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観客の熱気は一層高まり、会場全体が揺れるような歓声に包まれていた。
俺は歌いながら、この妙な感覚に飲み込まれそうになるのを必死に堪えていた。
「ちんちんちん 和同マイロード〜♪」
次第に俺自身が歌詞のリズムにのめり込んでいく。観客は手拍子を合わせ、スクリーンに映し出された歌詞に口ずさむ者まで現れる。
曲が終わると、会場は大歓声に包まれた。
その瞬間、観客席の奥に設置された巨大スクリーンが再び動き出し、そこに謎の数字が映し出された。
「宗教改革プロジェクト成功率:85%」
俺は思わずスクリーンを二度見した。
「成功率?プロジェクト?」
だが、考える暇もなく、リーダーがステージに上がり、俺の肩を叩いて耳元で囁いてきた。
「素晴らしい!君の歌で計画は順調だ。次の曲だ、頼む。」
俺は思わず聞き返した。
「次の曲…?いや、俺はもう…」
しかし、観客は完全に期待の目で俺を見つめている。
「次の曲名は?」という視線を、俺はひしひしと感じた。
そして、気づけばまた口を開いていた。
「二曲目…『電子通貨への旅立ち』!」
バンドが再び音を鳴らし始める。今度の曲は、電子音を織り交ぜた軽快なダンスビート。
観客が歓声を上げ、スマホを取り出して何かを撮り始めているのが見えた。
--イントロ--
(電子音がピコピコと響く)
チャリン、チャリン、デジタルマネー♪
俺たちの時代、未来の旅路〜!
--Aメロ--
和同から始まり、札からコイン♪
やがて流れは、デジタルの波♪
時代を変える、そのコード、入力しろ!
(観客「イェー!」)
--サビ--
チャリン、チャリン、キャッシュレス!
未来を握る、電子通貨〜!
財布を捨てて、スマホ一つで♪
行こうぜ、進化の旅〜!
俺は夢中で歌いながら、スクリーンをチラリと見た。
そこには再び変化する数字が映し出されていた。
「成功率:89%...92%...」
嫌な予感がする。この「成功率」が100%に達したら、一体何が起こるのか?
そして、2曲目が終わるや否や、会場の雰囲気が一変した。
観客全員のスマホが突然光り始め、一斉に新しいアプリがインストールされる音が響き渡った。
スクリーンには新しい文字が浮かび上がった。
「新世界通貨ネットワークへようこそ。」
俺の心臓が跳ねるように動いた。
これ、まずいぞ…。
リーダーがマイクを取り上げ、満面の笑みで宣言した。
「ついに来た!我々の夢が叶う瞬間だ!」
観客が歓声を上げ、スマホを掲げて叫ぶ。
「ワドコイン!ワドコイン!」
だが、俺の中で警鐘が鳴り響いていた。この状況をどうにか止めなければ――。
次の曲を歌うべきか、それとも…。
俺は選択を迫られていた。




