おにいちゃんは
マサドーラさんはどうやら数日間ここで過ごしたらまたお父さんの所に戻るらしい。
って、いうよりお父さんっていたんだ。
私はここに産まれてきて出会ったのはお母さん、お兄ちゃん、あとはなんかメイドさん?みたいな数人くらいだった。
死んだときのことや日本のことを思い出すのに忙しくてこちらの人たちのことに関心が全くなかったからお母さんとお兄ちゃん以外はすべてがおぼろげにしか覚えていない。
お父さんって存在があることすら忘れてたよ。
もう私がここにいて3カ月はたった。その3カ月の間にお父さんは会いに来なかったけど、ぬいぐるみをマサドーラさんに託すくらいだから私のことを気にかけてくれているのだろう。
こっちのお父さんにも会ってみたいな。
ぬいぐるみは今私と一緒にゆりかごの中に入れられている。お父さんがくれたこのぬいぐるみは本当に不思議だ。中に精霊が入ってるって言っていたな。私が触ると色が変わるくらいで動くことも話すこともないけど、確実に生きているのが分かる。なんか私と一緒にいることがうれしいって言っているような感覚、喜んでいるのがよくわかる。
あぁかわいいな。愛い奴、愛い奴。
「ふにゃにゃぁ!」
「サラちゃん本当に気に入ったのね」
お母さんも嬉しそうだな。でもお母さん、なんかのほほんとしているけどお兄ちゃん大丈夫なのかな?
だって裏庭に今埋められているんでしょ?お母さん、お兄ちゃんのところに行ってあげなくていいの?
マサドーラさんもお母さんも私のゆりかごのそばで優雅にティ―タイム中だ。
二人は楽しそうにおしゃべりをしている。
「そういえば遠征中におもしろい子供を拾ったよ。ト―イが道中で見つけてな。たぶん戦争の孤児だとは思うんだが上品な仕草でな。あと魔力がかなり強かったな。傷だらけでどんな姿をしているか分らなかったが目は綺麗だった」
「じゃあ皆が戻ってくるときにその子もうちのギルドに?」
「いや、サンアストロのササカが気に入っていたからそっちが引き取るだろう」
「そう。でも会える機会があるわね。楽しみにしてるわ」
ゆっくり会話がはずんでいる。だ、だからお二人さん。お兄ちゃんほっといていいの?
そう思っていたらドアを開く音が聞こえた。
いま私はゆりかごの中にいるから状況は分からないけど入ってきたのは絶対お兄ちゃんだ。
ヒック、ヒっクと鼻をすする音が聞こえる。
「ライト遅かったな」
「あらあら、泥だらけね~」
「………」
お、お兄ちゃーん!!大丈夫なの?くそぉ!ゆりかごの中だからどうなっているか分からない。
お母さーん!! 抱っこ!!だっこぉぉ!!
「ふにょにょ~!!」
「サラちゃんもお兄ちゃんが気になるのね~」
思いが伝わったのかお母さんが私を抱っこしてくれた。ようやくお兄ちゃんが見れた。
あ、お兄ちゃんぼろぼろだ……。
いつも私を慰めてくれるお兄ちゃんは4歳と思えないくらいしっかりしていたのに今の姿はまだ本当にちっちゃい子供なんだなって思わせるくらい頼りない。
綺麗な空色の目が今では真っ赤だ。
そんなお兄ちゃんを私が慰めなくてはと私はお母さんに訴える。そばに行きたい!
「はいはい。わかってますよ~」
さすがお母さん!お母さんはお兄ちゃんのそばに私を近づける。
私はそっとお兄ちゃんの頬の手をあてた。
「だあぁだあぁ<だいじょうぶ?>」
「――――サラ」
そうするとお兄ちゃんの目がまたうるっとした。
「ライト情けないぞ。妹にそんな姿みせていいのか?」
兄弟の感動の対面を水をさすようにニヤニヤとマサドーラさんが笑っていた。
うん。この人絶対性格わるいわ。
「だあぁぁぁぁ!!」
私はマサドーラさんに抗議の声をあげた。
いきなり声をだした私に少しマサドーラさんは吃驚したみたいだけど変らずにニヤニヤ笑っている。
お兄ちゃんはマサドーラさんのことを見ないようにしていたみたいだけど勢い良く顔をあげ、マサドーラさんを睨みつける。
なんかお兄ちゃん目がギラギラしているよ。
「サラ。僕がこの魔女から守ってあげるからね。僕つよくなるよ」
おお~お兄ちゃん!かっこいい!!
まだお兄ちゃんはマサドーラさんを睨んでいる。
私はそんな2人の間でお兄ちゃんのカッコよさにキャッキャと喜び、お母さんはお母さんであらあらと微笑んでいた。
なんか一番すごいのってお母さんじゃない?