ。瞳はきれいな空色。

男の子は私のほっぺたをつつく。

「サラ泣きやんで。もうすぐお母様くるから」

そんなことを言われても泣きやむことはできない。

赤ん坊の心の制御は難しいのだ。私が泣きやもうと努力してもなかなか心も身体がついていかないし、辛くて辛くてどうしても耐えられないと私の心はとまらない。

「びゅぎゃぁだぁぁ!!<ほっといてぇ!>」

さらに声を大きくして泣く私に男の子は少したじたじになっていた。すまん。少年よ……。

誰も私に話しかけるな、見るな、と悲観的な感情が出てくる。

どうしても止められない。


「あらあら~。サラちゃんご機嫌斜めね。お腹がすいたのかしら?」

そういって私を抱き上げたのは私を生んだお母さん―――マリアさんだった。いつの間に部屋に入ってきたのか泣くことに夢中な私は気がつかなかった。

そっとやさしく抱きしめるマリアさんはすごい。背中をぽんぽんされるだけで何だか安心する。

さすがマリアさん!

マリアさんはとてもきれいな人でゆるゆるのウェーブのかかった金髪、瞳は琥珀色をしている。でもお母さんと思うのはなかなか難しい。だって私のお母さんは日本のスーパーで働いている方がお母さんだから。そう思うとまた泣けてきた。

「おきゃあぁぁ<お母さん>」

「サラちゃん大丈夫よ~。すぐにご飯あげますからね」

少し音量を下げて泣きはじめた私にマリアさんが恐ろしい発言をする。やばいっ!と私はすぐに泣きやんだ。だってご飯ってあれだよ?私赤ん坊だよ?

でもそんなの関係ないとばかりにマリアさんが服を肌蹴させ――きれいな乳を――――まって!お乳飲ませようとしないで!恥ずかしいから!

いやいやと手でぱたぱた動かすがマリアさんの―――が近づいてくる。


いややぁぁ!こないでぇぇ!!


チュ~チュ~ゴクン。


ご馳走さまでした。しくしく。


初めとは違う涙が流れる。赤ん坊としての欲求が抑えられなかった。恥ずかしい。

「きゃわぁぁぁ」

「は~い。サラちゃん。次はけほっとしなさい」

マリアさんは嬉しそうに微笑み、私の背中をトントンしてげっぷをさせる。


そんな私の憤死しそうなほど恥ずかしさを味わっていたらなんだか目線を感じ、みてみると初めに部屋に入ってきた男の子がじーっと私を見ていた。

「ライト、もうサラちゃんにあいさつした?」

マリアさんが男の子に声をかける。あ、ライト君っていうんだ。

声をかけられたライト君はまだ、と呟き私に近づいて微笑んだ。

「サラ初めまして。お兄ちゃんのライトだよ」

―――お兄ちゃんでしたか……。

よろしくねとばかりに小さい私の手をやさしく握る。でも私には少し抵抗があったがすこしだけ握り返した。

私の手も小さいがライト君の手も小さかった。

「あいさつもしたし、サラちゃんそろそろおねんねしましょうか」

マリアさんがまた背中をポンポンとたたく。気持ちがいい。ライト君は私の手をにぎにぎして遊んでいる。


うぅ~眠い。うとうと。


お腹もいっぱいになったことだしお休みなさいと私は目を閉じた。

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