表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

攻略キャラを避け続けてた転生ヒロイン、うっかりミスで全員の好感度を上げてしまい三年生の11月に出会いイベントを連続発生させてしまうの巻ニンニン

作者: 騎士ランチ
掲載日:2026/05/22

私が自分が乙女ゲームのヒロインに転生したと気付いたのは、この学園に入学してすぐの事だった。んて、即座にこう思った。恋愛イベとかめんどくせーと。


だってね、私百歳超え(前世享年86歳+入学時15歳)のババアだよ?結婚も離婚も再婚も出産も、ひ孫の顔見るのまでやったから、恋愛とかもう結構な訳よ。まあ、結婚はするつもりだけど、乙女ゲームの攻略キャラとのキラキラしたのは無理。


そんな訳で、私は前世のプレイング知識をフル活用し、全ての攻略キャラとの出会いをスルーし、平凡だが平和な学園生活を送っていた。


だが、私は失敗した。三年生の11月、王国に攻め込んで来た魔王軍を倒した事で全キャラの好感度を上げてしまったのだ。


(魔将軍コーンを撃破した事で評判が50上がった!ついでに皆からの好感度も10上がった!)

「はわわ!やっちゃったでごさる!」


頭の中に流れ込むシステムメッセージさんの言葉で、私は失敗を確信し頭を抱えた。


マズイ。ネームド幹部を倒すと全員の好感度上がるのをうっかり忘れてた。せっかく今まで攻略キャラを避けてイベント発生しない様にしていたのに…!


「に、逃げるてござる!好感度上昇によるイベントラッシュ発生の前に…」


ドゴーン!


人目に付かない場所へ避難しようとした私は、大柄な男とぶつかってしまう。


「オォい!何ぶつかってるんだテメェ!骨折れちまったぞ!金払えやコラァ!」

(ゼンノッケ・ゼンノッケ・ウー!)


折れた腕をプラプラさせながら因縁付けてきた男の怒声と、テーマ曲を耳にして私は血の気が引いた。


「ぜ、ゼンノッケでござる!」


私がぶつかった男の名前はゼンノッケ。乙女ゲームの嫌われキャラであり、攻略キャラとの出会いはコイツに絡まれてる所を助けて貰う所さんから始まる。


つまり、コイツが私に絡んできたって事は…。


シュバッ!


「うぎゃあ!」


突如飛んてきたバラがゼンノッケの右半身を消し飛ばした。

バラの飛んできた方を確認すると、私の予想通りの人物がそこに居た。


「つまらない言いがかりは醜いぜ」

「げぇっ、この国の第一王子、ブタ!」

「ふっ、オイラの機嫌がこれ以上悪くなると怪我するぜ?」

「ちくしょう、覚えてやがれー!」


左半身だけになったゼンノッケは捨て台詞を残して逃げ去り、ブタ殿下と私だけがその場に残された。


「君、迷子になった新入生なのぜ?」

「いえ殿下、拙者は三年生で、今は11月でござる」

「入学式の会場は反対側だぜ。オイラが送ってやるのぜ」


ブタ様はプロローグイベントの展開まんまのセリフをほざいてきた。これぞ物語の強制力って奴か。


本当めんどいが、王子に無礼な真似は出来ないので適当に受け答えして終わらせよう。


「せ、拙者ウンコが漏れそうなので、トイレ出たら入学式にちゃんと行くから!ではさらば、忍法早足の術!」

「式にはちゃんと出るのぜー!」


私はケツを両手て押さえ、顔をバナナマン日村にして、全力でウンコ我慢の演技と共に逃げ去った。出会いイベントの会話もほぼ終わってたし、私から離れればブタ様も自分の学年と今の季節を思い出すだろう。知らんけど。


ドンッ!


「いてぇなあ〜、またお前か。へへへ、入学式以来だなぁ。治療費払えや!」

(ゼンノッケ・ゼンノッケ・ウー!)


しまった。ブタ様の方ばかり気にしてて、前方の確認が出来てなかった。私にぶつかられ、ハリケーンミキサーを食らったミートくんみたいになったゼンノッケが私にいちゃもんつけてくる。


「おい、何とか言いやがれ!…そーか、俺様が怖いのかぁ?」


こんな奴怖くもなんともない。だが、こいつと出会った後の事が怖かった。そう、こいつと出会ったのなら…。


チュドオオオオオン!


