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オモワヌもの  作者: トキ
13/44

さんぽちゅう




音が聞こえる。


トーラトーイは森の声が流れてくるのが分かった。


森の声は精霊の卵の音だ。


植物や虫は明確な意志はない。ただ本能で生きているだけ。それは一つ一つでみると小さなものだが集まればおおきな意思となる。

その集合体が精霊の卵となり精霊が産まれてくるのだ。


早朝はその森の声が大きくなる時――――精霊の卵が生まれやすい時間帯なのだ。


トーラトーイはこの時間が特に好きだ。自然と歩く際に鼻歌がでてくる。


精霊の卵たちは近くの意志とくっつき大きくなる。音は繊細で色は集まって大きくなっていくとより華やかな色になる。ただこの色たちは常人が見るのは難しい。トーラトーイの種族ではこの色や音を知覚できて初めて一人前と認められるくらいだった。



景色を楽しみながらけもの道を進んだ。獣でも四苦八苦しそうな道をトーラトーイはすいすいと動く。


しばらく進むと開けた場所にでた。見渡す限りの湖だった。



「おぉ――――これはいいね。とっても綺麗だね」


トーラトーイの耳が少し動く。


人に荒らされていない森は綺麗なのだ。人の意志は強いから近くに人が通っただけで精霊の卵の色は変わる。関わって悪いというわけではないが人に関わっていない精霊の卵の方が澄んだ美しい色をしているのだ。

トーラトーイはしばらく湖の前で佇み精霊たちの変化を楽しんだ。

……日ごろのギルド員のやり取りもこの風景を見るだけで全てが許せそうだ。

そう思うくらい湖は美しかった。


だがあまり長居はできない。トーラトーイの存在にも卵たちは変わってしまうから。



しばらく見ていたいが自分はこの森にとってはよそ者でもあるのだ。あまり関わってはいけない。

そう思いトーラトーイは踵を返す。




―――――――誰か。




声が聞こえた。

産まれたばかりの精霊の声だ。

トーラトーイは訝しむ。おかしい。何かがおかしい。精霊には意志があるがそうそう相手に伝えてこない。しかもこの森にとってはトーラトーイはまだよそ者なのだ。

道を歩くことは許しても助けを求めることはしてこないだろう。




――――――お願い。このこを。



その声をきいてトーラトーイは動く。声はトーラトーイのいる湖から少し先だった。

これは人に関わった精霊の声だ。人に関わり産まれた精霊だ。




トーラトーイは声のある方へ足を速めた。





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