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オモワヌもの  作者: トキ
21/44

出会いました



――――――――ピュッ。


轟音と共に何かが私の横を掠った。

振りぬくと手のひら大の壁のかけらが転がっている。

部屋を見て見れば無残としか言いようがない。

本来クリーム色だったら壁は黒くくすみ、窓、シャンデリのガラスというものすべてが割れている。足元を見れば、高そうな絨毯がぼろぼろ。



一体この部屋で何が起こったの?



落ち着きなくきょろきょろする私とは対照的お兄ちゃんは落ち着いて私を庇うように抱きしめている。

続いて私とお兄ちゃんを抱き上げているクルトさんを見て見ればとてもきれいな笑顔をしていた。

その笑顔恐い。

私の視線に気がついたクルトさんは優しい笑顔を向ける。


「いやぁ、セルディオは本当に元気な子でね。はっはっはっは」


笑ってごまかしているクルトさん。


「セル君元気なのね~」


朗らかに感想を述べるお母さん。


「セル大丈夫かしら?」


発言とは逆に全く心配しているそぶりを見せないナーシャさん。



この惨劇を創り出したのはセルディオ君らしい。

あれ?セルディオ君って赤ん坊だよね?

壁が壊れるほどの元気のよさって何?

皆なんでそんなに朗らかなの?

普段の私だったら既に泣いていてもおかしくないのにあまりにも状況が掴めないため泣くタイミングを逃してしまった。




和やかなムードでお母さんやナーシャさんが部屋に足を踏み入れていく。


部屋に入ると半壊状態の部屋の中、無事な範囲があることに気がついた。

その範囲だけ円を描いたように部屋から切り取られているみたいだった。その場所をに目をやると中央に何かがいるのが分かる。


――――あれなに?


何かがいるのは分かるけれど、それが何なのか分からない。

大きさでいうなら赤ん坊サイズである。けれどもどうしても赤ん坊に見えない。

例えていうなら黒い靄もしくは何万体も黒い微生物を集めた物体Xは中の核のようなものがあり、それが動けばその周りの靄も別々の生き物のようにうごうごと動く。


――――おばけ?


しかも黒の物体Xとは別に部屋中に黒い靄が漂っている。

部屋に漂う黒い靄は拡がったり、縮んだり、または小さく集合して固まるように動く。そしてある程度の大きさになると、バチッという音を出し先ほどの爆発よりも小規模な爆発を発生させる。


こ、恐い!!な、なんなの!あれは!!黒い物体Xぅ!!


部屋の隅々までみたがセルディオ君らしき赤ん坊がいない。


じゃあ、あれがセルディオ君?

……いや、あれ違う!!絶対違う!!

私はあの黒の物体Xを赤ん坊とは認めないぞ!


私が物体Xを凝視しているとその視線を感じたように動いた。一緒に周りの黒い靄がぶあっと広がる。



「ぴっっ!!<ひっっ!!>」



思わず悲鳴がもれる。あ、赤ちゃんが悲鳴を上げるのはおかしいかな。

でも恐いもん!恐怖だよ!ホラーだよ!!

きっと赤ん坊だって悲鳴を上げるに違いない!!


黒の物体Xにナーシャさんは近づき、こともなげに抱っこした。

抱き上げた瞬間黒い靄はナーシャさんの体にもじわじわと絡みつく。ナ、ナーシャさん大丈夫?


「ごめん、セル。寂しかったのね」


ナーシャさんはあやす様に左右に動いている―――とうとう顔まで黒い靄につつまれてしまった。そしてナーシャさんに続いてお母さんも側に寄って物体Xをなでている。


「あらあらかわいいわねぇ。セル君マリアよ。よろしくね」


―――いやぁぁ!お母さんやめてぇ!触ったら絶対危ないよ!

どうしよう!一刻も早くこの場から逃げ出したい!

しかし、私はお兄ちゃんに抱っこされ、さらにお兄ちゃんはクルトさんに抱きかかえられている状態だ。う、動けない!!

クルトさんもやはり黒の物体Xに向けて進む。

やめてぇぇ!いかないでぇぇ!

助けを求めてお兄ちゃんに力強く抱きつく。


「おにゅあぁぁたちゃぁぁ!!<お兄ちゃん助けて!!>」


「サラ!!楽しみなのは分かるけど落ち着いて!落ちちゃうよ!」


お兄ちゃんは私の背中をトントンと叩いて落ち着かせる。

お兄ちゃん、いい笑顔だ!!でも違うよ!全然伝わってないよ!



「だぁぁぁぁ!」



私がお兄ちゃんの腕から脱出を試みている間についに黒の物体Xの正面まで来てしまった。

うん、近場でみるとよく分かる。これは絶対赤ん坊ではない。

ナーシャさんを包んだ黒い物体Xから声が聞こえる。


「サラちゃん、ライト君。この子が私とクルトの子のセルディオよ。仲良くしてあげてね」


「はい、ナーシャさん!よろしくねセル君!」


当たり前のようにあいさつをするお兄ちゃん。

隣にいたお母さんが私に笑顔を向け、お兄ちゃんからお母さんの所に移動された。

お母さんは私を掲げる。



「じゃあ次はサラちゃんの番ね~」



お母さんの声が遠くで聞こえた気がする。



ひぃぃぃぃ!誰か助けてぇ!!





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