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オモワヌもの  作者: トキ
24/44

ナーシャの笑顔

ちょっといつもより長めです。以前お話と重複しているところがあります。

あと文章がすこしおかしいかも……後で改稿するのでおかしなところは見逃してください。




早朝の占いで兆しを見つけた。

マリア達が到着するのが待ち遠しくナーシャは部屋を行ったり来たりをしているとクルトに笑われた。


「ナーシャ落ち着いて、マリア達が到着するにはまだ時間があるよ」


「うん、分かっているけれどなんだか気持ちが落ち着かなくて……」


「セルディオだって今はすやすやと眠っているよ。君がそんなに落ち着きがなかったらすぐに目を覚ましてしまう」


クルトはまるで年の離れた妹をあやすように優しくナーシャの頭をなでてソファに座らせる。そしてそっとおでこにキスをしてまた頭をなでる。

クルトはいつもナーシャに優しく甘い。ナーシャの生い立ちが関係しているのか、そもそもクルトの性格からくるものなのかナーシャには分からない。でもこの時間はナーシャの心を落ち着かせる大切な時間だった。

出会ったときから変わらない二人の立ち位置。



――――シャラン。



「奥様。マリア様がいらっしゃいました」


音が聞こえたと同時にメイドから到着の知らせがきた。

ナーシャはソファから立ち上がる。気が付いたら部屋から飛び出していた。数年ぶりの全力疾走である。クルトもセルディオも置いてきてしまったが気にせず走る。

セルディオは影達に任せてあるから大丈夫だ。クルトはすぐに追ってくるだろう。


扉を開けてマリアを見た瞬間思わず飛び上がり抱きついてしまった。

それでもマリアは倒れることなく抱きとめナーシャの頭をなでる。こうした所はとてもクルトとそっくりだった。


会うのはナーシャがセルディオを産む前以来。

ウルのことで謝りたかった。そしてなによりセルディオのことで相談したかった。


「―――マリア……」


しかし抱きつきながら気がついた。


ウルに対して謝るのもマリアに対して罪悪感があるからでその謝った後はセルディオの相談。マリアに会ったときでさえ自分のことしか考えていない自分自身に。


自分自身に情けなさを感じナーシャは何を話せばいいのか分からなくなってしまった。

思わず抱きしめたまま固まるナーシャに届いたのは明るい声だった。


「ナーシャ久ぶりね!ウルが遠征に行く前振りかしら~。こんなに大きくなって!」


恐る恐るマリアの顔を見てみればマリアの顔には陰りはなかった。


顔を上げれば以前会った時と同じ温かい笑顔があった。

マリアはいつだって優しくてのんびりしていてナーシャが落ち込んでいる時でもそばにいてくれた存在だ。ナーシャも自然に笑顔に浮かぶ。


「マリア!!久しぶりね!でも身長は1マイリも変わってないわよ!私ずっとマリアに会いたかった。それで謝りたかったの」


姉と妹のような関係だ。暫く会っていなくてもマリアにはナーシャの考えていることが分かったのだろう。にこにこと笑いながらその瞳にはナーシャを気遣う光がある。

ナーシャは以前のように打ち解けることができたこと、マリアの気遣いが嬉しかった。

マリアに抱きついている腕に力が入る。それでもマリアはニコニコと微笑んでナーシャの髪をなでていた。


しばらくそうしていた後ナーシャを追いかけてきたクルトが透かさずマリアから離した。


もっと抱きついていたかったのに、とナーシャが拗ねる様子に苦笑しながらマリアとクルトが挨拶を交わす。この兄妹も会うのは久しぶりだった。





「――――ライト、こっちにおいで」


二人の兄妹が言葉を交わした後、目の前に現れた子供に対して息を止めた。

目の前に現れたのは滑らかな漆黒の髪と吸い込まれそうな黒い瞳をもった赤ん坊だった。


「……黒の使者」


思わず呟いてしまったが周りには聞こえなかっただろう。

セルディオの運命を変える何かが分かった。この子なんだと。


黒の使者は魔力自体を持たない特異な存在。またあまり知られていないが黒の使者は他人の魔力を奪う事ができる。自らでは作り出せない魔力を他から補うのだ。

しかし、この赤ん坊を黒の使者とみていいのだろうか。外見から察するにどうみても黒の使者だがこの赤ん坊には魔力があるように感じられる。


―――黒の使者ではない?


