はじまり
「きゃぁぁぁ!」
「どういうことだ!!!」
「失敗かっ!!」
「黒の使者だと!殺せ!!」
「……何故」
辺りでは驚愕と絶望の声が混ざる。
――――その空間の中で異質存在、高橋更紗はよく状況を把握してはいなかった。
彼らの声が自分に向けての声だとは分かる。でも何故?
さっきまで学校を行く途中だった。別になにか交通事故にあったとか、穴に落ちたとか、何もない。ただ歩いていただけなのだ。
気がついたら大きな空間の真ん中に立っていた。周りにはたくさんの人たちがいる。
まず目に入ったのはドラゴンの形を模した大きなエンブレム。見たことのない服装をした人たち。中世のヨーロッパにありそうな服。見たことのないカラフルな髪の色。
混乱している頭で今の状況が自分にとって最悪な状況と言うことは理解できる。
「――――殺せ。」
集団の中でも取分けて身分が高そうな服を着た男が言うと兵士らしき数人が前にでた。
「―――あいつを殺して」
集団の中でも小柄な少年が憎しみを込めた眼で更紗にいう。
逃げなければいけないことは分かっている。しかし向けられる殺意に足がすくんで動かない。
そうしている間にも兵士は更紗の目の前にきて剣を振り上げた…。
――――どうして?