「ぐえー!」


金塊の入ったアタッシュケースが飛んできて、ゼンノッケの頭部を粉砕玉砕大喝采した。


「ちくしょう、覚えてやがれ!」


クレーターから這い出た首無しゼンノッケが捨て台詞と共に逃げていく。私は恐る恐るアタッシュケースが放たれた方を見ると、浅黒い肌のイケメンが居た。


「大丈夫やったか工藤?」

「お、お主は?」


名前は知っでるけど、話の流れをスムーズにする為に私は名を聞いた。


「俺はアオネギや工藤。なんや弱そうな嬢ちゃんが痛い目に遭いそうやったから、得意の銭投げでチンピラを追い払っただけや工藤」

「銭投げ…そう言えば小銭をぶつけて魔法の様な威力を出す技術が異国にあると聞いたでござるな」

「せやで工藤。俺の銭投げなら、小悪党を分からせるのはたった一枚の銅貨で十分って訳や工藤」

「そうでござるか。凄いね小銭パワーでござる」


投げたのは金塊入りアタッシュケースだったが、それは見なかった事にして私は原作通りに話す。


本来、アオネギとの出会いは一年生の一学期。その時このイベントが行われてたら、本当に小銭を投げていたのだろう。しかし、卒業まで半年を切った今、アオネギのレベルとおサイフはどえらい事になってしまい、彼にとっての小銭があの金塊になってしまったのだろう。知らんけど。


「で、では拙者ウンコの途中だったのでドロンでござる。忍法すり足!」

「俺は校舎横の売店で働いとるから、また会ったら宜しくやで工藤」


ウンコ漏れそうな演技してる内に、本当に便意感じた私はアオネギから離れるついでにトイレへ向かった。


「あ〜、失敗した!失敗した!失敗したでござる!入学式は前日から体育館て徹夜し、売店はアオネギのシフトが入ってない時にしか利用しない様にして出会いイベント避けてたのに!」


トイレットペーパーをガラガラ鳴らしながら、私は口なら愚痴を尻からウンコを出してトイレを出る。


「よー、そこのカワイコちゃん。俺様と付き合わない〜?」

(ゼンノッケ・ゼンノッケ・ウー!)


トイレから出るとゼンノッケが居た。しかし、ナンパの相手は私じゃない。男子トイレの入り口に手を当てて壁ドンポーズで口説いてる相手は、身長ニメートルを越える竜人族だった。


「俺様さ〜、君みたいな小さくて可愛い子タイプなんだよ。よかったら彼女になってくんな〜い?」

「わ、わ、私は…こだ」

「へ?」

「私は男だと言っておるのだ!このスカタンがー!」


docomoooo!!


屈強な身体から放たれるドラゴンアッパーがゼンノッケを天井に突き刺した。


「ちくしょう、覚えてやがれ!」


天井を貫通したゼンノッケはそのまま星となった。原作通りのやり取りだけど、原作と何もかも違う展開にポカンとしている私に、ムキムキの竜人が睨みてけて来る。


「何だ…、貴様も私が女みたいだと思ってるのか?」

「い、いえ!そ、そんな事はござらん!」

「私が男子トイレから出てきたのを見ただろう。私は男だ!なのに、いつも周りに勘違いされ、つまらん男から声を掛けられる。…ううっ」

「…えーと、あ、そだ!ハンカチ渡すんだ!」


原作の流れを思い出した私は、咄嗟にハンカチを差し出した。


「こ、これを使うでござる!」

「ああ、ありがとう。さっきは怒鳴って悪かったな。私は竜人族のオロシ。竜人族は成長期が遅くてな、よく性別を間違えられるのだよ」


オロシは全身についた返り血を拭き終わると、真っ赤に染まったハンカチを私に返す。


「ハンカチ、少し汚れてしまったな」

「めっちゃ血まみれで使いもんにならんでごさる」

「明日、売店で同じものを弁償したい。放課後に来てくれるか?」

「はいはい、行けたら行くてごさる。じゃサラダバーでござる」


私はこみ上げてくる笑いを必死で耐えながら早足で立ち去り、曲がり角で耐えきれず噴き出した。


「…ププー!お前が女の子に見える訳ないやろが!こんなの笑うしかないてござるー!プププのプー!」


原作通りなら、オロシとの出会いのイベントはブタ王子との出会いイベント終了後、最初の放課後に行われる。その時のオロシは確かに美少女そのものな外見で声も両声類だったのだが、ニ年生の時に脱皮してあの見た目へと変貌してしまう。


しかし、まさか成長後の姿で出会いイベントを再現するとこれほどの破壊力になるとは。おかげで、私の腹筋は大ダメージだ。


というか、あの状態のオロシをナンパするなよゼンノッケ。


「はんたーい!出てけー!」

(ゼンノッケ・ゼンノッケ・ウー!)


