みつけもの
「―――――捨ててこい」
わがギルド長が放った一言には殺気が孕んでいた。
トーラトーイは目の前の物体をみる。
目の前に広がるのは黒い物体だ。大きさは人一人分あり、周りを黒の繭で覆われている。
他のギルド員には見えていないだろうがトーラトーイには黒い繭の周辺に精霊の卵達が集まり変化していくのが見えた。
トーラトーイは気にせずにいう。
「せっかく拾ってきたのだから捨てませんよ」
ギルド長―――ウルの眉間に皺が3本増えた。
トーラトーイが向かった先あったものは歪んだ黒い繭だった。
「……これの何を助けろと?」
この黒い物体はラクガイハという魔蝶の一種だ。さすがに人ひとり分の大きさのものは初めてみたが別段森にいても不思議ではない。この時期にはよく見かける光景だ。これの何を助けろ言うのか?
近づき見てみると助けを呼んだ精霊は黒い繭の側にいた。
ただ生まれたばかりのようで同じ言葉しか発さない。ただ黒い繭に影響されたのか黒く光ったものがふよふよと浮いている。
トーラトーイは迷った。何をすればいいか分からないのだ。
精霊がとても焦ったようにトーラトーイに訴えかける。
エルフとしては森の精霊に協力するのは当たり前のことだ。だが精霊が伝えたいことが分からなければ動きようがない。
しかもこの精霊は明らかに人が元で産まれてきている。
「まぁとりあえず持って帰るかな」
ギルドには虫に詳しい奴がいた。そいつに聞けば何か分かるかもしれないと思い、持ち帰ることを決めたのだった。
こうして本日のトーラトーイの散歩は終わった。