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4話 きっとあれは食べ物の魔法

結局坪内とお弁当を食べる事になった俺。教室に戻りお弁当を確保、今ダッシュで体育館に向かっている。


体育館に戻ったら坪内が既に居た。


「遅いよ、クラスそんなに遠くないでしょ」


「ごめんごめん、少し感傷に浸ってたんだ」


「何よそれ」


彼女は笑いながらそう言った。


「君はいつも体育館倉庫でご飯食べてるの?」


「そうだよ、誰も来ないから静かな所で食べるのが好きなんだ」


俺はカッコつけてそう言ってしまった。ただ単に友達が居なくて今日で食べるのが気まずいだけなのに。


「友達が少ないから教室で食べない訳では無いの?」


図星だ、何も言い返せずフリーズするしかなかった。


「図星じゃん!」


「友達少なくて悪かったな!」


少しの間を置いて2人で思わず笑ってしまった。


「田中くんとのやり取りどこまで聞いてたの?」


「告白の1番大切な部分だけ聞いてその後寝てたから全部では無いよ、?」


そう伝えると彼女は恥ずかしそうな顔をした。


「1番聞かれたくない部分じゃん!しっかり聞いてるし!」


「声大きかったからね、、しょうがないよ」


確かにと言う顔をして彼女は言葉を続ける


「私ね、田中くんと同じ中学校だったの。それで同じ高校に入りたくて勉強頑張ってここに来たんだ、それで高校デビューとほぼ同時に告白して付き合いたいな!とか思ってたの」


そう言った彼女は俯く


「でももう想像してた高校生活は無くなっちゃったしどうしようかな〜!彼氏の1人でも欲しいよ〜」


「彼氏居たこと無いんですか?」


ふと思い聞いてしまった。


「一人も居たこと無いよ、悲しい事にね〜」


さすがにこれは意外だ。こんなに美人で優しい彼女が付き合った事が無いなんて有り得るのか?そう思ってしまった。


「坪内さん美人なのに付き合った事無いんですね、なんか意外です」


「なんか煽ってない?」


少しムッとした顔でそう言う。


「噂で聞いたんですけど読モやってるって本当なんですか?」


「へ〜知ってるんだ!物好きなんだね〜」


そう言う彼女は満更でもなさそうな顔だ。と言うか知らない訳がない。俺のクラスでは割と有名な話で彼女が乗ってる雑誌が出る度にクラスに置かれるほど有名である。ただ僕は逆張りして1度も見た事は無い。


「うちのクラスなら皆知ってますよ。俺は知ってるだけで見たことはないですけど」


「なんでよ!見てよ!!」


そう言いながらスマホを取りだした。


「ほら!今見て!」


彼女のスマホを見ると着飾られ美しい坪内の姿があった。なんと言うのだろう、大人っぽい風貌というか凄くスタイリッシュな彼女の姿がそこにはあった。


「可愛い…」


思わず声に出た。それを聞き逃す様な人では無いらしい。


「でしょ!可愛いでしょ!!!」


明らかにテンションが爆上がりな彼女はどんどん俺に写真を見せてくる。これが陽キャの絡み方かと驚かされた。


「でもあれですよね、田中も読モと知っていただろうに断るなんて、珍しいと思っちゃいますね」


「そんな事ないよ、確かに私は読モだけどただの高校生だもん。そんな簡単じゃなかったってだけ」


「そうですか、」


俺には返す言葉が思い付かなかった。しばらくの沈黙の後


「坪内さんのお弁当美味しそうですね」


俺は頑張って話を振ってみた


「そう!?美味しそうに見える!?これ私が作ったの!」


めちゃくちゃ機嫌良くなった、、凄く分かりやすい、


「卵焼きとか綺麗に出来てますね」


「でしょでしょ〜神崎くんのお弁当にも卵焼き入ってるじゃん!これはお母さんが作ったの?」


「母親は忙しいのでこれは僕が作りました」


「え!そうなの!そっちの卵焼きも美味しそうじゃん!」


彼女は目をキラキラさせながら僕のお弁当を見ている。とてもじゃないがこの視線を浴びながらお弁当を食べる事は出来ない。


「も、もし良かったら卵焼きだけ食べますか?」


「え!食べたい!」


そう言いながら彼女は俺のお弁当から一切の躊躇もなく卵焼きを取った。


「甘い卵焼きだ!うわ〜こう言うのも美味しいな〜」


「甘い卵焼きが好きなら良かったです」


「私だけ貰うのはあれだから私の卵焼きもあげるよ!」


そう言い彼女は箸で卵焼きを掴み俺の顔の前に持ってきた。


「いや!自分の箸で食べるので!」


「あ、!ごめんなさい、つい勢いでやっちゃった、」


焦りながら彼女はそう言った。


「ここに置いてください」


ため息を付きながら弁当箱を差し出し卵焼きを置かせた。その後に"自分の箸"で食べた


「美味しい…」


人の作るご飯はなぜこうも美味しく感じるのだろうか。出汁のしっかり効いた卵焼きは噛めば噛むほど口に旨味が広がる。


「でしょ〜今日のは自信作なんだから」


彼女は満面の笑みでそう言った。


なぜだろう、ご飯を食べるだけなのにこんなにも楽しいのは。ご飯を食べてるだけなのに、舌だけでは無く目も幸せと思えるのは。




「ご馳走様でした」


気がつけば5時間目が終わるまで残り3分。そんなに長い時間食べて話していたのか、


「もうそろそろ教室に戻る時間ですかね」


「そうだね、戻ろうか」


お弁当を片付けている時ボソッと言われた。


「また今度お弁当食べようね、こんな砕けた話出来るの神崎くんくらいだからさ」


「分かりました、誘われればいつでも」


了承の返事をした時とても嬉しそうな表情をしていた。


そうして各自教室に戻った。俺は謎の高揚感に包まれていた。もちろんお弁当が美味しかった。それもあるだろう。でも恐らく1番は人と、ご飯を食べれた事。お腹だけじゃなく心も満たされた。


あの卵焼きの味はきっと忘れないだろう

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