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全ては次週のために!

作者: 緑月

「次週、ついに全貌が明らかに!って、先週もそんなこと書いてあったじゃねえか! なんも明らかになってねえよ!」



 毎週、楽しみにしている漫画雑誌の中で、特に楽しみにしている漫画が、あたかも次週に何か超展開が待っているような、もはやお約束と言っていいほどの引きで今週も終わり、先週から楽しみにしていた俺は、モヤモヤ感が増すばかりだった。



「くそぅ、どんだけ俺を焦らすんだこの作者は…。先週と今週で全く話が進んでねえじゃねえか…。」

「どうしたの、お兄ちゃん? さっきからブツブツ独り言いって。キモいよ?」



 俺が一人、今回のことについて苦悶していたとき、いつきたのだろうか? いつのまにか隣には妹がいた。



「ねえ、読み終わったなら貸してよ、それ。終わってないなら早く読み終わってよね。私も気になってるのがあるんだから。」



 ちっ、なんて可愛いげのない妹だこと。兄がこんなにも苦悩しているというのに、心配するそぶりどころか、あまつさえ実の兄をキモい呼ばわりとは……。だが、許そう! まだ俺のことをお兄ちゃんと呼んでるからな。親友なんか『おい』とか『カス』呼ばわりだからな。それに比べたら、まだ俺は生きていける!



「ほらよ。もう大体、読み終わったからいいよ。」

「ありがと。………え~、なにこれ~? 話が進んでないじゃん」

「そう! そうなんだよ、妹よ! わかるか? この兄の苦悩が!」

「あ~、それでさっき変顔してたんだ。ん~、まあ分からないでもないけどねぇ。」



おお! 分かってくれるか? この気持ちを。さすがは我が妹だ!

でも変顔て何気に酷くない?



「そうなんだよ! もう兄は、次週が気になって気になって、明日から期末試験の準備期間になるというのに、試験に向けて勉強が手に付かんのだよ。本当だったら、今週で超展開を迎えて、自分の中で一つの区切りが出来たはずなのに!」

「そんな大袈裟な……。あと口臭いからあまり顔近づけないで。」「では、妹よ! お前は、次週の話が気にならないのか? もし次週も、今回のような何も進展もないような内容だったらどうする!?」

「いや、そりゃあ私も気になるし、次週もそんなんだったらイヤだよ? でもさ、どうしようもないじゃん。てか今のダジャレ? 怖っ」

「そう! どうしようもないから、このモヤモヤが晴れないんだ!」

「はぁ……。まあ私としては、そこまで必死じゃないからどうでもいいんだけどね。そんなに気になるんだったら、タイムマシンでも作って、来週にでもタイムスリップでもしたら?」






ん?





………なんですと?





「………。お前は天才か!」

「えぇっ?」


そうか、その手があったか! 全くの盲点だった。



「あの……お兄ちゃん?」



そうだよな。タイムマシンさえあれば、もうこんなことに悩まなくてもよくなるもんな。うんうん。



「お~い、お兄ちゃ~ん。戻ってこ~い。」



そうと決まれば早速タイムマシン制作に取りかからねば! まず何から始めたらいいんだ? やはりアインシュタインは押さえとくべきだろう。そういえば『猿の惑星』は着陸した星が、未来の地球の話だったか? ああ、H・G・ウェルズは外せないな。あとはデロリアン作り方どこかに載ってないかな。



「お母さ~ん、お兄ちゃんが、また壊れた~。」



思い立ったが吉日って言うしな! やることは山ほどあるぞ!







~〇〇年後~


 研究者の、研究者による、研究者のためのとある科学誌に、ある一人の日本人青年の記事が載せられた。その記事によると、その青年は今から〇〇年前の過去からタイムスリップしてきたという。そして、その記事と一緒に載せられていた写真には、現在では廃刊となっている大量の雑誌と、青年の隣で涙目となっている妹が写っていたそうな。




めでたし、めでたし。



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