『オリエンタルにトロピカる!』 カバラン(ディスティラリーセレクトNO.1)
今回は小町ちゃんの家に二人のお友達がやって来ます。
お友達はおっちゃんの存在を受け入れてくれるのか?
果たしておっちゃんはどうなるのか、見世物小屋に売られてしまうのか?
「…うん、うん。
じゃ、入口の鍵は開けとくから、着いたら勝手に入って来てねぇ。」
電話を切って『ふぅ。』とため息をついた私は飲酒盃小町。
今日は今の電話の相手、お友達の酒匂桂華ちゃんが、これもお友達の
御酒本桜子ちゃんと連れだって家に来るのだ。
桂華ちゃんの正体は、漫画家の『らが★ぶーりん』先生。
最近台湾へ取材旅行に行ってて、そのお土産を持って来てくれるとの事。
とっても嬉しいんだけど、今、私の家には一つ大きな問題がある。
「…嬢ちゃん、すまん、助けてくれ! お風呂貸してくれぇ!!」
ほら、その元凶が奥の部屋の押し入れからドタドタとやって来た。
「ちょっと、どうしたのよ…やだ、ずぶ濡れじゃなぁい!?」
「向こうは今大雨での、すっかり叩かれてしもうたわい。」
しょぼくれた顔で応えるのは、異世界からやって来たドワーフのおっちゃん。
名を『ヴァイン・ファス』と言う。
ーある日突然、私の家の押し入れとおっちゃんの住む洞窟が繋がった。
それ以来、色々あって意気投合した私達は飲み友達になったのである。ー
「あぁ、雫が垂れてる…取りあえず、服脱いで洗濯機に入れといて!
すぐお風呂張ってあげるから、それまでバスタオルでも巻いときなさぁい!」
「うむ、かたじけない。」
くちゅん、と可愛くくしゃみ等しながらお風呂場へ向かうおっちゃん。
私もばたばたと湯船にお湯を張ったりバスタオルを出して来たり…
これが痛恨の失敗になるとは、この私の目を以てしても見抜けなかったわ!
・・・
『ピンポ~ン♪』
おっちゃんをお風呂に追いやって、お寿司を注文したり、お摘みの作り置き、
テーブルの準備なんかをしていると、玄関のチャイムがなった。
「こんばんわ~、勝手に上がるかしら~。」
「こんばんわ、ご無沙汰してるのだわ。」
対照的な女の子…二十代後半だって女の子よ!…が二人、部屋に上がって来る。
割と身長のある、ニコニコした天真爛漫そうな方が桂華ちゃん。
小柄で色白で無表情、お人形さんみたいな方が桜子ちゃんだ。
「いらっしゃぁい、『カトケ』以来ねぇ。
…お寿司届くまでもうちょっと掛かるのよ、お茶淹れるから奥へどうぞぉ?」
『カトケ』というのは、『カトゥーンマーケット』の略称。
年二回、夏冬に行われるヲタクの祭典。
私達は、まぁ…『ヲタ友』なのだ。
「丁度良かったかしら、お土産には『パイナップルケーキ』あるから。」
「あら素敵、ありがとねぇ?」
「ありがたくお相伴に預かるのだわ。」
二人を居間へ向かわせ、私もお茶の用意をして追いかけた。
・・・
「…で、『故宮博物院』、すごく良かったかしら。
あ、これお土産の絵ハガキとストラップね、『白菜』と『豚の角煮』かしら~。」
「いいなぁ、『肉鍋セット』見られたんだ…」
「そうね、あれは一度は生で見ておきたい…羨ましいのだわ。」
三人でパイナップルケーキをまぐまぐしながら桂華ちゃんの土産話に花が咲く。
『故宮博物院』というのは、世界でも有名な台湾の博物館。
その収蔵物の中でも『絶対に見ておけ』って言われる『三大至宝』が
白菜を模した翡翠の彫刻、『翠玉白菜』
本物の東坡肉みたいな瑪瑙の彫刻、『肉形石』
現存最長の金文が刻まれた鼎、『毛公鼎』
別名、『食べられない白菜肉鍋セット』である。
私も、いつか絶対行きたいなぁ、生で見たいなぁ。
そうやって、お土産やら撮って来た画像やらを見ながら三人できゃいきゃい
していたら、皆さん、いよいよ今日の『その時』がやってまいりました…
「…嬢ちゃん、お風呂ありがとなぁ、温まったわい。」
ガラっと部屋の扉を開けて、腰にバスタオル一丁巻いた髭面のガチムチな
豆タンクが入ってきたのである。
「…ん? 言うておったお客さん方、着いたのかの?」
見つめ合う一人と三人。
「…小町ちゃん、抜け駆けは無しって誓ったのに…結婚式には呼んでね?」
「…年上趣味だとは思ってたけど…これは予想外だったのだわ…」
「…そうだ、いたんだ…すっかり忘れてたわぁ…違うの、違うのよぉ…」
私は頭を抱えて呟いた。
・・・
お寿司も届いたので、今は四人で晩御飯の最中。
あ、流石におっちゃんには服着てもらったわよ。
「ほうかほうか、こっちの嬢ちゃんがあの『らが★ぶーりん』先生か!