うわ、噂をすればゼンノッケ。って事は、また別の攻略キャラの出会いイベント発動か。私はゼンノッケの様子を確認して、次に誰がくるか推測する。


「魔族は学園から出てけー!」


ゼンノッケはたった一人で魔族追放のデモ行進をしていた。成歩堂、このイベントって事はハーフ魔族のメンマ君の出会いか。


私は落ちてた枝を持って木の演技をしながら、メンマ君が来るのを待った。数十秒後、全身から闇のオーラを垂れ流してるメンマ君がデモ隊(1名)の前に現れる。


「み、皆さん。ボ、ボクは皆さんを傷つけるつもりはありません」


メンマ君から発する闇の炎がゼンノッケを焼き続ける。魔族の血に覚醒したメンマ君はパッシブスキルで闇属性のスリップダメージを敵に与え続けるのだ。


「けっ、口では何でも言える!いつかお前は暴走したり裏切ったりして俺様達が被害を受けるに決まってる!」


ゼンノッケは現在進行系で燃やされ続けてるが、それを気にせずデモ隊(1名)の先頭に立ち非難を続ける。


「…」

「…」


メンマ君もゼンノッケも喋らないまま三分経過した所さんで私は気付いた。


「あ、これ拙者待ちでござるか!」


私は木の枝を捨て、怯えるメンマ君と白骨化したゼンノッケの間に割って入る。


「えー、コホン。大勢(ゼンノッケ一人)で何もしてない(闇の炎放出中)弱そうな子(推定レベルカンスト近く)をいじめるのはカッコ悪いでござるよ!」

「何だテメェも魔族の仲間か!」


ゼンノッケが私に掴みかかろうとした時、メンマ君の身体から闇の炎が出て、いや最初から出てたのだけど何かこう、今初めて出ました的なエフェクトが発生してゼンノッケを軽く炙った。


「アチィー!な、何だこの黒い炎は!…一旦帰るぞお前ら!ちくしょう、覚えてやがれ!」


ゼンノッケは存在しないデモ隊と共に去っていった。


「だ、大丈夫でしたか?」

「拙者は問題無しでござる。それよりそなたは…」

「ボクはお父さんが魔族で、昔から精神的に追い詰められると身体から黒い炎が出てしまうんだ。それの研究と治療の為にこの学園に特別に入学させて貰えたんだけど…さっきみたいに魔族は出ていけって言う人達も少なくないんだ」


そう、メンマ君を半魔族だからと差別する人は少なくは無かった。しかし、それは過去の話である。


時間の経過と共に魔族の血が完全に目覚めた彼は常に闇の炎を纏う様になったが、悪意を持った相手にしか危害を加えない姿を見て、反対デモを起こしていた連中は引き際を見誤ったゼンノッケを除いて全員が謝罪し和解している。


「ボクはいつかこの力を制御し、さっきの人達とも和解出来る日が来ると信じてる」

「その日は大分前に来たでござるよ。あ、拙者体調悪くて早退するのでこれにて」


これ以上学園にいると、残りの出会いイベントも発生してしまう。それを避ける為に私は全力疾走で校門を突破し、


曲がり角で死体を踏み砕いてコケた。


(ゼンノッケ・ゼンノッケ・ウー!)


