Cランクの境界人
スラムの路地裏。昨夜、ザルクから剥奪したばかりの能力ボールを、カナタは月光の下で弄んでいた。
本来、ボールの詳細を知るには高価な鑑定端末が必要だ。だが、カナタがボールに指を触れ、追記の魔力を微かに流し込むと、脳内に直接ノイズ混じりの文字列が浮かび上がる。
【名称:鋼鉄の肌】
【ランク:B3】
【詳細:真皮層を分子レベルで硬質化し、物理衝撃を無効化する】
「……B3ランク。Dランクのザルクが持っていたにしては、出来過ぎた代物だな。宝の持ち腐れだ」
「カナタは冷徹に呟き、自らの魔力を練り上げた概念のペン――『万年筆』の先をボールに押し当てた。」
(追記――ただし、この鋼鉄は、衝撃を受けるたびに「超振動」を起こす)
脳を焼くような激痛。代償として、また一つ大切な記憶が消えた気がしたが、今のカナタにそれを確かめる術はない。
そして翌朝。
ジャンク屋の前に、数台の黒塗りの高級車が止まっていた。
車から降りてきたのは、仕立てのいいスーツの男、ヴァンス。彼は裏社会の住人でありながら、表のギルドからスラムの能力管理を委託された公認検ピッカーのライセンスを持つ、C1ランクの実力者だ。
「ザルクがやられたと聞いてね。……誰だい? うちの貴重な『商品』を壊した不届き者は」
ヴァンスが手元の端末を操作し、カナタのステータスを表示させる。
「ランク:F1。保持能力は微風。……ハハ、ゴミじゃないか。昨夜やったのは闇アビトだろう? 負ければ能力を完全に失い廃人になる禁忌の試合だ。よくもまあ、そんなゴミ能力でザルクを食えたものだ」
ヴァンスの背後に立つ護衛たちが失笑する。ヴァンスはカナタの手元にあるボールを凝視し、怪訝そうに眉を寄せた。
「……待て。その鋼鉄の肌、おかしいな。闇アビトで奪った真・能力は通常より強力になるとは聞くが……その輝きは異常だ。まるで、別の何かに作り変えられたような……」
ヴァンスの目が、初めて強欲な色に染まった。
「……面白い。そのボールを賭けるというなら、私が公認検ピッカーの権限で、君を『Dランク昇格試験』の被験者として特別登録してやろう。私が試験官となり、公式戦で君を査定する」
カナタは無言で、奪ったばかりのボールを自分の能力枠へと叩き込んだ。
(スロット1:微風)
(スロット2:鋼鉄の肌 ※追記済み)
「……いいだろう。公式戦、承認だ」
ヴァンスの周囲に、鋭利な真空の刃が展開される。
「消えなよ、Fランク。君の『鉄』が、私の『真空』にどこまで耐えられるか見ものだね」
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