「ライト大きくなったね。そして君が噂の泣き虫姫のサラちゃんかぁ。かわいいな。やっぱり赤子はこうでなくちゃね。うちのセルディオとは大違いだなぁ。はっはっはっは」


考えあぐねているナーシャとは違いクルトは自分の甥にまずは声をかけ、続いて赤ん坊の姪に話しかけている。


クルトは前から知っていたのだろうか?


クルトを見てみれば、一度ナーシャに視線を向けた後再度赤ん坊をみる。


ナーシャもクルトに倣い赤ん坊を見やる。久しぶりにみるライトと初めて会うマリアが産んだ2人目の子供。会ってみたいと思っていた赤ん坊。

ナーシャは一旦考えることをやめ赤ん坊と向き合う。


「セルも十分かわいいわよ。ただちょっとやんちゃなだけで。でもたしかにサラちゃん可愛らしいわ。赤ちゃんって感じね。うふふ」


手やほっぺたを触ると柔らかくてこちらに笑いかけてくれる。

きゃっきゃと笑う赤ん坊――サラは可愛らしかった。何がきっかけで暴れるか分からないセルディオとはちょっと違う。なんというかとても微笑ましい……。



サラの噂について話しているとマリアが切り出した。


「ところで今日はセル君とサラちゃんの顔合わせのために来たのよ。肝心のセル君はどこなのかしら」


「ああ、ついつい家の前で話しこんでしまったね。どうぞなかへ。中でセルディオも待っているよ」


クルトの案内で屋敷に入った。

ナーシャはクルトに引かれながら屋敷に入った後、マリアの横に並ぶ。


本当にセルディオにサラを会わせていいのだろうか?

黒の使者ならばサラ自身の魔力の暴走はないだろうし逆にセルディオの暴走を抑えてくれるだろう。でもサラには魔力があるようにしか感じられない。

魔力をもったサラに会わせるのは危険すぎる。



黒の使者の話を持ち出したのはクルトだった。


「いやぁ、サラちゃんが黒目黒髪とは驚いたよ。僕が黒の使者を見るのも何十年ぶりだろう。ウルにはこのことは伝えたのかい?」


「ふふっ。秘密にしているの。会ったときに驚いた顔を見たいの」


「ウルより僕が先に見てしまったのはますます恨まれそうだよ。ははっ」


「私も驚いたわ。でも嬉しい。黒の使者のサラちゃんが来てくれたことでセルも少しは落ち着くと思うし」


「あらあら。やっぱりセル君はあれなのね。じゃあサラちゃんには早速セル君に会わせましょう」


「ありがとう。マリア。でも不思議。よくよくみてみたらサラちゃんも魔力を持ってるわよね?黒の使者なの?」


「さあ?分からないわ。でもサラちゃんの近くにいると心地いいわ。きっと黒の使者なのだとは思うのだけど……それに黒の使者でなくてもナーシャの子だからサラちゃんと合わせたかったの。それにライトもね」



ナーシャは驚いてマリアをみる。どうやらマリアも黒の使者と確信を持っているわけではないらしい。それでも会わせたいと言っている。


「マリア。いいの?本当に会わせて。別に会わせるのは3歳を過ぎた頃でもいいんじゃないの?」


「大丈夫よ、ナーシャ。サラちゃんは私とウルの子供なのよ。それに幼馴染ってものはやっぱり赤ちゃんの頃から会わせてあげなきゃね~」


「マリア……今日来た理由ってそれ?」


不敵な笑みを見せるマリアにナーシャは呆れる。どこからその自信は現れるのだろうか?でも今日の朝にみた兆しは不穏なものはなかった。このまま会わせて本当に大丈夫なのか?


話しているうちにとうとうセルディオのいる部屋の前にやってきた。

丁度クルトがドアノブに触れた時ナーシャはセルディオから影達が離れるのを感じる。

影達はナーシャの眷属で、人ではなく実体がない。ナーシャ自身そのもの達が何なのか分からない。ナーシャが幼いころから側にいてナーシャを手助けしてくれる者達だったがナーシャを守るというわけではない。そのもの達は危険が及ぶことがあるとナーシャの陰に逃げるのだ。


影達が一斉にセルディオから離れたということは――――



ドォォォ―――ンン!!!!