「しまった!出会いイベは学園内だけではござらんかった!」


私に顔面踏み砕かれた死体はゼンノッケ。そう、彼は私が踏み砕くより前に全身の血を吸い取られ皮と骨だけのミイラと化して死んでいた。


また攻略キャラが来るのかと絶望していると、白衣の男が歩いて来てゼンノッケの検死を始めた。


「ふむ、死後半日か。レッサーバンパイヤに血を吸われたので間違いなさそうだな。小娘、貴様が第一発見者か?」

「まあ、そゆ事になるでござる」

「吾輩は最近この町で起こっておる吸血鬼事件を追っているニンニクという者だ。バンパイヤは殺した相手の関係者を次のターゲットにする事もある。なので、これを貸してやろう」


ニンニクは銀のロザリオを私の手に握らせた。


「こ、こんなの受け取れないでごさる」

「いいか、吾輩が犯人を倒すまでの間、決してそれを手放すな。後で返して貰うから、絶対に売ったり捨てたりするてないぞ」


ニンニクと別れた後、私は速攻てロザリオを地面に叩きつけた。


「今更、こんな初期アクセいらーん!!」


ロザリオをアイテムボックスへポイして、アクセサリ枠に賢者の指輪を装備しなおし、慎重に学園から遠ざかる。今度はゼンノッケの死体を踏む様なミスを犯さない様に。


そう言えば、まだ会ってない攻略キャラは何人残っていただろう?私は脳味噌フル回転させて、残りの攻略キャラと出会いイベの場所を思い出す。


確かこのゲームの攻略キャラは全部で8人。

王子のブタ様、商人のアオネギ、竜人族のオロシ、魔族ハーフのメンマ君、吸血鬼狩りのニンニクとは出会ってしまったから残り3人。


そして、まだ出会ってない3人は全員が学園の敷地内が出会いイベントだったはずだ。


残りの内の1人目はコーン将軍。私が今日うっかり倒してしまった魔王軍幹部だが、実は彼は隠し攻略キャラだ。


4人以上の攻略キャラと出会いつつ、誰とも恋人関係になってない場合に限り生存し、魔王の洗脳が解けたコーン将軍は人類の味方となり私と再会する。


その際に私が魔族に寝返ったと勘違いしたゼンノッケが斬りかかるのをコーン将軍が助けて一気に好感度カンストになる訳だが…、そんな展開御免こうむる!!何度も言ってるが、私は普通の結婚がしたいのだ。


んで、2人目はブタ様のそっくりさんカエダマ。ブタ王子にとても似た顔をした生徒で、その正体は死産となったブタ様の双子の兄チャーシューの生まれ変わり。彼のルックスを利用してゼンノッケが詐欺を計画するのを私が止める事で出会いが始まるのだけど、彼と付き合うとどう転んでも王家の裏事情絡みになるから、ぜーーーったいに会いたくない。


そして最後に、学園の屋上に勝手にトレーディングカード部を作っているワカメ。ヒロインが屋上へ行くと、ゼンノッケとデュエルしている彼と出会いそこから恋とカード集めのミニゲームが解放される。


「うおー!カードゲームやりてえでござるー!ワカメ殿ー!というか、おまけで遊べるカードゲーム!今拙者が行くでござるよー!」


私は物欲に負けた。入学と同時に前世を思い出してから二年半、様々な欲望を絶ってきた私だったが、カードゲームだけは諦めきれなかった。だってこの乙女ゲーム、『おまけのミニゲームが本編』って言われるぐらいカードゲーム楽しかったもん。


ミニゲーム解放には攻略キャライベントが必須だったから泣く泣く諦めてたけど、こうなったらもう一人追加しても同じ様なもんだし、私は最短距離で屋上へと向かう事にした。


「忍法ポニテコプター!」


私はポニテの回転で空を飛び、コーン将軍やカエダマとの出会い地点を避けつつ屋上へ向かう。だが、反対側からドリルヘアーを回転させて私の道を阻む者が現れた。


「げえっ、ジロケイ殿!」

「イエケイさん、貴女の事は見逃す代わりにゲームのイベントは勝手に起こさない約束だったはず。これはどういう事?」


ヤバい。悪役令嬢に全部バレてーら!私は顔を真っ青にして、空中で土下座した。


「こ、これは事故なのでござる!コーン将軍を気絶させようとしたら、クリティカルしてしまい…つまりプレイングミスでござるよ」

「…屋上へ向かってたよね?カードバトル狙い?」

「バレちゃ仕方ないでござる!こうなってしまったら、カードやりてえのでござるよ!忍法煙玉!」


私は煙幕でジロケイの前から姿を消し、五点着地で屋上へ降り立つ。


「イエケイさん、待ちなさい!」


ジロケイが私に追いつくが、少し遅かった。


(ゼンノッケ・ゼンノッケ・ウー!)


