何考えてるか当ててみて
「何考えてるか当ててみて」
男は言った。
「えーなんだろ」
女は言った。
夕食後の寝室。
二人はベッドに座っている。
「さあさあ」
「明日の朝ごはんのこと?」
「違うよ」
男は首を振った。
笑っている。
「じゃあ昨日のあれのこと?」
男は口をつぐんだ。
その目は、じっと女の方を向いている。
「違うよ」
「間が怖い」
部屋の明かりが明滅している。
ジジ、という音が鳴った。
「何も考えてないて言ったらどうする?」
「前提が壊れるね」
「そうだ。だから考えてはいる」
「うん」
女はベッドを降りた。
部屋を出た。
数秒が経ち、包丁を持って戻ってきた。
男は動かない。
女の方を見ている。
女は男に近づき、包丁を鼻の前に突きつけた。
「言え」
「え?」
「何を考えているか言え」
「いやいや、冗談でしょ?」
「言え」
女は、次第に包丁を近づけていく。
1秒間に0.01mm程度。
部屋の明かりが明滅した。
刃が光を反射して、チカチカと光った。
刃先には少しだけ、水滴がついている。
「言えよ!!」
「言わない!!」
「言えよ!!!!」
「言わない!!!!」
男が震えだした。
切っ先を一点に見つめた。
寄り目になっていた。
女は包丁を下ろした。
しばらく無言で固まり、後ろを向いて部屋を出た。
扉は音を立てて閉まった。
男は息切れをしていた。
未だに、さっきまで切っ先のあった部分を見つめている。
寄り目のまま。
男の息が整ってきたころ、女は部屋に戻ってきた。
チェンソーを持っていた。
女の身長の半分ほどの大きさだった。
男は後ずさった。
壁に体を押し付けた。
息はかすれていた。
毛布で体を包んだ。
くるまっていた。
女は近づき、チェンソーを男に向けた。
鼻っ面に向けた。
「言え!!!!」
「言わない!!!!」
「言え!!!!」
「言わない!!!!」
スイッチが入った。
刃が高速で回転をし始めた。
工事現場の騒音と全く同じ程度の音量だった。
たまに音が途切れたり、鋭くなったりした。
「言え!!!!」
「言わない!!!」
「言え!!!!」
「言わない!!」
女はチェンソーをベッドに食い込ませた。
布が引き裂かれ、中から毛玉が溢れた。
男の前で舞った。
「言え!!」
男は何も答えない。
口を開け、固まっていた。
ベッドにシミが広がった。
女はそれを見て、チェンソーを下ろした。
スイッチを切った。
音は止んだ。
部屋の明かりが明滅した。
ジジジ、という音が鳴った。
女は立っていた。
男は座ったままだった。
「誕生日」
「え?」
「明日の誕生日のこと、考えてた」
「そう」
男は口を開いた。
「ていうことを考えた」
「バイオレンス過ぎるだろ私」