セルディオが魔力を暴走させていた。

ライトや赤ん坊のサラは音に驚いているようだった。しかしそれだけでサラが魔力を暴走させる変化は見られない。

ナーシャは安堵しながら部屋に入り、セルディオを探した。

セルディオは部屋の真ん中に座っていた。今回も結界の効果のおかげかセルディオの周りは悲惨だがセルディオ自身は大丈夫そうだ。その周辺で魔力の残骸が爆発はしているが結界が守っているし、一度大きな暴走をすれば暫くセルディオもおとなしくただの赤子と言っていいだろう。

ナーシャはセルディオを抱き上げながらあやす。その際どんなに悲しくても不安があってもナーシャの顔には不安の色はない。赤子は親の負の感情を察知し易い。ナーシャはセルディオの前では絶対に泣かないし負の感情の色を顔には表わさないようにしている。


「ごめん。セル。寂しかったのね」


クルトが近づいてくる。その上で抱かれているサラをみた。

サラは大きな目を見開いてこちらを見ていた。驚きと不安を混ぜたような顔。あまり赤ん坊らしくない表情だ。

爆発音に驚いた名残だろうか?恐がっている?

しかし、こちらに近づく際には嬉しそうな声を上げている。はしゃぎ過ぎて抱っこしているライトに宥められている。


サラの表情が気になるところだがナーシャはセルディオを二人に紹介した。


「サラちゃん、ライト君。この子が私とクルトの子のセルディオよ。仲良くしてあげてね」


「はい、ナーシャさん!よろしくねセル君!」


ライトは元気に挨拶してくれた。子供特有の笑顔が可愛かった。


「じゃあ次はサラちゃんの番ね~」


マリアがサラを持ち上げセルディオの顔に近づけた瞬間だった。




「びぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!」




サラはいきなり泣きだした。いや、泣くという表現では言い表せない。とにかくセルディオの側に寄ることを嫌がるように暴れる。


「サラちゃんどうしたのかしら?さっきまであんなに楽しそうにしていたのに」


「ねぇ、マリア大丈夫なの?これってセルディオの魔力が関係しているんじゃ……」


いまのところ魔力の誘発は起きていないがその可能性もある。一刻も早くサラとセルディオを離した方がいいのではないかと思った。

その心配をよそにクルトが笑う。


「違うよ。サラちゃんも女の子だからね。きっとこんなぼろぼろになった部屋では挨拶をしたくないんだよ。初めての挨拶は大事だし」


マリアも同じように笑う。


「そうね。せっかくの挨拶ですもの。ちゃんとした場所で挨拶させないとね。サラちゃんも納得しないわよね~」


「……」


ナーシャはこの兄弟が何をいっているか分からなかった。明らかにサラはセルディオを拒絶している。でも二人はのんびりとこの状況を笑う。


「ねぇ、クルト、マリア。これは嫌がっているのではないの?」


「「そんなことないよ(わ)」」


二人の声がそろった。そういえばこの兄弟は変なところで考え方が同じだった。しかも意見を変えることがないから厄介だった。


意見が決まった兄妹の行動は早い。すぐに隣の部屋に移動しセルディオとサラを少し離れた所で二人だけにする。


離れた場所で紅茶を飲みながらセルディオとサラの様子を窺う。

何だろう?あの光景は。セルディオはサラに興味を示したように近づく。それをサラは逃げるように後ろに下がっている。なんだか野獣に追いかけられる小動物のような―――とてもシュールな光景だ。

それなのに二人はのほほんと話している。


「おや、二人はもう仲良くなったみたいだね」


「そうね、サラちゃんも泣きやんだし、やっぱりさっきの部屋が嫌だったのね~」


それは違うだろうと言ってやりたいが言える雰囲気ではなかった。救いを求めるようにライトを見ればここまで来るのに疲れたのかスプーンを掴んだまま眠っている。

ナーシャはサラに心の中で謝った。


(ごめんねサラちゃん。私にはこの二人の意見を変えることはできないわ……)