数々の作品の見事な筆致、いや、若いのによう研鑽を積みなすった!」
「やーん、面映ゆいかしら。
おじさまもあのプラモデルの装飾、素晴らしいかしら!」
クリエーター同士で通じるものがあるのか、おっちゃんと桂華ちゃんは
割とあっさり打ち解けた。
「小町がプラモデルの画像を上げるなんて意外だったけど、
このおいちゃんが謎のモデラ―、『ワイン樽』氏だったとはね…
異世界のドワーフと言うのも、あれを見たら信じるしかないのだわ。」
ドッキリにしても手が込み過ぎだしね、と桜子ちゃんは渋々認める。
彼女はリアリストで、最初は異世界やらドワーフやら、なかなか信じて
くれなかったのだが、押し入れの向こうにぽっかり広がった洞窟には
唖然とするしかなかった様だ。
しかも反対側の襖を開けたら普通の押し入れだし、トリックや
ドッキリにしても度を越えている。
私だって自分の部屋でなかったら簡単には信じられなかっただろう。
「あぁ、久しぶりのお寿司、美味しいかしら。
小町ちゃん、良いお寿司取ってくれたのね。」
桂華ちゃんは、いつも以上にニコニコ顔でお寿司を頬張る。
この娘も美味しいもの食べるといい顔するのよね。
「この面子でご飯はしばらく振りだしねぇ、ちょっと奮発したわぁ。」
「…おいちゃん、お箸の使い方が上手なのだわ。」
桜子ちゃんは一旦納得すると、今度は『本物のドワーフ』に興味津々な様子で
冷静におっちゃんの挙動を観察している。
「うむ、小町の嬢ちゃんからお箸をもらっての、沢山練習したぞい。」
「おっちゃん、流石ドワーフだけあって器用だし、練習熱心なのよねぇ。」
あのプラモデルの出来見ても分かるでしょ?と続けると、桜子ちゃんも
「そうね…納得なのだわ。」
と一息ついてお茶を啜るのだった。
・・・
お寿司も一通り食べ終えて、そのまま飲み会に突入。
お摘みは、角煮は入ってないけど、豚肉と白菜がたっぷりの八宝菜。
「おじさま、ドワーフってやっぱりお酒は好きかしら?」
「うむ、儂らは勿論酒が好きじゃが、こっちの酒は
何を飲んでも美味いものばかりで驚いとるわい。」
「特にウイスキーを飲ませてみたら、嵌っちゃってねぇ。
今じゃすっかり宅飲み友達なのよぉ?」
「それなら丁度よかったかしら。
今日のメインのお土産、これなのかしら。」
言いながら、桂華ちゃんはバッグからお酒のボトルを取り出した。
「じゃーん! 『カバラン ディスティラリーセレクトNO.1』かしら!」
私と桜子ちゃんは無言で目を輝かせる。
カバラン!
