ララハイナの魔水
短いです。次回は長めにします。
「今からお前達の父親に会わせてやろう!
――――と、言いたいところだが実際は見せてやると言った方が正しいか」
ドルフおじいちゃんはガハハと笑いながら私を器の淵から離し机の上に私をのせる。
父親に会わせる?見せる?どういうこと?私が生まれてから今まで一度もお父さんには会ったことがない。でもお母さんやお兄ちゃんが最近子守唄のようにお父さんについて色々な話をしてくれる。
お兄ちゃんやお母さんは私にとって既に家族だ。生前のお母さんもお父さんも弟も大切な家族だけれどこの世界でできた家族も大事な家族だ。そしてまだ会ったことがないこの世界のお父さんも私の中で既に大切な家族だと思っている。
会えるなら早く会いたいし、お父さんがどんな姿をしているか見てみたい。
私はハイハイをしながら器に近づき覗き込んだ。淡く光っている水とお父さんと会わせるという言葉がどう関係しているのかが分からない。
お兄ちゃんも目をキラキラさせて私と同じように器と覗きこんでいる。
「副長!お父様を見せてくれるんですか?」
「ああ、見せてやるとも!ただな、ライト、ちょっとお前さんの血を貰うぞ」
「えっ?血……ですか?」
おじいちゃんが水面に再度手をかざす。そうすると光が消え元の水に戻った。
「この水はな、ララハイナと言われる魔水だ。自分の魔力をこの魔水に移して相手に渡せば相手に自分の現在の姿を見せることができる優れものだ。ただ使用には色々と条件があるし入手が困難だがな。
一度魔水に魔力を移せば魔力を移した者の血、もしくはその者の血縁にしか反応しない。わしがこの魔水に触れればこの水自体が拒絶する。わしだと相手の姿を見せん」
「じゃあ、僕がすればお父様の姿が見えるんですか?」
「ああ、そういうことだ。ただこの魔水は使用限度がある。サラに会えるまで秘密にしていたが今日みるか?」
「はい!すぐにでもサラにお父様の姿を見せてあげたい」
「そうか、わしもサラにウルの姿を見せてやりたい。ウルほどの親ばかはおらんだろう。――――カルマド、準備を」
カルマドさんが10センチほどの小さなナイフをお兄ちゃんに渡し簡単に説明している。
「ライト、血を水に落とすのは一滴だけでいい。その際に血に魔力を移しなさい。マサドーラに特訓されているからできるだろう?マサドーラもこの為に特訓させていたしな」
「だ……だからあんなに魔力の特訓してたんだ」
お兄ちゃーん!!大丈夫?また顔が真っ白になってるよ。本当にお兄ちゃんはマサドーラさんが苦手なんだね。名前聞いただけ遠くを眺めて呆然としている。戻ってきてお兄ちゃん!!
「だぁだぁ<大丈夫?>」
「サラ!僕がマサドーラから守ってあげるからね」
よかった。戻ってきてくれた。
私はお兄ちゃんを慰めるようにお兄ちゃんの頭を撫で―――高さがたりなかったため手をよしよしと撫でて上げた。
「よし!ライト!始めるぞ」
「はい!」
ドルフおじいちゃんが一括するとお兄ちゃんはナイフに手を添える。
おじいちゃんの説明で細かいことは分からなかったけれど、とにかく水鏡のような感じでお父さんの姿をみることができるっていうことは分かった。
私は器に手を添えて水に見る準備は万端だ!
さあ、お兄ちゃんよろしく!!
お兄ちゃんが自分の手にそっとナイフを刺す。少しだけ傷つけた指の先に赤い血が現れた。
「じゃあ、いくね!」
指の先から滴が落ちる。魔水が先ほどよりも強く輝きだす。
輝いた後、某童話に出てくる魔法の鏡のように水面が変化していく。まさにファンタジーだ。
水面に人影が少しみえた。私は更に水面に突っ込む勢いで顔を近づける。早く見たい。
人影がだんだんはっきりしていく瞬間だった。
―――ガッシャーンッッ!!!
水面が弾けた。と、いうより器が破壊された。
え?
デジャブ!?