「ジロケイ殿、残念でござったな。カードバトラーワカメ編は始まったでござるよ」

「勝手に面倒事増やすな馬鹿!」

「反省はしてるでござる。これで打ち止めにするから勘弁でござる。…ござ?」


これまでのイベント開始とは何が違う。というか、イベントが始まってない。ワカメもゼンノッケも屋上に居ない。


(ゼンノッケ・ゼンノッケ・ウー!ゼンノッケ・ゼンノッケ・ウー!)


「おかしいでござる。出会いイベント開始を告げるゼンノッケのテーマが流れてるのに、肝心のゼンノッケが絡んでこないでごさる」

「アンタが滅茶苦茶なプレイしたからバグったんじゃないの?」

「えー?それじゃあカードゲーム出来ねえでごさるか?」

「この王国の未来を心配しなさい!」


もし、進行不能バグか発生してしまっまのなら、この世界がどうなるか誰にも分からない。私とジロケイはバナナマン日村の顔になりながら、祈る様にゼンノッケとワカメを待った。


(全てのシナリオやられ役〜、謎に人気投票一位〜、逃げる時はちくしょう覚えてやがれ!それが俺様ゼンノッケ〜!ゼンノッケ・ゼンノッケ・ウー!)


「ゼンノッケのテーマ、フルて聞いちゃったでござる!」

「本人はどこで油売ってるのよ!!」


(投票結果を受けまして〜、リメイクで声優起用され〜、ファンの皆はこう言った〜、大物声優無駄遣い〜、そんな俺様ゼンノッケ〜!ゼンノッケ・ゼンノッケ・ウー!)


「この歌、二番もあったでござるか!?」

「まずいわ!本格的に進行不能バグの可能性が高まってきたわ!イエケイさん、アンタ直前まで別の場所でゼンノッケに会ってたわよね?どこ?」

「え、えっと、バンパイヤハンターのニンニク殿の出会いイベでミイラ化してたでござる」

「それよ!ニンニクルートではゼンノッケが死んだ扱いだから、ワカメルートが始まらないのよ!」


私とジロケイは屋上から飛び降り、ヘアーコプターで路地裏へ向かう。


ニンニクと出会った場所に着くと、ミイラになったままのゼンノッケの死体があった。


「し、死んでるでござる!何で他のルートでボコられても無事だったのに、死んてるでござるかー!」

「多分、ニンニクがリメイク版で追加された攻略キャラだからじゃない?脚本も違うらしいし」


そう言えば聞いた事がある。この世界の元になった乙女ゲームには初期版とリメイク版があり、リメイク版ではゼンノッケに声とテーマ曲がついた他、追加の攻略キャラも用意されたとか。私はリメイク版しかプレイした事無いので、初期版との違いは知らんけど。


「ニンニクのシナリオライターは、攻略キャラに最初に絡むチンピラが全部同じキャラだった事を知らなかったのよ。だから、ゼンノッケが死んで他の攻略キャラシナリオと矛盾する事になった。ゲームなら笑える矛盾で済んでたんだけど、この世界じゃ笑えない事態になってしまったわね」

「ど、どうすれば良いでござるか?」

「ゲームではニンニクの出会いイベントをクリアすればこの死体は消えたから、それを実行してみましょう」


そう言うと、ジロケイはボタン型のスイッチを無から作り出し、私に握らせた。


「レッサーバンパイヤ事件解決フラグのスイッチを作ったわ。さっさと押しなさい」


私は彼女との実力差に震えながらスイッチを押すと、ゼンノッケのミイラはスーッと消えた。


「それじゃ、屋上へ戻るわよ。ワカメのカードゲームイベントが発生するか確認するわ」

「カードゲームやっていいのでござるか?ワクワク」

「…、この世界がバグってないか確認する為に仕方なくよ」


私とジロケイが空から屋上に向かうと、再びゼンノッケのテーマが流れてきた。


「部員が一人しかいねえ部活なんて認められる訳ねえだろ!廃部だ廃部!」

「なら、廃部を賭けてデュエルだ!」


(ゼンノッケ・ゼンノッケ・ウー!)