ほのぼのとした会話が続くと思ったがクルトが持っているティーカップをテーブルに置いたことによりマリアとクルトの空気が変わる。


「ではマリア。そろそろ本題に入ろうか。今日はどうして来たんだい?」


クルトはテーブルに肘をおいて手を組む。そしてマリアを見据える。


のんびりと微笑むマリアは表情を変えることなく話す。


「あら、そろそろサラちゃんとセル君を会わせたかったから。ただそれだけよ」


ナーシャは二人の会話に挟むことなく二人を見る。


「質問を変えるよ。どうして黒目黒髪の娘を僕らに会わせたんだ?セルディオの状況は逼迫していて黒の使者がいるとわかれば縋るしかないことは目に見えて明らかだろう。」


「サラちゃんは魔力があるけど黒の使者よ。―――クルト、そもそもあなたは知っていたよね。私が産んだ子供が黒目黒髪だったことは。私がサラを産んでも一度も屋敷に現れなかったことが一番の証拠ね。ナーシャに黙っていたのはサラとセルディオを会わせることでサラに危険があることを危惧したから。セルディオを助けるために私の子を危険の晒すことを悩んでいたのでしょう?」


マリアもクルトに向き合う。


「サラちゃんに頼ればいいじゃない。大丈夫よ。サラはただの赤ん坊ではないわ。ウルと私の子だもの。それにナーシャも見たんでしょう。変化の兆しを。だから会わせた。違う?それにセル君は私にとっても大事な甥なのよ。ナーシャとクルトの子を助けたいと思うのは当然でしょ」


マリアは笑う。その笑顔はなんだか子供が悪だくみを考えているような顔だった。


「調べたけれど過去に魔力を持った黒の使者はいなかったわ。だったら一度会わせて確認するのが一番。それに危険が及ぶ前にクルトならなんとかできるでしょ?」


クルトは息を吐く。


「君のその考えているのかいないのか分からない発言にはいつも驚かされるよ。安心して。万が一のことがあれば僕がサラちゃんを守るよ。セルディオもね……」


「初めからそう言えばよかったのよ。クルトは身内のことになると冷静な判断ができなくなる癖どうにかした方がいいわよ」


「ふふっ。マリアは厳しいな」


また和やかな雰囲気に戻る。

ナーシャは知らず知らず張り詰めていた息を零した。



「だすぅわぁぁぁ!!」



会話が一息ついたところ二人の様子を見てみればセルディオが立ち上がりサラは怯えて逃げているところだった。


「あらあらセル君はもう立って歩くことができるのね。すごいわ」


「……マリア。やっぱりサラちゃんセルディオのこと恐がっているんじゃないの?さっきだって叫んでいたし」


「違うわよ~ナーシャ。サラちゃんいつも家ではあんな感じだから安心して」


「そ、そう」


マリアにそう言われてしまえばナーシャは返す言葉もない。



どうやらセルディオはサラを追いかけることは諦めて座り込んでしまっている。一方のサラも疲れたのか少し離れた場所でじっとしている。

今のところ何かが変わったわけではないけれどナーシャは満足していた。

同じ赤ん坊と一緒にいるセルディオを見ただけでもこれからも頑張っていける気がした。

ナーシャはマリアに礼を述べる。


「マリアありがとう。今日何かが起こっても起こらなくてもあなた達が来てくれたことに感謝します」


マリアはティーカップに手を伸ばしながらナーシャに微笑む。


「ナーシャまだお礼は早いわよ。ちゃんと二人を見てあげて」


「え?」




ナーシャはもう一度視線を戻す。二人は相変わらず距離を保っていると思ったがサラの動きが変わった。

サラは空中を見つめている。そして何か捕まえるように宙にむけて手を上げる。

その時だった。サラの手の先が淡く光る。光の粒子が見えたと言うべきだろうか。

光の粒子はサラの周りを彷徨い、蛍の光のように淡く輝いては消える。

ナーシャは驚いて思わず立ち上がる。テーブルの上にあるカップが落ちる。

クルトも驚き目を見開く。


「魔力の可視化!!」


信じられない事が起こった。ナーシャはこの目で見ていても信じられなかった。

魔力は目に見えるものではない。人――高魔力保持者ならば魔力を肌で感じることはできるが目で見ることはできない。力ある特定のエルフ族の者ならば魔力を見ることはできる。しかし周りに見せることはできない。人であるナーシャ達に見えていることは異常だ。