「すごぉい! 桂華ちゃん、ありがとう!!」
「ここで『カバラン』が出て来るとは、びっくりなのだわ…」
「良く分からんが、良いものなのかの?」
流石におっちゃんは事情が飲み込めていないので、小首をかしげて尋ねる。
このウイスキーは、凄いんだ。
「これ、桂華ちゃんが行って来た『台湾』っていう国のウイスキーで、
すっごく美味しいのよぉ?」
「飲んだら分かるけど、これはとても良いものなのだわ。」
「ほう、それは楽しみじゃの!」
「台湾で飲んだらとっても美味しくて、私も皆で飲むのが楽しみだったかしら。
小町ちゃん、グラスと氷と炭酸をお願いね?」
早速人数分のテイスティンググラスにカバランを注ぐ。
少しダークな琥珀色の液体が美しい。
「「「「それじゃ、かんぱ~い!」」」」
おっちゃんはゆっくりと香りを嗅ぐ。
「どれどれ…少し酒精の香りと、何じゃ?…熟した果物の香りがするのう。
食べた事はないんじゃが、何か黄色い果物?
花の香りとほんのりバニラ、奥の方にエステルが潜んでる感じか。」
桜子ちゃん、珍しく顔が緩んでる。
ストレートのカバラン、余程美味しかったのね。
「これ、凄いのだわ…あっさり目のクリーム感とウッドスパイス。
中間で熟した黄色いフルーツ…パパイヤかマンゴー?
後半でぐっとジンジャーっぽいスパイスが顔を出すのだわ。」
桂華ちゃんもうっとりと味わってる。
「後味に蜜っぽさとスパイシーさがずっと残って、微かにプリン?
カラメルっぽい甘さもあるかしら。」
「私もストレートは初めてよぉ、甘味とスパイシーさの余韻が
長く残って…いいお味だわねぇ。」
四人してゆったりとした後味に浸りながら、ほぅ~っと幸せな顔をしてる。
…はっ、いかん。
次はハイボールをキメるわよっ!
「やはり『はいぼぉる』はぐっと香りが締まるのう。
味は…爽やかな果実感とビター感があるわい。」
「後は焼きプリン?焦げたキャラメルっぽい甘さもあるのだわ。」
「爽快なだけじゃなく、複雑さもあって、不思議な味わいかしら。」
「南国風というか、どこか東洋の香りがするというか…
ちょっと濃い目に作ってゆったり飲みたいハイボールねぇ。」
感想はそれぞれだけど、結論、カバランは美味しい!
・・・
四者四様、それぞれストレートなりハイボールなりでカバランを楽しむ。
八宝菜、我ながら塩胡椒がよく効いてて美味しいわぁ。
「…桂華ちゃん、カバランって、色々と常識を覆したウイスキー
だったわよねぇ?」
「そうね、確かブラインドテストで並みいる強豪を退けて一等になったかしら。
あれでカバランは一躍世界のブランドにのし上がったのかしら。」
「嬢ちゃん、『ぶらいんどてすと』って何じゃ?」
おっちゃんには馴染みのない言葉だったのね。
「簡単に言うと、目隠しをして、どれが一番美味しいか飲み比べするのだわ。」
桜子ちゃんが過不足なく答える。
「ほぅ~、面白い事するんじゃの。」
「しがらみや忖度なしに一番を決める、良い方法なのだわ。」
答えは素気ないけど、顔はにまにましてる。
カバランのストレート、相当気に入ったのねぇ。
「それ以外にも、暑い国で美味しいウイスキーは造れないっていうのも
覆したのよねぇ。」
「暑いとこじゃ、美味くならんのか?」
昔は『ウイスキーは寒いところで造らないと!』っていう風潮はあった。
あったのだけど…
「以前はそう言われてたのだけど、台湾のウイスキーがこんなに美味しいって
言うので、それまでの常識が覆されたかしら。」
「意外なところだと、インドでもウイスキーが造られているのだわ。
…飲んだ事もないから美味しいかどうかは分からないけど。」
そう、意外にも、インドでは19世紀からウイスキーが造られてる。
サトウキビの廃糖蜜から造るらしいけど、美味しいのかは分かんない。
何故なら、ほとんどがインド国内で消費されて、輸出されないんだな。
色々賞も獲ってるらしいんだけど…
謎が謎を呼ぶぞ、インディアンウイスキー。
「因みに、暑いとこで造ると熟成が早いらしいわぁ。
普通8年掛かるとこが3年で済むとか済まないとか。」
これも新興のカバランが短期間で世界にアピール出来た秘密らしい。
「待つ年数が短くて済むのはええのう、実にえぇのう。」
うん、おっちゃんは呑兵衛らしい感想ね。
「おいちゃん、良い事ばかりではないのだわ。
暑いところは熟成が早く進む分だけ『天使の取り分』が多くなるのだわ。」
桜子ちゃんが冷静に釘を刺す。
「うん? 『天使の取り分』とな?」
あぁ、これは説明しないと分かんないわよねぇ。
「ウイスキーを樽に詰めて熟成してると、少しずつ蒸発するかしら。
年2~3%だから、10年では…お察しなのかしら。
でも、昔の人はそんなの知らないから、天使がウイスキーをくすねて
飲んでしまったんだって、それで『天使の取り分』って言われたのかしら。」
桜子ちゃん、フォローありがと。
「それが暑いとこだと1年で5~10%も持ってかれるらしいのよねぇ。
商品として出せる量も減るから、それなりにお高くなるのよぉ?」
「成程のう、だが、これだけ美味いんだから、そりゃ天使様も
ちっとは多めに頂きたくもなるわな!」
そう言って、おっちゃんはガハハと笑うのだった。
・・・
「…これは…翡翠に、こっちは瑪瑙か?
