表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オモワヌもの  作者: トキ
34/44

扉をあけると



「――サラちゃんようこそ!!冒険ギルド、オリヴルへ!!」




お母さんに笑顔で言われたものの理解するのはとても難しかった。

なぜなら目の前にある建物はどうみても今朝出発した際にみた我が家の建物にしか見えなかったのだ。

あれ?どういうこと?3階建ての白い建物だし。ただ違う点をあげるなら出発前にたくさんいたメイドさんの姿が見えないことくらい。


「う?」

私は意味が分からず首を傾げる。


「それじゃあ、サラちゃん!行きましょうね。皆に紹介しなくちゃ!きっとサラちゃんも驚くわよ」


「そうだね、お母様!きっと泣いちゃうね」


「皆が驚く顔も楽しみね~」


「はい!」


はい、ちょっと待って!なんか聞き捨てならない言葉が現れた気がする!泣いちゃうって何?怖いの?恐いの?私が泣いちゃうような場所に連れていくの?もう今日は十分泣いたよ。なんかこわい!!


「うぎゃぁぁぁ<いやぁぁぁ>」


「サラ!!楽しみなのは分かるけど落ち着いて!落ちちゃうよ!」


「あらあら、サラちゃんはお転婆さんね~」


デ、デジャブー!!なんかセル君の時にも同じことがあった気がする。

嫌な予感が重々するためなんとか抵抗しようとじたばたして脱出を試みたががっちりとお母さんに抱きかかえられて動くことができない。

しばらく続けてみたがもうこれは無駄な抵抗なんだろうと暴れることを止めた。

お兄ちゃんもお母さんもそのまま気にせずに進み始める。そしてお兄ちゃんが扉に手をかけた。既に諦めた境地にいた私はお母さんに抱っこされながら扉をみると今朝出発したときの家と扉の模様が違うことに気がついた。

あれ、ここは家じゃないんだ。でもとてもそっくりだ。真似て作ったのかな?

それに見たことがない文字で綴られた看板も付いている。きっとこの世界の文字なんだろう。


―――ん?文字?


別の疑問点が頭に過ぎる。しかしお兄ちゃんが扉を開け、その開けた先にあるものを見て一気に疑問点が消しとんだ。





扉を開けた先に現れたのは―――――鬼さんでした。


「――きっ」


がっしりとした肩幅と鍛えられた筋肉、見上げるほどの長身、右目上には大きな傷、そして一番特徴的なものは額に大きな二つの角。どう見ても風貌は鬼そのもの。雰囲気は化けのもさながらだ。この姿ならば必ず子供は泣きます!と太鼓判を押せそうなほど恐い。


(こ、恐っ!!――――こわい?)


初めの一瞬は恐怖で叫びそうになったが鬼さんの瞳をみて恐怖はなくなった。何というか好々爺のような、悪戯していますとでもいうような目でこちらを見ていたから。

叫ぼうと思って急に止めたため舌を噛んでしまった。痛い。若干涙目になりながら鬼さんを眺めた。

見た目は恐いのだがなんというか恐さで言うなら今日の黒の物体Xの方が恐かった。それになんとなく私の反応を鬼さんは窺っているのが分かる。

反応がないとみると鬼さんはどかどかと近づき、私の目の前にたった。お兄ちゃんとお母さんは何も言わずに見ている。


鬼さんは両手を上げ途轍もなく恐ろしい形相をつくり出す。


「ばぁぁぁ!!!」


いきなり私に向かって叫んだ。何がやりたいの?どんなに恐ろしい顔をしていても目が笑っているし……恐いけど恐くないよ。


どういう反応をすればいいか分からずただまじまじ鬼さんを見る。


「……泣かんのか?つまらん」


ひどくしぶい声が聞こえた。どうやら鬼さんからだ。

なんだか少し残念そうにしながら私の頭をぽんぽんと叩く。そこでようやくお兄ちゃんが声をだした。


「副長?角まで出してどうしたんですか?」


「ライト、鬼というのは昔の童話にもあるだろう。子供を泣かせることを生きがいにしている生き物だ。サラが初めてギルドにくるって言うからこうして角まで生やして待っていたのに……。サラはちっとも泣いてくれん」


「そうね~泣くかと思ったけど泣かなかったわね」


お母さんがしみじみと言う。


鬼さんは残念そうに呟くと角がだんだん縮んでいきなくなった。収納式ですか?それ。

不思議に思いなんとなく二人を見ても変わりはない。日常的なことのようだ。


「鬼族を舞台にする絵本、僕読んだことがありませんよ?」


「ライト、副長の冗談だから気にしなくていいわよ。それよりサラちゃんの紹介をしていいかしら?」


「おお、そうだった。サラに挨拶をしていなかったな。わしはドルフ・マルクスだ。お前のお父さんの職場の副団長をしている。よろしくな」


お母さんにかわり、抱き上げられる。こちらにみる目は優しげなおじいちゃんである。


「この子は知っているだろうけど、私とウルの子―――サラよ」


「だあぁぁぁぁ<よろしくぅぅ>」


赤ん坊だから伝わらないだろうが挨拶をするとドルフさんは表情が崩れた。


「おお!可愛いな!」


「あたりまえよ。私の子だもの」


お母さんがにこっと笑った。


「さっきから気になっていたのだけれど、どうして誰もいないのかしら?何か問題が起こったの?」


お母さんの疑問に確かにと思った。これだけ広い空間に私達3人しかいないのだ。ちょっと違和感があった。


「ああ、そのことか。今日はサラがくるからこのギルドを立ち入り禁止にしただけだ」






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