到着
「たちゃにゃぁぁぁぁぁ!!!<たすけてぇぇぇぇ!!!>」
数時間前の私を殴りたい!どうして出かけることを拒否しなかったのか!!
私今まで勘違いしていました。
―――赤ちゃんとはか弱い者。
―――赤ちゃんとは可愛くて庇護欲が湧くもの。
間違っていました!本当に間違っていました!
私今では赤ん坊だから同じような存在がいるって嬉しかった。会ってみたかった。でもそれは可愛くて私の癒しになってくれるかなって思ったからで断じてこんな恐ろしいのものに会いたかったわけじゃないわ!!
あ――。遠くでお母さん達が微笑んでらっしゃる!
ちょっとまって!お母さん!お兄ちゃん!たすけてぇぇぇ!!
「ひぎゃぁぁぁぁ!!」
―――どうしてこうなった!
数十分前にさかのぼる。
私はお母さんに連れられて馬車に乗ったがすぐに赤ん坊特有の睡魔に襲われ寝てしまった。もうちょっと馬車も堪能したかったのに目が覚めたのはおうちとは違う雰囲気をまとった大きな御屋敷の前だった。
バラのようなアーチを通り過ぎ出てきたのはレンガ造りの御屋敷。
お母さんとお兄ちゃんが馬車からでて、その美しい風景に私は目を奪われた。
メ、メルヘーン!なんなのこの御屋敷!私の家もすごいけど、こっちもすごい!!
タダでヨーロッパ観光に来ているみたいだ!
感動して雄たけびを上げる私に構わず、出迎えに来たメイドさん達が頭を下げる。
あれ?そういえばお母さん達って西洋でいうところの貴族なのかな?でもお母さんギルドとかなんかファンタジーチックなことも言っていたよなぁ。なんか本当分からないことが多い。
「マリア!!」
「ナーシャ!!」
声が聞こえた瞬間のお兄ちゃんの対応がとても速かった。お兄ちゃんはお母さんに抱えられた私を奪取し自分で抱っこし、なお且つ、お母さんからさりげなく距離を置く。
おぉっお兄ちゃんまだ4才なのにすごい!
お兄ちゃんに感動した私が次に見たのはお母さんにタックル――ではなく抱きついている少女だった。
「ふぇ?」
私の間抜けな声が響いた後。
「ナーシャ久しぶりね!ウルが遠征に行く前振りかしら~。こんなに大きくなって!」
「マリア!!久し振り!でも身長は1マイリも変わってないわよ!私ずっとマリアに会いたかった。それで謝りたかったの」
「なにも謝る必要がないわ。もしかしてウルの遠征行きのことだったら謝ることじゃないわ。あなたは初めての出産だったのよ。当然クルトが側にいなきゃいけないのは分かりきっていた事じゃない。私もかわいい妹が寂しい思いをするのはいやだわ」
「~……マリア!!」
号泣である。お母さんに抱きついている少女はとても愛らしかった。ふわふわとした明るい茶色の髪に鮮やかなエメラルドグリーン。もし森で出会っていたらきっと妖精だと勘違いしそうな容姿なのにとても残念だ。すんごい美人なのに。今はお母さんを倒さんとばかりにへばりくっ付いている。……すごい。
「ナーシャ。ちょっとは落ち着こうね」
「――ひっく。あ、クルト」
続いて現れたのはこれまたどっかの映画に出てきそうな美丈夫。薄い金髪に濃い紫の瞳。口調が優しげなところから顔に現れているよう人もこれまたすんごい美人―――は透かさずお母さんからナーシャさんをはがす。……すごい。
わぁ―――なんか私が見る人間みんな美男美女多くない?