あの日の女の子
短いですが…
6歳の師走のある日、私はお父さんとお母さん、そして叔父さんと叔母さんを交通事故で一気に失った。
4人は年末の買物をするために、一台の車に同乗して隣町の大型ショッピングモールに出掛けていた最中のことだった。
私は年末によくやる、アニメ一挙放送とやらに夢中になっており、テレビの前から頑として動こうとしなかったため、冬休みで暇だった大学生の和ちゃんと二人でお留守となってた。
鮮明に覚えているのは、しつこく鳴る電話の音と、といまいいとこなのにうっせーなあ、と不機嫌そうに呟く和ちゃんの声。
そこからは、全てがまるでアニメの早送り再生のよう。
私を抱えて走り出した和ちゃんの背中越しから見えたテレビ画面。
白い部屋に白い両親。
怒鳴るかずちゃん。
お母さんの顔にかかった布を取ろうとした手を握って止めた、看護士さんの震えた手。
しんじゃったの?と聞いた時の和ちゃんの辛そうな顔。
全部が全部、コマ送り。
あっという間に、私は白黒の葬式会場にいた。
「カワイソウにねえ」
「カワイソウだな」
「小さいのに、こんなにキジョウにふるまってなあ…」
「これからどうするのかね?」
「タイヘンよね、ミヨリもないみたいだし」
「そうなのか?カワイソウに、タイヘンだなあ」
周りの大人が何を言っているのか殆どわからなかったのだけれど、耳年増だった私には、何となく「カワイソウ」な自分には行き場がないことだけはわかってしまっていた。
ただただ、呪文みたいに降り懸かってくるカワイソウに、押し潰されそうだった。
助けてとお父さんとお母さんに泣いて縋り付きたくても、それがもうできないことが、だんだんにわかってきて、それはもう地獄のように辛かった。
―――そんな、すすり泣きや、ヒソヒソ話が絶えない中。
和ちゃんはそんな私の手を握ってこう言った。
「おい、チビ。
お前明日から、俺の家に住め!わかったか!!」
周りの大人達に宣言するような大声で言われたそれは、大学生で20歳になったばかりの和ちゃんにはあまりにも無謀な発言だった。
いくら成人しているとはいえ、一人っ子で育児経験もなく、実家暮らしで一人暮らし経験もなく、女の子にモテるためだけの日々を送っていた(あくまで想像だが、正解だと思う)典型的な『遊んでる』大学生の和ちゃんが、6歳の私を抱えて生きていくなんて到底不可能に思われていたからだ。
周囲から見れば、さぞや不安要素だらけの、若造の思いつき発言に映っただろう。
だけど
「おいチビ、返事は!?」
だけどあの時の私には
「うん!なな、かずちゃんとすむ!!」
その言葉が何よりも心強く感じられた。
あの日から、私と和ちゃんは二人っきりの家族になった。
一応名前はつけてあります。
チビ(なな)…藤川七瀬(6)
かずちゃん…藤川和哉(20)
設定や描写等に矛盾点きっと、いや絶対ありますが…どうか生あたたかく御指導の程よろしくお願いしますです。




