表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オモワヌもの  作者: トキ
15/44

出てきたものは

登場人物がたくさんでます。




トーラトーイが戻ってきた頃には既に遠征メンバーは起きているようだ。




「おかえり。トーイ」


戻ってきたトーラトーイに第一声を伝えたのはマサドーラだった。

マサドーラはニヤッと笑う。


「ジェノクがしばかれていたぞ。お前を好き勝手に行動させてって」


ジェノクは本日トーラトーイと一緒に見張りを任されていた者の名だ。

ジェノクは赤髪に茶目をしている少年で、確かにこの場にあの鶏のとさかのような赤髪が見当たらない。


そもそもジェノクはこの遠征の中で一番の最年少だ。メンバーに比べたら経験もあさく、トーラトーイの行動を阻めるわけがないのだが、只今機嫌が地に落ちているギルド長には関係なかった様だ。


「今日の朝は朝焼けは綺麗だったからね。仕方ないよ。私を止められなかったジェノクが悪い」


「本人にもそう言ってやれ。それよりもあれをどうにかしろ」


マサドーラはそう言いながら指さす。指差した先には今にも人を殺せそうな雰囲気のギルド長がいた。





トーラトーイはギルド長をみる。ウルを簡単に言葉で表すなら狼のような男と言えばいいだろう。

ダークグレイの髪に深い藍の目をし、全体的に威圧感を与える男だ。


トーラトーイはなにも言わずギルド長の前に進み、黒い繭をおろした。





「――――――捨ててこい」



「せっかく拾ってきたのだから捨てませんよ」



「……」


ウルの眉間に皺がよる。今日のトーラトーイの勝手な行動はよくあることだからまだいい。問題は拾い癖があることだ。

特に森を通る時はエルフの役目といっては森の声に従い厄介なものを拾ってくる。

しかもその拾ったものをトーラトーイは面倒をみない。決まってその拾いものの被害に遭うのは周りの者なのだ。




トーラトーイは普段は仕事ができるはずなのに森入れば問題を起こす厄介な人物だった。






「ト―イ。この黒い物体はほっとくとしてもお前、なんか俺に伝えることはないか?」


「いえ、特にありません。それよりグラムはいますか?」


「…おまえ―――」


「はいはい。いるよ~」


血管が切れそうなウルを横からのんきな声をした男が顔を出した。


「グラム。空気読めよ」


「だってサイル。呼ばれたら返事をする。これ鉄則だよ」


グラムと呼ばれた男はニコッと笑う。

グラム、サイルといわれた二人はどちらも頭に布を巻いている。しかも二人とも似たような顔立ちをしており、すぐに兄弟と言うことが分かるだろう。

巻かれた布の隙間からグラムはオレンジ色、サイルは黄色の髪が揺らいでいる。瞳はどちらも深緑だった。

見た目は似たような二人だが雰囲気は全く違う。兄のグラムは口調から分かるようになんというかフランクなイメージが付くが弟のサイルはどこかぶっきらぼうなイメージを連想させる。



「で、ト―イどうしたの?この黒い繭。ラクガイハの幼虫でしょ?ここまで大きいのは初めてみたよ」


「精霊がこの繭を助けろと言ってるんだ。でも何から守ればいいのか分からない」


「う~ん。ちょっと触ってみてもいい?」


ああ、とトーラトーイは答え、黒い繭を見せる。

グラムは虫を使役することができる。虫には本能的な意思しかない。その意志を読みとりながら自分の意志を混ぜて操るのだ。


グラムは黒い繭に触る。自分の意志をつなげるために額を繭に付けた。


トーラトーイはその作業を見ながらウルをみる。

ウルは先ほどまでの威圧感を収めていた。トーラトーイの毎度の行動に慣れてしまったのだろう。

それに森の意志に背くことをすれば逆にこの遠征の遅れになる可能性もある。

ただ機嫌が悪そうにタバコを吹かしていた。


「―――あれ?これなんか違うよ。これ虫じゃない」


「は?どういうことだグラム?ラクガイハの幼生じゃないのか?」


「うん。これはなんというか…ひと?」


「意味が分からん」


トーラトーイは黒い繭の傍から離れない精霊をみる。精霊は同じ言葉しか言わないが確かに人を関わった色をしているのだ。中に入っているのが人と言われたら確かにそうなのかもしれない。




「―――切ってみればいいじゃないか」



声を発したのはササカだった。ササカはサンアストロの副ギルド長でありこの遠征チームの副リーダーでもある。この男を表すとすれば獅子だろう。猫よりも気まぐれで強い猛獣といったところだ。

癖っ毛のような銀髪は風で揺らぎ、紫の目が愉快そうにこちらを眺めている。



「まってください。ラクガイハの幼生だったら切れば死んでしまいます」



クックッと笑う声が聞こえる。



「虫、ではないんだろう?」



「……」



トーラトーイは止めることは不可能だと悟った。ササカは切る気満々である。この男は一度興味を持つと面倒なのだ。止めることができない。

だが、このまま森の声を聞いて何もしないのはいけないしササカの言うように中身を確認した方がいいのか。


ササカは飄々と黒い繭に近づく。

右手に大きなナイフを持つ。


「じゃぁ、中身は何かな?」



ニヤッと笑ったあと勢い良く黒い繭に刃を刺した。


ブチッズリズリ。


辺りには生々しい音が響く。刺した部分からササカは躊躇うことなく手をいれ中のものを引きずりだした。


「――――ほう」


ササカは笑う。






―――――出てきたのは傷だらけの少年だった。













評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