良かった〜。イベントちゃんと発生した〜。ワカメとの出会いイベントでは、ゼンノッケは生徒会の使い走りとしてカードゲーム部を潰しに来たモブとして登場する。


「イベント発生して良かったでござるな。けど、このイベントのゼンノッケって、ゼンノッケの癖にやけに真面目キャラしてない?」

「元々、他のゼンノッケとは別人設定だったからね。イエケイさんは、この乙女ゲームの初期版は未プレイでした?初期版ではゼンノッケなんて居なかったのよ」


ゼンノッケとワカメが互いのデッキをシャッフルしている間、私はジロケイからゼンノッケの歴史について教わる。


「ゼンノッケが名無しモブから昇格したって程度には知っでるでござるが、それ以上は知らんでござる」

「同人ゲームとしては空前の大ヒットをしたこの乙女ゲームは、めでたく一般販売ルートに乗ったわ。その際にキャラ人気投票を行ったんだけど、攻略キャラの踏み台にされるモブがダントツ一位になってしまったのよ」

「ふむふむ」


私はワカメとゼンノッケのバトルをチラ見しながら、ジロケイの話しに耳を傾ける。


「それで、各ルートに現れるモブをゼンノッケという一人のキャラにする事が決まった。その結果、ルート毎に矛盾も発生したけど、誰を恋人にするかで世界線が分岐しているという考えが一般的になり問題にはならなかったわ」

「キター!二体目の混沌の皇帝召喚!やっぱワカメも二年半の成長でデッキインフレ起こしてるでごさる!」

「こっちの話を聞きなさい!」


ごきん。


いつしかカードゲームに夢中になっていた私は、ジロケイに首をひねられて無理やりつまらない話を聞かされる。


「首痛い」

「アンタのせいで大変な事になってるのよ!少しは真面目にしなさい!」

「えー?けど、ゼンノッケのキャラがブレまくってるだけの話でごさるよね?進行不能バグも直ったし、もう大丈夫ではごさらん?」

「ゼンノッケ自体はどうでもいいけど、複数のルートが一度に始まっちゃったのが問題なのよ。これまでは、ノーマルエンドになるの前提で色々準備してたでしょ?それが全部無駄になったのよ。どうしてくれるのよ」


頭を抱えるジロケイを見て、私は自分のやらかしの大きさを徐々に実感する。カードゲームにハマってる場合ではないのかも知れない。


「じ、ジロケイ殿、この世界はこれからどうなるでごさる?拙者はどうすれば良いでごさるか?」

「アンタが何人も攻略ルート開いちゃったせいで、ノーマルエンドは消え、特定の攻略キャラのグッドエンドかバッドエンドに進まざるを得なくなったわ。こうなったらやるべき事は一つしかないわね」

「な、何をするでござる?」

「イエケイさん、アンタは今日フラグ立ててしまった男の中から一人を選んで、グッドエンドまで辿り着きなさい」


 はい

→いいえ


「悪役令嬢ナッコオ!」

「ぐはぁ!」

「ノーマルエンドが潰れた以上、少しでも良い世界を目指すしかないの。その為にはアンタがグッドエンドに到達して貰うしか無いのよ。いいわね?」


 はい

→いいえ


「悪役令嬢エルボー!」

「前が見えねえでごさる」

「アンタが攻略キャラと結婚したくないのは百も承知よ。だけど、約束破ったアンタが悪いから諦めなさい」


 はい

→いいえ


「断り続けたら何とかなると思ってるの?」

「ならないてござるか?」

「なりません。攻略キャラと付き合いなさい」


 はい

→いいえ


「…もう日本食作ってあげないわよ」


→はい

 いいえ


「くっ、ジロケイ殿のカレーが食べられないと生きていけないでござる」

「やっと観念したわね。それじゃあ、卒業までに結婚よろしくね」

「とほほん」


こうして私は、(結婚相手としては)論外メンズの中から一人を選び、卒業までの百日以内に結婚イベを達成しグッドエンドまで行かなきゃならなくなった。そして、一番ナシ寄りのナシと思っていた男とくっつく事になるとは、この時の私は思いもしなかったのである。


