おもいだすのは
また再度主人公視点。
夢をみる。この夢はいつも曇った空が覆っている。
「…あ――――――か―――」
「―――――や――」
誰かが泣く声が聞こえる。
「――更紗が帰ってこないのはきっと家に不満があったんだわ」
「加奈。落ち着くんだ」
「ねぇ。あなたこれは家出よね。あ、あの子も落ち着いたらきっと戻ってくるわよね」
「……加奈」
「だってだってそうでしょ。あの朝だっていつもと同じように――――だって、なんにも更紗は言ってなかったわ。きっとなにか悩みがあって、でも私は和樹の世話ばっかりで……だからちょっと出かけているだけなのよ。
だってそうじゃなかったら何なの。更紗がもう二度と戻ってこないなんてあるわけがないわ!」
「加奈!落ち着け!身体に障る。警察にも届け出を出したんだ。きっと見つかる」
すすり泣く声が聞こえる。
――――――ごめんなさい。お母さん。お父さん。
二人が見えなくなる。どんどん灰色に染まる。
ごめんなさい。もう帰れない。死んでしまってごめんなさい。
突然いなくなってごめんなさい。
ごめんなさい、ごめんなさい。
私も家に帰りたいよ。
「ふみゃあぁぁぁぁあぁ」
久しぶりに見た夢は私がいなくなった後の家族の夢。今回はもしもの夢。
本当はこうではないかもしれない。
でも私はみてしまう。私――更紗の家族の夢を。
会いたいと思っても会えない家族。大好きな家族の夢。
その夢の終わりは決まって灰色。曇った空の灰色。
「サラどうしたの?お腹すいたの?」
曇った灰色が晴れ、まっさらな空色がみえる。きれいな空色は私の顔を除く。
あっお兄ちゃんだ。
「ふぎゃぁぁぁぁん!!<お兄ちゃぁぁぁぁん!!>」
今回の夢はかなり辛かった。
夢の中なら会えると家族の夢を見たときは嬉しかった。でも後は苦しいだけで。
何度もいうけど私は思い悩むのは苦手だ。マイナス思考になるのは苦手なのに、どうしても引き摺ってしまっている。
悲しくて悲しくて嫌なのに思い出してしまうのはどうしてなんだろう。
どうして考えてしまうんだろう?
――――だから
「サラ?」
「みゃぁぁぁ!!」
だからお兄ちゃん慰めて!もうやばいの!私の心は繊細なの!今すぐ癒しを所望する!