技術も大したもんじゃが、何とも変わったモチーフで作るもんじゃのう。」
誰に言うともなく、パイナップルケーキを齧りながら絵葉書を見ていた
おっちゃんが呟く。
「そうでしょ?
こっちの写真のお鍋と併せて別名『食べられない白菜肉鍋セット』よぉ?」
「『食べられない』とは言い得て妙じゃの!
洒落っ気がある御仁もいたもんじゃ。」
「おじさま? ちょっと桜子ちゃんを抱っこしてみてくれないかしら?」
「えぇ…めんどくさいのだわ…」
「いいからいいから…ちょっと資料写真撮りたいかしら。」
桂華ちゃんは何やら思いついた様で、スマホを取り出す。
彼女は漫画の資料に何かと写真を撮るのだけど、これはどうしたもんかしら。
「桂華ちゃん、資料はいいけどSNSやホームページにアップはやめてよぉ?」
おっちゃんの作ったプラモデルの画像、すごい数の閲覧やらグッドボタンやらが
ついてるのよね…身バレだけは絶対避けなくちゃ。
「それは大丈夫、他人の目には触れさせないかしら…
さぁ、こっち向いて、いい顔して~。」
おっちゃんはキョトンとした顔、桜子ちゃんはむ~っという表情で
写真に写る。
「や~ん、思った通り、可愛いかしら!」
成程、クマさんがお人形を抱っこしてるみたいで可愛いかも…可愛いかな?
「くれぐれも流出は勘弁よぉ?」
「あ…ところでおいちゃん、部屋の中とは言え、裸でうろうろするのは
あまり感心しないのだわ?」
抱っこされたまま、上目遣いでおっちゃんに尋ねる桜子ちゃん。
「そうなのか? いや、小町の嬢ちゃんはちょくちょく裸でうろついとるから、
こっちはそういう文化なんじゃと思って真似しとったんだが…」
ジト目でこっちを睨む三対の目。
…何よぅ? 自分家なんだし、ちょっとくらいいいじゃない!?
「小町ちゃん…裸で部屋の中歩き回る癖、治ってないのね…」
「小町…お母さん怒らないから、そこ座るのだわ?」
「嬢ちゃん…若い娘さんなんだし、恥じらいは持った方がええぞい?」
…この後、桂華ちゃんと桜子ちゃんにこってり説教喰らいました、ハイ。
今回は台湾発の美味しいウイスキー、
『カバラン ディスティラリーセレクトNO.1』でした。
これまでハイボール缶は何度か飲んで、大層美味しかったので
レビューしたいと思い200mlのミニボトルを買ってみたところが、
ストレートもめちゃくちゃ美味しい!
これ、ロックや水割りでも絶対美味しい奴ですわ。
『カバランはどう飲んでも美味いのだ。』
皆様も是非お試し頂ければ幸いです。
また、気になる銘柄はミニボトルやハーフボトルで試してみるのも
お財布に優しくていいかも、です。
台湾には残念ながら行った事がないのですが、
故宮博物院の『白菜肉鍋セット』はいつか生で見たいですねぇ。
城内は台湾並びに『カバラン』を超応援しております。