終わり

登場人物

・イエケイ

cv十七最強

武器:村正カリバー

鎧:聖女の法衣

頭:光のカチューシャ

アクセ:賢者の指輪

乙女ゲームヒロインに転生したおばあちゃん。恋愛とかやり尽くしたので、地味メンとお見合い結婚を望んでいる。原作知識で攻略キャラとの出会いを避けるだけでなく、悪役令嬢からのざまぁを防ぐ為にしっかり鍛え続けていた。そのため、一般人(主にゼンノッケ)に軽く触れるだけで大怪我させる肉体に仕上がっている。この物語の戦犯。


・ブタ

cv包装屋正由

武器:キングソード

鎧:キングアーマー

頭:キングクラウン

アクセ:キングブーツ

主人公が住む国の王子でメイン攻略キャラ。本来は入学直後に出会うはずだった。登場時にバラを投げる事からブタバラ様とファンに呼ばれてる。


・アオネギ

cv野菜王子リュウ

武器:おかんのハリセン

鎧:おかんのエプロン

頭:おかんのてぬぐい

アクセ:四季報

砂漠の国から来た商人の息子で銭投げが得意。登場シーンがブタバラ様の使いまわしなので、ファンからベーコンと呼ばれてる。


・オロシ

cvOh!硬めグミ

武器:ダイヤの爪

鎧:竜王の服

頭:ダイヤの兜

アクセ:ダンベル

入学時は女子にしか見えなかった竜人族。ニ年生の時に脱皮し、ニメートルの巨漢になった。返して。


・メンマ

cvタニタ阿求羅

武器:なし

鎧:血塗れのローブ

頭:常闇のフード

アクセ:形見のペンダント

人間と魔族のハーフ。魔王軍による侵略行為の深刻化に伴い一部の学生から非難されてたらしいが、ゲーム中で実際に手を出したり悪い噂流してたのはゼンノッケだけだった。優しい世界。


・ニンニク

cv永田城跡地

武器:退魔銃・終

鎧:聖なるコート

頭:速射バンダナ

アクセ:形見のペンダント

魔族の里から逃げてきた女性と恋に落ち、彼女を匿った事で故郷を壊滅させてしまった過去を持つハンター。攻略キャラの中で唯一のオッサンにしてバツイチ。そしてシナリオライターも他キャラとは別の人なので、温度差で整う。


・ワカメ

cvざまぁ瞬殺

武器:最強のデッキ

鎧:チャンピョンジャケット

頭:激アツキャップ

アクセ:魂のスリーブ

イエケイ一押しキャラだが、彼自身ではなく彼のルート解放によるカードバトルが目当てとされている。攻略キャラの中では完全にサブキャラ扱いで、性格もテンプレ通りの熱血馬鹿だが、ゼンノッケよりは設定がちゃんとしている。


・コーン

cvイボンコ

武器:なし

鎧:なし

頭:なし

アクセ:なし

今朝イエケイが倒した魔王軍の幹部。実は隠し攻略キャラであり、特定条件を満たした上で主人公に倒される事で洗脳が解けて仲間入りする。


・ゼンノッケ

cv大阪フォーチュン

武器:こんぼう

鎧:学生服

頭:ヘルメット

アクセ:救急箱

初期版発売後の人気投票で名無しのモブが一位になった結果リメイク版に登場。

実は各ルートでヒロインと攻略キャラにボコられるモブは全部ゼンノッケという同一人物だったという無理やり過ぎる後付けがされ、それが巡り巡ってこの小説の舞台にヤバい影響をもたらす事になった。


・ジロケイ

cv草々草草

武器:#114514

鎧:(このアイテムは実装されてません)

頭:村正カリバー

アクセ:こくおう

今作の悪役令嬢。イエケイ同様転生者だが、ゲーム知識とテクニックはイエケイの更に上を行く。入学直後全裸土下座降伏してきたイエケイを受け入れ、ヒロインが誰とも恋愛せず平穏に終わりを迎えるノーマルエンドを共に目指す事になった。そして、ヒロインが解決すべき攻略キャラの抱える問題を、ゲームとは別のアプローチで解決しつつ彼らの強化を続けて魔王との戦いに備えていた。その努力がイエケイのうっかりミスで消し飛びそうになった彼女の怒りと絶望は果てしない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
めっちゃ面白かったです! 攻略キャラのイベントラッシュとゼンノッケのボコられラッシュの組み合わせが最高でした! (ゼンノッケ・ゼンノッケ・ウー!) たった一度の選択ミスのために起きた、無理やりと言わ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