出発
「……お母様、セル君ってだれですか?」
「ライトも会ったことなかったわね。サンアストロのナーシャの子供よ。
同じ時期に生まれたからサラのお友達になってもらおうと思ってね。
サラもこの家から一度も出したことがなかったし、そろそろお出かけしてもいい頃だし。ライトもサラとお出かけしたいでしょ?」
「うん!」
えっ!!私外に出れるの?
今私の生活範囲ってホントに限られてるんだよね。私が知っているのはこの部屋とこの部屋に繋がっているベランダだけ。まだこの家も把握してないんだよね。まぁ寝るか泣くしかやってなかったから別にあまり気にしなかったけど。
お兄ちゃんもさっきまで顔真っ白にしていたのにもう今では顔をキラキラさせている。
かわいいなぁお兄ちゃん。私もわくわくしてきた。
それにセル君かぁ。私と一緒の赤ん坊だから可愛いだろうな。会ってみたい!
「あきゃっきゃい!<会ってみたい!>」
「サラちゃんも楽しみなのね~
私も楽しみよ。あぁ早くサラちゃんのこのきれいな黒髪もぱちぱちの黒いおめめもナターシャやギルドのメンバーに自慢したいわ。きっと黒の使者だってことでもみんな驚くわ」
「そうだね!お母様!きっとみんな驚くね」
「ふふっ」
「――――きゃ?<え?>」
また出た。黒の使者。
いったいなんだろう?黒の使者って。私が生まれてきてからもたびたび黒の使者という言葉が出てくる。でも、その言葉がでたとしてもその発言には悪意も殺意もない。何というか珍しい奴がでたって感じかな。私が殺されたのは黒の使者だからではないのか――?
お母さんは自慢っていっているし恐ろしいことにはならないはず。
というか、私って黒目黒髪なんだ。お母さんもお兄ちゃんも金髪だから私も金髪なんじゃないかって少し楽しみにしていたのに……。
私、小さい頃からから西洋のお人形やお姫様の金髪碧眼にあこがれがあったんだよね。
ん、でもいきなり日本人の顔で金髪碧眼は嫌だ。
あれは西洋の顔だから可愛いと思うし―――あれ?私の顔ってどんな何だろう?まだ一度も鏡見たことないな。
いろいろと疑問点がでている私に構わず、お兄ちゃんたちは楽しそうに出かける準備をしている。
「ねぇお母様。やっぱり馬車を使うの?」
「ええ、そうよ。本当は歩いていきたいのよね。なのに、メイドのラダやアルカを筆頭に奥様を外に出すのは危険っていって許してくれなかったのよ。心配し過ぎよ。酷いわ」
「……うん、僕もそう思う(ラダ達の意見に)」
お兄ちゃんが複雑な顔をしていたけど着々と準備は整えられていった。
「ふにょぉぉぉぉぉぉ!!」
でかい!でかい!すごい!なんとわが家は大きかった。屋敷と言っていいほどに。
なんなの、この家!マンション暮らしだった私にはハードルが高い!!
しかも外に出るまでに沢山のメイドさん達がいた。どうやら私が見たことのあるメイドさんは私専用だったらしい。
すっごい金持ちなんだなぁ。
3階建ての白い御屋敷だ。そして目の前に広がる整えられた庭。屋敷は表と裏というように二つ連なっている。この8ヶ月間気がつかなかったなんて、なんて勿体ないことをしていたんだろう。
今の私は首も据わってハイハイもできるようになった。これならお出かけ後に探索するのもいいかもしれない。
「サラちゃん元気ね~。さあ、馬車に乗ろうね」
「まにゃぁぁぁぁ!<まってぇぇぇ!>」
抱っこしているお母さんは興奮している私に微笑みながらもさっさと馬車に乗りこんでしまう。ああ、もっと見たかったのに。
お兄ちゃんもお母さんに続いて馬車にのる。嬉しそうな顔だなぁ。
まだお家見たかったけど、取りあえず―――――
しゅっぱ――つ!!