「マリア!どういう事なの?」


「さあ?分からないわ。でも時々ね。サラちゃんの周りで見えることがあったわ。その時決まって周りの魔力が静かに感じられたから黒の使者とはこういうものなのかしらと思って」


「いや、僕は以前黒の使者に出会った事があるが魔力の可視化なんて芸当はできていなかったよ」


クルトは気を落ち着かせるように瞳を閉じた。


「やっぱりサラちゃんはちょっと特殊のようね」


マリアはサラを見つめる。その瞳には子を心配する母の目だった。



サラは先ほどと変わって逃げることを止めたようだ。そしてあれだけ避けていたセルディオを近づく。

また近づくにつれ光の粒子が大きくなる。

部屋の明るさにライトも目が覚ましたようだ。だがその顔には驚きはない。サラが魔力の可視化をすることはライトにとっては日常茶飯事のことだったのだ。いつものように綺麗だねとマリアに伝えて笑う。


サラがセルディオに触れる。

光は一層強くなる。まるでサラとセルディオが輝いているようだった。ナーシャは眩しさに目を閉じる。


――――シャラン。


音が聞こえた。変化を伝える音色。



ナーシャが再び目を開けた時には光は消えていた。

光が消えたと同時にセルディオに感じていた異常なまでに膨らんだ魔力が感じられない。安定と言っていいだろう。


視線の先には赤ん坊同士仲良く口をくっつけている姿があった。

先ほどの神秘的な風景と変わり可愛らしい様子だ。

ナーシャは笑う。これは奇跡ではない。サラのおかげだ。

他3人もサラの行動に呆気にとられているようだ。


暫くしてサラはなにか雄叫びを上げたかと思うと寝てしまった。マリアがサラを抱き上げる。

セルディオもナーシャに抱かれた瞬間安心したように眠りについた。その寝顔は赤ん坊特有の安らかな寝顔だった。魔力を暴走させた後はいつだって苦しそうな顔をしていたのに。

温かい。よかった。ナーシャは涙をぼろぼろと零した。

クルトもセルディオの頬にふれる。

そしてナーシャの涙を掬う。見ればいつもの優しい笑顔があった。

ナーシャは眠っているサラをみる。また涙が落ちた。


「サラちゃんありがとう。ありがとう。セルディオを救ってくれて」


クルトもサラに話しかける。


「サラちゃんありがとう。この恩は忘れないよ」


お礼を言われていることを知らないサラはなんだか魘されるように眠っている。それが面白かった。


「あらら。サラちゃんどうしたのかしら?なんだか変なお顔ね。まあすぐ元のお顔に戻るでしょうけど……。じゃあ、クルト、ナーシャそろそろお暇するわね」


クルトがサラの頭を撫でながら話す。


「マリア今日のことは本当に感謝している。僕も今後のために調べてみるよ。いろいろとね。それにウルは暫く帰ってこないだろう。それまでは僕が君達を守るよ」

「クルトありがとう。でも私はオリヴルのギルド長の妻なのよ。自分達の危険は自分たちでなんとかするわ。でも調べ物についてはお願い。これからなにが起こるか分からないもの」


マリアは不安な顔をしていた。黒の使者は見た目だけでも目立つ。高魔力保持者が多く生まれるこの国では喜ばれる存在だが国によっては価値観が全く違う。マリアがサラの今後を憂うのは当然だろう。


「マリア、私達はサラの味方よ。だってサラちゃんにはセルディオの御大事なお嫁さんになってもらわなくちゃね」


「ふふっ。楽しみね」


「お母様!ナーシャさん!サラにその話はまだ早いです!」


ライトがあわてて声を出す。

そのライトの慌てる様が面白くて笑みが零れる。


セルディオの命を救ってくれたサラを全力で守ろう。




――――シャララン。シャン。




音が聞こえた気がした。








ナーシャの精神年齢は少し幼いです。

それにはナーシャの生い立ちが関係しているのですがそれはまたいつか小話か何かで語れたらいいなぁと思います。


次はラがつく少年のお話です。

これから本当に主人公が出てきません!すみません!!

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