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今年もよろしく

作者: P4rn0s
掲載日:2026/01/01

元カノから「あけましておめでとう」とだけ書かれた通知が、年が変わってすぐに届いた。

スタンプも絵文字もなく、妙に整った文字列だった。


返事を書こうとして、指が止まる。

「あけましておめでとう」まではいい。

問題はその次だった。


今年もよろしく。

その文章が、やけに重い。


「今年も」という言葉は、続きを前提にしている。

関係が当たり前に続くことを、疑っていない言い方だ。

もう別れているのに、そんな言葉を使っていいのか。

それとも、使わないほうが残酷なのか。


考えすぎだと分かっている。

新年の挨拶なんて、ただの形式だ。

でも、形式だからこそ、そこに滲む本音が怖かった。


画面を伏せて、数分。

窓の外を流れる車の音を聞きながら、またスマートフォンを手に取る。

文字を打っては消し、消しては打つ。

「今年も」を消した文章は、どれも不自然だった。


ずっと続く関係にしてもいいのか。

今年もと言うほど、まだ近くに置いていい存在なのか。

そんなことを、正月の静かな部屋で一人考えている自分が、少し滑稽にも思えた。


その時、LINEの通知音が鳴った。

画面を見なくても、誰からか分かった。


元カノからだった。

短く、決定的な一文。


「今年もよろしく」


心が、キュッとなった。

胸の奥をつままれたみたいに、息が一瞬詰まる。


迷っていたのは自分だけだったのかもしれない。

それとも、同じ迷いの先で、彼女はその言葉を選んだのか。

どちらにしても、その五文字はもうここにある。


「今年も」が、急に当たり前の言葉に見えてくる。

別れたことも、距離も、全部抱えたまま、それでも続く時間の存在を肯定するみたいに。


しばらく画面を見つめてから、同じ言葉を打った。

迷いは消えなかったけれど、拒む理由も見つからなかった。


送信ボタンを押したあと、部屋は相変わらず静かだった。

ただ、新しい年が始まったという実感だけが、少し遅れて胸に落ちてきた。


今年もよろしく。

その言葉が、希望なのか未練なのか、

まだ分からないまま。

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